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【1-1】高津用賀

 その後は聞かなくても分かる。

 飛び込んだんだ。


 でも、なんで? そんなことしそうな感じには見えなかったし、とても元気だった。


 確かに『あの時』はショックを受けていたけれど、時間とともにいつもの用賀を取り戻して行った。


「あの子ね……あの子と同じ駅でなのよ」

「うそ。同じ駅なんですか?」


 同じ駅。その言葉を聞いて全身が鳥肌に覆われた。


「そう、だからきっと、そうね。ずっと忘れられなかったのかしらね、あの子のこと。いい子だったし私もあの時は残念だったもの。だからきっと忘れられなかったのかしらね」


 母親はわっと泣き出し、父親の胸に顔をうずめる。


 桜は呆然と立ち尽くし、作業員が手際よく、時にバイトを怒鳴り付けながら荷物を運び出す様子はスローモーション画のように目に映った。



 どのくらいその場所にいたのか分からない。



 どうやってそこから家に帰ったのかも分からないが、気がついたら自宅の前で鍵穴にカギを差し込むところだった。


 高津用賀の家の近所に住んでいたのがよかったのか悪かったのかはさておき、もう会うことはできない彼氏の突然の出来事に動揺し、この先いったいどうしたらいいのか、どうすべきなのかも分からなくなっていた。


 

 10階建てマンションの屋上からスイカを落としてみると木っ端微塵になる。そして辺り一面に真っ赤な実をさらけ出す。新幹線に飛び込めばそんなかんじだ。


 削り取られた肉はミンチ状になり、ピンク色の塊に脂が光る。どろりとした白い脂、ソーセージのような細長くぶにゃりとした棒状のものが辺り一面に飛び散るのは、スピードの出ている列車に飛び込んで引きずられた時。


 ホームに入ってきている失速した電車の場合、


 どうなるのだろうか?


 高津用賀ははたしてどういう最後を送ったのか。

 

 桜はそんなことを考えたくないと思えば思うほど、頭はそっちの方面へと傾いてしまう。



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