Closed
アガサ・クリシティ氏の、そして誰もいなくなったの設定に思いっきり影響されました。
ミステリー色は全く無いです。
頭を空にして読んでくれて構いません。
…………………
男は目を覚ました。
狭い部屋だ。部屋の中には、男が座っているのも含めて六つの椅子が円状に並べてある。
そして、その全てに見知らぬ人が座っていた。
「あなた達は誰ですか」
男は目の前の五人に聞いた。
「私は、学校の教師をしている者です」
男から見て一番右側に座っている女が言った。すると、その左から順に紹介が始まる。
「私は消防士をしていた者です」
「私は土木に関わる仕事をしていました」
「私はこの間まで弁護士でした」
「私は何も仕事をしていません」
部屋にいる全員の紹介が終わった。
部屋には小さい窓と扉が一つ。扉の外には通路が広がり、いくつか部屋がある。
六人で部屋を回る。大量の食物が積み上げられた部屋。布で溢れかえった部屋。水回りが敷き詰められた部屋。
部屋は全部で十四。全てに小さい窓があり、カビ臭い臭いがする。
六人全員が、此処はどこだろうと疑問を持つ。
外が暗くなっていく。
食糧のある部屋から少し拝借して食事をし、それぞれ別の部屋で夜を過ごす。
男は無知の脅威に怯えながら目を閉じた。
………………………
男は目を覚ました。
部屋を出て、水回りの部屋へ向かう。
そこで悲鳴が聞こえた。
「どうしたのですか」
慌てて悲鳴の方へ駆けつけ、ある部屋の前で腰を抜かしている女に問う。
「この部屋の人がどこにもいないのです」
そのあと少し男を探したが、件の男は何処にも居なかった。
残された五人に恐怖が降る。恐ろしくなったのか、ある女が自分の部屋に閉じこもった。
四人の人はその女の部屋の前に立ち、どうにか女を説得しようとした。
「いつか見つかりますよ、開けて下さい」
老いた男が言い、部屋の扉を開ける。
部屋は既に空だった。
女も見つからぬまま、夜が来る。二人の捜索を諦めて、四人はそれぞれの部屋に戻った。
得体の知れぬ恐怖と安堵感に纏われて、男は目を閉じた。
……………………
男は目を覚ました。通路にも出てみるが、残念なことにいなくなった人はいない。
残った老いた男と昨日から青ざめている女、それと何かに怯えている若い男と食事しながら、昨日二人が消えた理由を考察する。
微笑しながら男は考察を聞き、笑いながらその全てを論破した。
何処かに隠れているという結論にたどり着き、男もそれを論破しなかった。
その日、残った四人は消えた二人をこれまで以上に細かく探した。
男が食物の中を探していた時、通路の奥の部屋からガダンと音がした。
何事かと思い部屋に行ってみる。
部屋の入り口で佇む男女を見つけ、男は聞いた。
「何があったのですか」
すると、女が怯えながら答える。
「老いた方が此処を調べていたはずなのですが…」
若い男が続ける。
「バンと音がして来てみれば、何処にもいないのです」
「それはおかしいです」
怯えた女が男に言った。
「私はドカンという音がしたのですから」
三人は怯えながら夜を迎えた。
男は愉悦感に浸り、目を閉じた。
……………………
男は目を覚ました。
軽い酔いを憶えながら、男は通路に出ようとした。
しかし、その時突然昨日怯えていた若い男が飛び込んできた。
男は驚き尋ねた。
「どうしたのですか」
男はオロオロしながら、言った。
「実は私、昨日残っていた女性に惚れていたのです。なので昨夜、彼女と交えようと思い、彼女の部屋に行きました」
取り敢えず部屋の椅子に座らせ、男はその話を聞いた。
「しかし今朝目覚めた時、彼女は居ませんでした。交えた時は確かにいたのにです」
残されたのは二人となった。二人の男は次はどちらなのだろうという恐怖に怯え、太陽が真上に来るまで同じ部屋にいた。
若い男が用を済ませたいと言ったので、二人は水回りの部屋に行った。
流石に用を済ませるのを見たくないので、男は部屋の隅で若い男の方を見ないようにした。
水洗便所の流れる音がしたので、男は用を済ませたと思い振り向く。
用を済ませてた若い男は、部屋の何処にもいなかった。
男は初めに目覚めた六つの椅子がある部屋に、日が沈むまでいた。
また期待した夜が来る。
男は満足感を感じ、目を閉じた。
男は、消えた五人が天井から垂れる縄に首をぶら下げる夢を見た。
男は目を覚ました。
男は初めに目覚めた部屋に向かう。
その部屋には、目覚めた時と違うところがあった。
男が目覚めた椅子以外の全ての椅子に、天井から縄がぶら下がっていることだ。
男は自分が目覚めた椅子に座った。
そして、涙を流しながらいつまでも笑い続けていた。
…………………
…………………………
……………………………………
十年の時が経つ。
政府の船が、絶海の孤島の上に立つ建物を見つけた。
その建物には入口も出口もなく、政府の部隊は壁を突き破って入った。
建物の中は、通路が伸び幾つかの部屋があった。
部屋の数は全部で十三。全てに板を張られた窓があり、ホコリ一つ舞っていない。
食物や布が敷き詰められた部屋もあったが、敷き詰められた食物は新鮮で、布はゴミひとつついていない。
椅子が六つ並べられた部屋もあり、その椅子だけが古く、ボロボロだった。
建物の中には、誰もいなかった。
最後に残った男がどうなったかは、誰も知らない。
………………………
狂気とは、時に正気である。




