花火
花火がめちゃめちゃ余っている。
もらい物の小さなセット物に、お徳用サイズのもの…、手持ち花火に吹き出し花火、線香花火にへび花火…、マイバスケットにいっぱい、ある。
どうしてこんなにたくさんあるのかといいますと。
子供会で余ったものや、近所の奥さんにいただいたもの、くじ引きで当たったやつなどがですね。
…最近はあんまり花火のできる場所ってないじゃない?
一気にやるには量が多すぎるし、気が付いたら蓄積されてたっていうか。
「もう駄目だ、これ以上貯めて置くスペースがない… や り ま す よ ! !」
「え、花火やるの!!わーい!!あたし線香花火―!」
「見てるだけでいい。」
そう、なかなか花火をしなくなったのは、息子が花火を怖がるようになっちゃったという背景もありましてですね。
低学年の頃は大喜びで手持ち花火をやっていたのだけど、作りの悪い花火にあたってしまい火花が手の甲に飛んで以来、見る専になってしまったのだな。
先週キャンプに行った時に全部消費するつもりだったんだけど、ものすごいゲリラ豪雨でさ、一本もやれなくって全部丸のまま持ち帰る羽目になっちゃったんだよね。
「よーし、でかいのからやるか!なになに、純日本製の電光石火花火だとう?しっかり燃やしたらあ!」
「バケツに水入れてキター!」
「ろうそくつけたよ。」
旦那がまだ帰ってきていないので、車の停まっていない場所で手早く花火大会を始める。
バ、バリ、バ、バリバリバリ、バリバリ!
パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ!
しゃーーーーーー!
ざ、ざざーーーー!
シュー、パパパパパ!
「あらあ、花火大会?」
「あ、こんばんわ、ええ、たくさん貯まっちゃってね、大量消費してるんです。」
ご近所の奥さんだ。
「あれ、シュンくん、なにやってるの!」
「花火だよ。」
塾帰りの息子の友達だ。
ブゥン!ガ、ガガガガ!
旦那のお帰りだ。
……花火大会は終わりだな。
「ただいまー!お父さんもやりたい!その長いやつやらして!」
「ちょ、ダメだよ、車停めたら場所ないもん。」
「じゃあ、加藤さんとこに車置かせてもらってくる!」
フレンドリー丸出しの遠慮知らずの恥知らずの旦那が、また勝手な判断であっという間に───!
「ただいまー!いいもんもらったー!」
「またもらってくる!」
旦那の手には、真新しい、花火!
「なんか敬老会のくじ引きであたったんだって!やらないからどーぞって!」
あああ!今消費した分くらい入ってる、スペシャルセット花火だとう?!
……やってもやっても減っていかないんですけど。
結局半分ほど消費したところで腹が減り、お開きになったのだが。
「こんばんわ~!」
「あれ、優くんと優くんのママ、どうした?」
「昨日、この子花火をやらせてもらったそうで!あの、これそのお礼です。」
次の日の夕方、まさかの追加花火、キター!
「ああ、じゃあ今からやるんで、ご一緒にどうぞ!」
「優、一緒にやろ。」
「いいの?!」
バ、バリ、バ、バリバリバリ、バリバリ!
パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ!
しゃーーーーーー!
ざ、ざざーーーー!
シュー、パパパパパ!
思いがけず花火仲間が増えたので、仲良く楽しんでおりますと。
「あ、こんばんわ!花火?いいねぇ!」
「あれ、町内会長、まだ旦那帰って来てないよ。」
「花火見ながら待たせてもらうわ!」
バ、バリ、バ、バリバリバリ、バリバリ!
パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ!
しゃーーーーーー!
ざ、ざざーーーー!
シュー、パパパパパ!
ブゥン!ガ、ガガガガ!
旦那のお帰りだ。
……花火大会は終わりだな。
「ただいまー!お父さんもやりたい!そのヘビ花火やらして!」
「ちょ、ダメだよ、車停めたら場所ないって言ってるじゃん。」
「うちの横の土手に停めてくれば?僕ももうちょっと見たいし。」
小雨が降ってきたので、かごに半分ほど花火を残し、お開きになったのだが。
「やあ、こんばんわ!加藤さんに聞いたんだけどさ、花火好きなんだって?うちにいっぱいあるから差し入れに来たよ!」
次の日の夕方、まさかの追加花火、キター!
「ええ!?こんなにいっぱい、…あ、ありがとう。」
思いがけず花火が増えたので、わりとかなり相当ドン引きしている私がおりましてですね。
「すごーい!全然減っていかない!」
「たくさんありすぎる。」
「もう、ジャンジャンやっていくしか!」
バ、バリ、バ、バリバリバリ、バリバリ!
パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ!
しゃーーーーーー!
ざ、ざざーーーー!
シュー、パパパパパ!
ブゥン!ガ、ガガガガ!
旦那のお帰りだ。
……花火大会は終わりだな。
「あ、シュンくんのママ、こんばんわ!良かった!花火大会間に合った!あのね、うちにもめっちゃ花火あって!いっしょにやらせてもらえないかなってね?」
「シュンくん、これもやろー!」
「うん!」
「あのぅ、すぐそこのマンションに住んでる矢部といいます、海斗くんの弟の陽斗くんつながりで。ほら、慎太郎、ごあいさつして?」
「こんばんわ!」
「はい、こんばんわ……、すみません、旦那帰って来たからもう、おしまいなんですよ。」
「あ、じゃあマンションのお客様用駐車場使って下さい、暗証番号は……」
花火も人も増え、ろうそくが燃え尽きるまで花火大会は続いたのだが。
「あのぅ、最近毎日花火やってますよね?良かったらこれもどうぞ!」
「うちマンションだからやる場所なくってね。」
「隣の家に怒られちゃってさ、もらってくれない?」
「おばあちゃんの家でやったあまりがねぇ……。」
「お母さんがうちではやっちゃダメっていうの、やらせて?」
そうだよね、今のご時世、なかなか花火をする場所ってないんだよね…、そりゃ、毎日騒がしく花火大会やってたら、いっしょにやらせてもらえないかなってね?
「あ、旦那帰って来たから、車停めないといけないんで花火大会は終わりです。」
「うちの入り口に停めていいよ!」
「じゃあ従業員用駐車場開けるわ!」
「公園の横の空き地に停めれるから!あれうちの土地なんだわ!」
「わーい!お父さんこの吹き出すやつやりたーい!」
「おじさん、これもおもしろいよ!」
「お父さん、それあたしがやるつもりだったのに!」
「あ、ゴミもらうねー!」
「蚊取り線香つけた。」
「わしのこどもの頃は線香花火しかなかったわ!」
「昔かんしゃく玉あったよね?」
「スイカたべる?」
能天気な旦那に、やや強引なフレンドリー感満載のご近所の皆様方、完全に私、巻き込まれてるー!断れない性格がー!
結局、お盆過ぎから今日まで、毎日花火大会をですね。
続けた、かわいそうな、家族がですね。
……いや、違うな。
かわいそうな、お母さんがですね。
どこかにいたという、お話ですよ……。