表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/63

【玉川富多子 】6

 あざみの両目からは真っ黒い血がドロリと流れ、口の端からは唾液がつっと垂れ落ちた。


 富多子は大梯と見つめあったまま腰に腕を回しながら歩いているので、車両の中から自分達をじーっと見ているあざみに気がつかない。


 不自然な歩き方で富多子の方へ近づくあざみの姿は乗客には全く見えていない。


 キャリーケースに入れられた犬が激しく吠えたてるが、あざみと目が合った途端にクーンクーンと鳴き、伏せて腹を見せた。


 ずるずると足を引きずりながら進むあざみの背中はばっくりと開いていて、真っ赤な血肉と背骨が見えている。


 帰ったら何から観る? と、テレビの話に夢中になっていて、それはダメ、あれから観ようなどと、電車の中、ドアにもたれながら甘い時間を消化している二人にとって、車両後方から自分たちの目の前に迫ってくるあざみは目に入らない。


 あざみが富多子に手を伸ばして触れようとするその前に大梯が富多子の手をとり、電車は目的地、自宅のある駅に着いた。


 間一髪免れた二人は、あざみの横をするりと抜けて電車を降りた。


 電車に残されたあざみは手を伸ばしたまま無表情で首だけを動かして二人を目で追った。



くくく.........


 耳元まで裂ける口の中からは黄色く変色した歯が垣間見える。


 その間から虫が顔を出した。


 目を細めて笑っているその目からは透明な液体が流れ落ちていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ