第1章ー1 燃え盛る村
「え、何なのこれ…」
沢山の炎が燃え盛るのが見える。周りには顔なじみの人達が血を出しながら倒れている。
「嘘だ…こんなの」
前を見ると、恐ろしい姿をした者の姿があった。
*
あの惨劇から少し前。
いつもの様に先生の授業を受けている。
ここの村はイアミ。そんなに裕福ではないが、みんなが幸福で生きている村だ。
「よし!!聞いてろよ!!」
「あぁまた始まった。先生の豆知識」
先生はいつも同じ話をする。種族の話だ。
「この世界には種族が3つある!!」
この世界には種族が3つある。
何の能力も持つことが出来ない普通の人である【ピエタ族】
たまに環境を操る能力を得ることができ、身体能力と回復能力が高い【アンビエンテ族】
3つの種族の中でも凶暴。大昔はピエタ族だった。ピエタ族が色々な姿に変化する能力を手に入れ、数名でピエタ族を離れ、新たに【ディザストロ族】を作った。
先生はまだまだ話し続ける。
「大昔、2つの種族は戦争をしていたんだ、でも1人の男が終戦へと導いた!!しかしその後ディザストロ族が作られ、1つの組織も作られた!!」
先生は熱心に話すが、この話は何度も聞いている。もう飽きていた。
「その組織がティフォーネでしょ!!」
僕は手を上げ、答える。
「おいおい!言うなよアレン!!」
アレンとは僕の名前だ。
バダルコ・アレン。今は5歳だ。
「毎日聞いてるから覚えたよ!」
笑いながら僕は答える。
「そう、ティフォーネは全ての種族の村を破壊し、世界を支配しようと作られたんだ。そんなこと許されない!!」
熱意が凄い。ついていけない。まさかティフォーネがこんな村を襲うはずがない。
「ティフォーネは全てで5階級!!1階級につき、1人のボスがいる。そのボスを筆頭に幹部が5人いるんだ!!」
だから何だと言うのだ。それを知った所で、何の意味もないだろう。
「じゃあディザストロ族には近づかない方がいいんですか!?」
僕の隣の女の子が先生に質問する。
「ううん!それは違う!!ディザストロ族は確かに凶暴だが、敵ではない。ディザストロ族の中のティフォーネが凶悪なんだ」
こんがらがってよく分からない。ただ、ティフォーネが相当悪い奴らというのは分かる。先生は自分がディザストロ族だから自分が嫌がられると嫌なのだろう。先生が僕にだけ教えてくれた秘密だ。
先生は僕が生まれる前にこの村にやってきたらしい。酷くボロボロな姿の所を僕の父が看病したらしい。僕の両親は僕を産んですぐ死んだから覚えてはいないけど。
「要は気をつけろって事だよね!!」
僕は退屈なので、簡単にまとめた。
何やかんやで授業はつまらないまま終わった。
僕は授業が終わったので、家へと変える。
「おーい!アレン!!」
先生が後ろから走ってくる。先生はたまにうちに料理を作りに来てくれる。
「俺まだ仕事があるんだ!!おつかい頼んでもいいか?」
めんどくさいと思ったが、しょうがない。
「いいよ、何買えばいい?」
「野菜を買ってきてくれ!!」
僕は野菜を買うことになった。野菜は隣町に売っている。僕は隣町へと歩いていく。
*
すっかり暗くなってしまった。やはり近い隣町と言っても時間はかかるものだ。野菜を持って、疲れた足を上げる。
「何か村が明るいなぁ」
村が光っているように見える。
「お祭りって今日だっけ、そんな訳ないよな」
どんどんと近づいていく。そして僕は驚愕な事実を知ることになる。
村が燃えている。沢山の悲鳴が聞こえる。
沢山の爆発音と、斬られる音も聞こえる。
次第に汗が吹き出す。体が震え出す。
まず初めに思ったのは先生だった。
「え、何なのこれ…」
状況が掴めない。ゆっくりと震えている足を前へと踏み込む。奥に入っていくと、沢山の炎が燃え盛るのが見える。周りには顔なじみの人達が血を出しながら倒れている。
「嘘だ…こんなの」
野菜を落としてしまう。足から地面に崩れ落ちる。涙がこぼれ出す。恐怖で動けない。
ふと前を見ると、恐ろしい姿をした者の姿があった。
見る限り、トカゲの姿をした人間。ベロが長い。ベロは、ギラギラと輝いていた。見る限り剣の様なものに見えた。またそいつの尻尾も鋭い剣の様なものに見える。
「うわぁ…うわぁぁぁああ!!」
悲鳴を上げてしまう。
「うひゃひゃ!!ぐぎゃぎゃぁ!!グルグルパー!!」
こいつはやばいと思った。目玉がぐるぐると回り、目が充血している。足をじたばたさせている。
「ここの村も壊滅だァァ!!」
そのトカゲ男は手を上げて喜んでいる。僕は必死に逃げようとするが、上手く立てずに、後ろへとずるずると移動する。
「逃がさないよおおお!!ぐぎゃ!!ぐぎゃぎゃぁ!!」
ベロで僕を掴んだ。僕は宙へとベロで掴まれて浮く。トカゲ男は目玉をぐるぐると回していた。
「助けてええ!!」
もう無理だ。そう思った時。
「アレン!!」
でかい棒で、トカゲ男の脳天を叩いた。全然効いていなそうだが、ベロが離れる。
先生が駆けつけてくれたのだ。
「ここは俺に任せろ!!お前は早く逃げろ!!」
「何で!!先生は!!この人たちティフォーネでしょ!?先生が死んじゃうよ!!」
こいつらは絶対にティフォーネだ。間違えない。
「あぁ多分な!!だからお前は生きるんだよ!!」
「何言ってんの!!一緒に逃げよう!!」
先生は覚悟を決めた顔をしていた。しかし、そんなの僕には関係ない。
「ここから逃げて、村外れへと行くんだ!!そこに校長先生がいる!!校長先生を頼るんだ!!」
校長先生は学校に滅多に来ない先生だった。僕は1度だけ、校長先生にあった事があった。しかし、年齢が分からない。先生が言うには100歳を超えていると言うのだから驚きだ。でも山の外れで、いつも何をしているか分からない変な人ということしか印象になかった。
「あと1つ言い忘れてた。今になって言うが、お前はハーフだ」
「全然分からないよ!!先生も逃げよう!!」
少しの沈黙が起こる。
「行けぇぇぇぇ!!俺の行動を無駄にするなぁァァァ!!」
その先生の雄叫びは今までで1番怖かった。恐怖のあまり起き上がり、走り出していた。方向はあっていたが、どこを走っているのか分からなかった。
「何で…何でこんな目に合わなければいけないんだ…嫌だ…嫌だ…嫌だァ!!」
小さな石に躓く。転ぶ。すごく痛い。
後ろで物凄い爆発音が響く。大爆発だ。僕の村を覆うほどの大爆発が襲った。
涙が零れる。おかしい。何も悪いことはしていないのに、ただ生きていただけなのに。地面を叩き悔しがる。
「うわぁぁぁあああああああああ!!!!」
叫びながら、泣きながら、走る。
*
どれだけ走っただろうか、1つの小屋の前へとたどり着いた。山を1つ登った感覚だ。いいや本当に登ったのだ。山の奥に来たのだ。
小屋のドアを手でノックして、声をかける。
「校長先生いらっしゃいますか?」
ドアが開く。中から校長先生が出てくる。
「おう、見たことある顔だな…どうした!!」
凄く驚いた。僕の顔が相当やばかったのだろう。
「僕達の村が…」
泣きながら事情を説明した。
「じゃあ爆発して、跡形もなく消し飛んだのか?」
「はい…」
「そうか…わしがいながら!!くそぉ!!」
ここの小屋は村の外れであり、音は聞こえないのだろう。僕は中に入り、お茶を入れてもらう。そんな事している暇はないのに。涙は流れたままだ。
「校長先生は何故ここに」
少し落ち着いて、話を始める。
「修行じゃよ…まぁ守れないのなら意味がないがな」
校長先生は暗いまま話す。
「わしは大昔、1つの戦争を止めた」
驚いた。先生が話していた事だ。まさか校長先生がその人物なんて知りもしなかった
「じゃあ…僕に修行させてください」
土下座をする。涙は止まらない。
「僕は絶対にアイツらを許さない!!僕が必ず!!必ずティフォーネを倒す!!お願いします!!僕を強くしてください!!」
「わしの名前はマーレイ・エペだ。エペとそう呼べばいい」
「ありがとう!!エペさん!!」
僕はエペさんの所で修行をすることになった。
「まずは村に一旦戻り、様子を見よう」
エペさんが村へと様子を見に行くと言った。僕はどうなってるのか、あまり考えたくはなかったが、行くことにした。