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【玉川富多子】1

 富多子は好奇心を抑えるのに必死だった。


 人の死を目の当たりにすると、妙な興奮に胸が踊る自分がいた。


 ホーム上を歩くすべての人を突き落としたい衝動にかられていた。


 肉が削り取られるあの鈍い音、血渋きが飛び散る瞬間、寸断されても言葉を発する頭をじっとりと眺め回したいと思った。


 下っ腹がうずくあの感覚はあの日以来、受けていない。


 新町桜が死んだあの日から、その衝動は日増しにつのっていく一方だ。


 富多子には現在新しい彼氏がいる。


 あの事件は自殺として片付けられたので彼女に捜査のメスが入ることはなかった。


 しばらくおとなしくしていた富多子だったが、ニュースや新聞で残忍な事件を見聞きするたびに我慢していた欲望が膨らみ、今では爆発寸前にまで達していた。


富多子の彼氏は用賀とは逆のタイプだ。


 モテそうな要素はなく、その分一緒にいてもいなくても安心できて落ち着くことができる雰囲気を持っていた。


 物足りなさはある。


 しかし、今の富多子にはそんなタイプの男が精神的にも落ち着けて丁度よかったのかもしれない。


 名前は池尻大梯(いけじりだいし)同い年で気もあった。


 同棲しはじめて3ヶ月が経った頃に大梯が富多子を誘ったことがきっかけで、止まっていた歯車が動き出してしまった。


「富多子ちゃん今度の日曜日、暇だったらちょっと出掛けない?」


「いいけど、どこに?」


 夕食後に二人でのんびりとテレビを観ながらココアを飲んでいるときに大梯が富多子に話しかけた。


 出掛けようとしていた場所はピクニックで人気のある公園で、お弁当を持って出掛けないかという誘いだった。


 もちろん二つ返事で行くと答えた富多子は、土曜日にお弁当の材料を買いに行こうと提案する。


 大学生だがまだ未成年なので、できるバイトもたかがしれているため奮発したデートというのは難しい。できるだけお金をおさえて楽しめることを日々探していた。


 しかし、電車で目的地へ向かうにはあの駅を通過しなければならない。


 富多子はそのことを思うと心臓がどきりと音を立てた。


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