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プロローグ3 はじめての しゃこうかい

11歳の誕生日

デビュタントとしてブラック家主催のパーティに主役として参加する。

ドレスを着て鏡を見た時に初めて自分の姿をまじまじと見た。

父譲りの黒い髪に、母譲りの紫色の瞳

両親の良いところを選りすぐった自分の容姿に自信が持てる。

自惚れと言われようと世界一の両親に似た自分をとても誇らしく感じていた。


ドアがノックされる。

どうぞと声をかけるとそこには兄、ショーンの姿があった。

いつものような緩んだ笑顔ではなく、真剣な兄の顔を見てエマはとてつもなく緊張した。

「可愛い可愛い僕の天使。話さなければいけないことがあるんだ。落ち着いて聞いて欲しい。 そして、信じて欲しい。」

ショーンの話によると

この国は昔勇者と魔王が戦った地であること戦いの末魔王を倒した勇者がこの地を纏める皇帝となった事。

ただ、魔王を完全には倒せなかった勇者は魔王に爵位を渡し怒りを納め人として生きることを了承してもらったこと。その後勇者と魔王は好敵手として、友として、協力者として共に国を収めてきたということ。

そもそもの戦争の発端は人間側にあったことを話した。

「魔王の一族の名はブラック家。君が生まれた家が魔王の一族なんだ。」

驚くエマをよそにショーンは話を続ける。


魔王の一族がブラック家、勇者の一族がホワイト家であること。

両家とも国の中枢であること。

かつて友とした関係は今では無くなってしまっていること。

エマもショーンも魔王になる可能性がある事。

だから、憎む、呪う感情を抑えなければいけないこと。

人間と関わることは最低限度で保たなければいけないこと。

これから先、心無いことを言われるであろうこと。

さらに、それに拍車をかけるのが、エマとショーンの母アリアが平民で私生児であること。

「早く伝えなければいけないのに、ここまで遅くなってしまってごめん。父様はこの話をしたら君に嫌われてしまうのでは、君が君自身を愛せなくなってしまうのではと悩んでいたんだ。だから、僕が父様を押しのけて今君に伝えに来たんだ。父様はきっと遠回しに話してしまうからね。」

目を伏せたショーンが顔を上げエマをじっと見つめた。その目は不安に潤んでいる。

「でも、何があっても私たち家族は君を愛している。何があっても。何があっても、だ。小さい狭い世界になってしまう。ただ、その世界は君への絶対的な愛で溢れているんだ。」

その真剣な声、視線から伝わってくる。

もしも、自分が魔王になってしまっても家族は私を愛してくれるのだと。


「お兄様、私怒っていますわ。なぜ早くお話してくださらなかったの?信じてくださっていなかったの?」

ショーンは俯く。

「お兄様、私、とっても家族に愛されていますの。そしてそれは私の誇りなの。そんなもので揺るぐわけが無いでしょう。他人からどう思われようともありのままの私をわかってくれる方なんていつかは現れますわ。」

はっとショーンが顔を上げる。

「私は愛されているのと同じくらい、みんなを愛していますわ。」

天使の羽が包むかのようにエマはショーンに抱きつく。

「みんな大好きです。」

顔を上げたエマはまるで天使の祝福のようだった。

ガタガタと大きな音を立て両親が入ってくる。

そして抱き合う。聞いていたのねと思い笑顔とともにため息が漏れる。

ひとつに固まりあってる様子は貴族としてはとても滑稽だろうと口の端が緩む。

すすり泣く声と謝罪の言葉を聞きながらエマはもう一度言う

「みんな愛しています。」

滑稽だろうとこれがブラック家の愛の形だと思うと

あの満たされなかった、愛されなかった、全てを呪った前世の思いがが水の中に溶けていくように消えてくのを感じた。


「エマ。お母様はね、平民でしかも私生児なの。ショーンから聞いたでしょう。お母様のお父様は、とても高い身分の人だったそうよ。だから、お母様のお母様、えぇ、あなたのお祖母様ね。お祖母様はお祖父様とは婚姻せずに私を産んだの。でも、私はその事について恥じたことは無いわ。お祖父様は私が幸せに自由に生きる為に大好きなお祖母様と離れた人だから。そうじゃなければきっと私はエリオットとは結婚できなかったわ。だから、エマ。貴方も恥じては欲しくないの。お祖父様は私達を見守ってくれているわ。どうか、恥じないで。」


「お祖父様にもお祖母様にも私はあったことは無いけれど、大丈夫よお母様。私はお父様、お母様の子であることに誇りを持っているわ。」

両親と少し語らい、パーティへと足を運んだ。


初めてのパーティは多くの人で賑わっていた。


ピンと背中を伸ばして立つエマはとても愛らしく天使のようだった。

会場が少しだけざわめく。

そのざわめきににこりと微笑みかけ手を振る。

ほうっと見とれるような空気が流れた。


私が、あの素晴らしい両親の子どもなのよと、誇らしげなエマが両親を振り返手を振ると

ー血飛沫が顔にかかった。


悲鳴、倒れている両親、広がる血

「エマ…走れ!!!…」父の声に弾かれたようにエマは走り出した。

走りながら周りを見渡す。探している姿は兄、ショーン。

走る、走る、走る。

パパ···ママ···憎んではいけない呪ってはいけない。

「エマお嬢様!走って!」

私を守る人達の声が聞こえる。

兄と共に外へ出て落ち着こう。大丈夫。兄がいる。

走るうちに頭が冷静になる。

前世の分普通の11歳とは違う。父と母は殺されたと解る。でも···憎んではいけない。呪ってはいけない。

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