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小説家になろうラジオ大賞3 

県立高校図書準備室連続密室恋人事件

作者: 夜狩仁志

なろうラジオ大賞3 参加作品

使用キーワード「密室」



 今、図書室の受付に座っている3年生の女子生徒は、俺の幼馴染みだ。

 昔から内気で気弱なあいつを、俺はいつも助けてやってきた。

 あいつが図書委員になって、一人図書室に居るのは怖いからという理由で、俺も放課後残ってやったりする。

 今日の重い本の入れ換え作業だって、いつの間にか俺の仕事みたいになっていた。


 俺は図書準備室で、大量の本を入れ換える。


 ここで注意しないといけないことが一つある。

 それは、この学校にまつわる噂。


『図書準備室の密室で二人っきりになった生徒は結ばれる』


 という噂だ。


 そのために作業する時は、ドアストッパーを使い、外への扉は閉じないよう、開けっぱなしにしておく。


 そうやって、密室にならないよう、いつも作業する。

 そして必ず作業は、一人でやる。


 あいつ一人だと、何かあったら危険なので、たいてい俺がこの作業を行う。


 作業時以外は固く施錠されており、噂好きの連中が勝手に侵入しないようになっている。

 基本、部屋の鍵は図書委員が持っている。

 噂を聞きつけた生徒が、よくあいつに部屋を開けるよう懇願しているのを見たことがある。

 その度に俺は、あいつのかわりに追い払ってやる。


 そして今日もいつも通り、準備室で俺一人で作業していると、


 バタン


 扉の閉まる音がした!


 慌てて振り替えると、あいつの姿が……


 扉は閉ざされ、鍵の閉まる音が響いた。


「お前、なにしてるんだよ!」

「既成事実」

「はぁ?」


 あいつはスマホ片手に写真を撮りまくる。


「おい!」

「密室で私と二人っきり」


「おい、それって……」

「もう、付き合うしかないね」


「ちょっと待てって! なに言ってるんだ?」

「二年待ったわ。噂が広まるのに」


「待った、だと?」

「密室の準備室に居た二人は結ばれる、って」


「まさか、お前が噂を?」

「だって、君……全然、私の事、振り向いてくれないから。だから……」


 あいつは俺に少しずつ迫ってくる。


「この写真をばらまけば、二人腕を組んで部屋から出てくる動画があがれば、自他、誰もが認める公認カップルでしょ」

「お、お前……本気なのか? なんでこんなことを?」


「こうでもしないと、その気になってくれないから……」


「いいのか? 俺なんかで。後戻りできないぞ」

「うん」

「別にこんなことしなくても、俺はお前のこと……」


 扉の鍵を開ける。

 そして二人は手を繋ぎながら、

 準備室の外へと足を踏み出した。



『図書準備室の密室で二人っきりになった生徒は結ばれる』


 その噂は、


 今日、


 真実となった。

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