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作者: 道草
掲載日:2020/05/03

アガサ・クリシティ氏の、そして誰もいなくなったの設定に思いっきり影響されました。


ミステリー色は全く無いです。


頭を空にして読んでくれて構いません。

…………………


男は目を覚ました。


狭い部屋だ。部屋の中には、男が座っているのも含めて六つの椅子が円状に並べてある。

そして、その全てに見知らぬ人が座っていた。


「あなた達は誰ですか」


男は目の前の五人に聞いた。


「私は、学校の教師をしている者です」


男から見て一番右側に座っている女が言った。すると、その左から順に紹介が始まる。


「私は消防士をしていた者です」

「私は土木に関わる仕事をしていました」

「私はこの間まで弁護士でした」

「私は何も仕事をしていません」


部屋にいる全員の紹介が終わった。

部屋には小さい窓と扉が一つ。扉の外には通路が広がり、いくつか部屋がある。

六人で部屋を回る。大量の食物が積み上げられた部屋。布で溢れかえった部屋。水回りが敷き詰められた部屋。

部屋は全部で十四。全てに小さい窓があり、カビ臭い臭いがする。

六人全員が、此処はどこだろうと疑問を持つ。

外が暗くなっていく。

食糧のある部屋から少し拝借して食事をし、それぞれ別の部屋で夜を過ごす。

男は無知の脅威に怯えながら目を閉じた。


………………………


男は目を覚ました。

部屋を出て、水回りの部屋へ向かう。

そこで悲鳴が聞こえた。


「どうしたのですか」


慌てて悲鳴の方へ駆けつけ、ある部屋の前で腰を抜かしている女に問う。

「この部屋の人がどこにもいないのです」


そのあと少し男を探したが、件の男は何処にも居なかった。

残された五人に恐怖が降る。恐ろしくなったのか、ある女が自分の部屋に閉じこもった。

四人の人はその女の部屋の前に立ち、どうにか女を説得しようとした。


「いつか見つかりますよ、開けて下さい」


老いた男が言い、部屋の扉を開ける。

部屋は既に空だった。

女も見つからぬまま、夜が来る。二人の捜索を諦めて、四人はそれぞれの部屋に戻った。

得体の知れぬ恐怖と安堵感に纏われて、男は目を閉じた。


……………………


男は目を覚ました。通路にも出てみるが、残念なことにいなくなった人はいない。

残った老いた男と昨日から青ざめている女、それと何かに怯えている若い男と食事しながら、昨日二人が消えた理由を考察する。

微笑しながら男は考察を聞き、笑いながらその全てを論破した。

何処かに隠れているという結論にたどり着き、男もそれを論破しなかった。

その日、残った四人は消えた二人をこれまで以上に細かく探した。

男が食物の中を探していた時、通路の奥の部屋からガダンと音がした。

何事かと思い部屋に行ってみる。

部屋の入り口で佇む男女を見つけ、男は聞いた。


「何があったのですか」

すると、女が怯えながら答える。


「老いた方が此処を調べていたはずなのですが…」

若い男が続ける。


「バンと音がして来てみれば、何処にもいないのです」

「それはおかしいです」


怯えた女が男に言った。

「私はドカンという音がしたのですから」


三人は怯えながら夜を迎えた。

男は愉悦感に浸り、目を閉じた。


……………………


男は目を覚ました。

軽い酔いを憶えながら、男は通路に出ようとした。

しかし、その時突然昨日怯えていた若い男が飛び込んできた。

男は驚き尋ねた。


「どうしたのですか」


男はオロオロしながら、言った。

「実は私、昨日残っていた女性に惚れていたのです。なので昨夜、彼女と交えようと思い、彼女の部屋に行きました」


取り敢えず部屋の椅子に座らせ、男はその話を聞いた。


「しかし今朝目覚めた時、彼女は居ませんでした。交えた時は確かにいたのにです」


残されたのは二人となった。二人の男は次はどちらなのだろうという恐怖に怯え、太陽が真上に来るまで同じ部屋にいた。

若い男が用を済ませたいと言ったので、二人は水回りの部屋に行った。

流石に用を済ませるのを見たくないので、男は部屋の隅で若い男の方を見ないようにした。

水洗便所の流れる音がしたので、男は用を済ませたと思い振り向く。

用を済ませてた若い男は、部屋の何処にもいなかった。

男は初めに目覚めた六つの椅子がある部屋に、日が沈むまでいた。

また期待した夜が来る。

男は満足感を感じ、目を閉じた。


男は、消えた五人が天井から垂れる縄に首をぶら下げる夢を見た。


男は目を覚ました。

男は初めに目覚めた部屋に向かう。

その部屋には、目覚めた時と違うところがあった。

男が目覚めた椅子以外の全ての椅子に、天井から縄がぶら下がっていることだ。

男は自分が目覚めた椅子に座った。

そして、涙を流しながらいつまでも笑い続けていた。


…………………

…………………………

……………………………………


十年の時が経つ。


政府の船が、絶海の孤島の上に立つ建物を見つけた。

その建物には入口も出口もなく、政府の部隊は壁を突き破って入った。

建物の中は、通路が伸び幾つかの部屋があった。

部屋の数は全部で十三。全てに板を張られた窓があり、ホコリ一つ舞っていない。

食物や布が敷き詰められた部屋もあったが、敷き詰められた食物は新鮮で、布はゴミひとつついていない。

椅子が六つ並べられた部屋もあり、その椅子だけが古く、ボロボロだった。

建物の中には、誰もいなかった。

最後に残った男がどうなったかは、誰も知らない。


………………………





狂気とは、時に正気である。

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