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プロローグ 1 まえといま

アキ。そう呼ばれていたのは、前世の事だ。

冷たい母、殴る父、嘲笑する兄弟達。

その中で産まれたアキは、世界の全てを、この世を呪って無限に広がる海に 飛び込んだ。

呪ってやる全てを。呪ってやるみんなを。私のこの傷一つ1つを。


次に目を覚ました時は、泣き叫ぶ自分と新しい名前「エマリアス」

生まれ変わりというのは未来にいくものでは無いのかと思ったが、言っても仕方ないだろうと悟った。


「ねぇ、アリア。エマが全く泣かないんだ。何が原因があるのかな?」

父である、エリオットがこちらを心配そうに覗く。

特に要望もないし、あったとしても別に叶えて貰えるとも思っていないのだから泣くのは必要ないと思いながら私は聞いている。


絢爛豪華な天井の装飾や部屋を見る限り身分の高いものだと理解はできるが、階級は全くわからない。


立つようになってなってからの家族の私への溺愛っぷりはさらに増した。

1歩でも歩けば歓声。ママと呼べば家族皆が泣く。

一挙一動を喜ばれながら、やはり信じきれない思いが渦巻く。


ブラック家。最初知った時にはなんの厨二病かと思ったが、我が家はブラック家というらしい。



父は

エリオット・ジャン・ブラック

血の通わぬ彫刻のような美しい男性である。容姿は黒い髪に黄色の瞳。苦労しているせいか所により白い髪が目立つ。見た目と違い熱い性格でありすぐに泣く。よく母に怒られては幼い私に長い長い悩み相談をしてくる。

母は

アリアス・ブラック

女神のような優しい美しさを持つ女性。容姿はシルバーの髪に紫の瞳。教会の神によく似た特徴であり、とても神秘的な女性であるが、口から出る言葉は荒く辛辣。神には似ても似つかない母を見る度少し笑ってしまう。性格も下町の肝っ玉母さん。豪快なところがよく目立つ。

兄は

ショーン・マルコ・ブラック

父のような冷たい美しさを持つ兄であり、性格はとても温厚。母のシルバーの髪に黄色い瞳。

そして私

エマリアス・フィン・ブラック


分かっているのはここまでだ。

まあよくここまで美しい人間が揃ったものである。


優しそうな母に土下座をして許しを乞う冷たい容姿の父。横で野次を入れる兄。


初めて見る仲の良い家族の一員であると言う自覚はまだ無い。

ーー


「エマ!エマ!エマー!何処にいる?エマー!」

兄の声が聞こえ、さっとクローゼットの中に隠れる。


兄は面倒なのだ。

とても、面倒なのだ。


「エマ…兄様のことが嫌いなのかい…?エマ…」

床を這うかのように倒れ込み兄は泣く。


「お兄様、ここにいますわ。」

「エマ…!」

まるで大輪の花が咲いたように笑顔を向けるショーンにエマは溜息をつきながら近づく。

「お兄様。私が嫌なのはお兄様ではなくて、お兄様のお願いですわ。」

「僕のことをお兄ちゃんと呼ぶのがそんなに嫌なのかい!?僕は認められて居ないのかい!?」

「親しき仲にも礼儀ありですわ···」

そんなやり取りをしている中、コツコツと足音が近づく。

やってしまった···ー逃げ遅れた自分の無能さに腹を立てながら足音の先を見る。


「お父様。どうされたの?」


そこには、泣き顔の父ーエリオットが居た。


脱力しながらも、もう一度話しかける。

「お父様、どうされたの?」

「エマ···僕の天使たち···聞いてくれるかい?」


「いいえ。聞きませんわ」とも言えず、頷く。


「アリアが僕の愛がう···うざいって···僕を監獄に閉じ込めようとするんだ···」


「あなた。」

エリオットが振り返る先には女神ような美しい女性が、冷ややかな視線を向けていた。

母に引きずられていく父を笑顔で見送った。


「ー···でね、この人がいっっっっつも執務室に私が居ないと行かないと言うのよ。エマこんな面倒な男性とは結婚してはいけないわよ。顔が良くても。」

母は平民の出らしい。なので些か荒い口調が目立つ人である。30分にも及ぶ経緯説明(母の愚痴)を聞き、母の手伝いとして監獄ーもとい執務室へと向かう。


ドアを少しあけ顔を覗かせる。そしてエリオットに向け満面の笑みで、

「パパ!お仕事頑張っているパパはとってもかっこいいって聞いていたけど本当にかっこいい···!頑張ってね。パパ!」

と言い残し、ドアを閉める。

もうすぐ11歳のエマにとって一日の大仕事がこれだ。

ドアの中から雄叫びとペンの動く音を確認し、母の元へ急ぐ。

「お父様、お仕事再開しました。」

「ありがとうエマ。本当にあなたにはいつも感謝してるわ。私の可愛い天使。」

そう言って母はエマの頭を撫でる。

その手の上に自分の手を重ね、満面の笑みで

「ふふっ。お母様大好きです。」


前世から望んでいた愛を受け、人を愛し、自分を愛していることに少し視界を滲ませながらもう一度

「家族みんな大好きです···。」

私はもう、この家族の一員である。


初めて私は自分の生きる世界を愛した。

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