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プロローグ
一六八三年【天和の大火事】
死亡者•三五〇〇人
一六九八年【勅額火事】
死亡者•三〇〇〇人
多々ある江戸の火事で二つの大火事を出したのは、この二つの間には江戸の歴史で一番の被害を生んだとある大火事があったからだ。
死者二四八一〇六人。
負傷者一人。
江戸時代もっとも死亡者を生み、もっとも負傷者が少なかった大火事——
【江戸大炎華の儀】
いつの時代の為政者も歴史の改竄は出来るのだが、この大火事は改竄してはならなく、しかし、起こった奇跡は記録として残すのを憚られた。
奇跡はある。
否、奇跡は『存在』する。
そう、幾多の災厄を気まぐれで救う奇跡は『存在』するのだ。