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プロローグ4 再び世界を呪うまで

肩を上下させながら、あの聡明な兄は先に出て待っていると思い屋敷の出口に手をかけた···銃声が聞こえた。

倒れ込む人影は兄、ショーン。

自分を庇って盾になったのだと理解するのに時間はかからなかった。

兄の体がゴトっと音を立てて倒れる。

ぷつっと音を立てて抑えていた感情が溢れるのを感じた。


やっと手に入れた大切なもの

世界一大切なもの

私の誇り

私の家族

私の愛する人達、私を愛する人達

目の前で奪われていく世界を悲しみ、憎み、呪った。



やっぱりこの世は敵だった


パパ、ママ、お兄ちゃん

ごめんなさい。


私、前世で死ぬ時に

全てを呪ったから


だから、呪いがついてきたせいで


みんな巻き込まれちゃったのかな


パパ、優しいパパ。お仕事頑張っているパパはとってもかっこよかったよ。本当は凄く強いのも知っていたよ。とても誇らしかった。


ママ、かっこいいママ。凛とした佇まい、そして私達を包む愛の大きさ。私もいつかママのようになりたかったな。


パパ、ママ産んでくれてありがとう。沢山甘えさせてくれてありがとう。ただ、もっとお話したかったもっと一緒にいたかった


お兄ちゃん、小さい頃からずっと寄り添ってくれた優しいお兄ちゃん。あんまりお兄ちゃんって呼ばなくてごめんね。沢山呼べばよかった。沢山呼べばよかった。もう呼んでも……


お兄ちゃん、お兄ちゃんの妹で幸せでした。


呪ってはいけない憎んではいけない呪ってやる憎んでやる呪ってはいけない憎んではいけない呪わずにはいられない、憎まずにはいられない


兄の亡骸を抱きしめる少女には銃も届かず、風が吹き荒れる

床は裂け、壁には雷光のようにヒビが入る。


魔王の誕生に、皆が息を飲んだ。


そこに、皇帝の一族の剣が少女を背後から貫いた

少女の胸に生えたように剣先が突き出ている。


風が吹き止む。

少女は思う。悔しい。悔しい。悔しい。

全てが作戦だったんだ。全て。

呪ってやる呪ってやる呪ってやる。


そこに声が聞こえた

『ああ。可愛い孫娘。』

「誰?」

声に出さずに会話ができる。

剣に貫かれているのに痛みもない。

まるで時間が止まっているようだ。

『可愛い孫娘。私の可愛い娘の娘。私は神であり、そなたの祖父である。神と言ってもいくつもたる神の一柱だ。私は人間の争いには参加は出来ぬ。ただ、娘を殺された怒りは晴らさなければいけない。ああ、可愛い娘。私のせいで苦労したろうさ。恨んでいるのだろう。』

「そう···ですか。···母は苦労したと話していました。心無いことを言われる格好のネタだったとも」

そうか。と祖父は頷く。

「でも、お父様が見守ってくれているからいいの。とも。」


『そうか。そうか。十分だ。見守っていたともさ。私の可愛い孫娘よ。今魔王になろうとしている孫娘よ。そなたの怒りに私の怒りも連れて行ってはくれまいか。そなたたちに手を出したもの達は敬虔な私の信者達だった。愛していた子供達に、最愛の娘を殺された間抜けな祖父の願いをどうか聞いてはくれぬか。このままでは世界すら私は破壊してしまう。そしてそなたには生きて欲しいのだ。』

『ーいいよ。ありがとう、おじいちゃん。』


剣先にぶら下がる小さき魔王の遺体がかすかに動く。

「まだ生きておったか!」

56代目皇帝エルエス・ロイ・ホワイトが叫ぶ。

「忌まわしき黒い血め!」


小さき魔王が発光する。

剣は粉になり風に解けた。


光が収まった頃、少女の紫と金の瞳が開いた。

神の孫であり、魔王である。

幼き魔王が誕生した。


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