【さがしもの7】新町 桜
「快速だね。よかったねえ」
「やめて……お願い」
「ああ、思いだした。タイラちゃんもそんなこと言ってたよお」
「やっぱり、あんたがタイラも……殺したの?」
「やだ、違うよ。殺してなんかないよ。私、あなたたちとは違うもん」
くすくす笑うあざみの手には指がなく、赤黒く腫れ上がっている。
「なんで笑えるの? なんでこんなことするの? あんた、最低」
「……ねぇ、時計見て。この時間って、桜ちゃんならなんだか分かるよね? ね?」
「この時間って何よ。まさかあんた用賀も」
桜の体から怒りが沸き上がった。
用賀が飛び込んだ時間だ。
「違うよ桜ちゃん」
「違う?」
「ぜんぜん違うよ」
桜の目の前に立ち、かわいい顔にあどけない笑顔を貼りつけた。
「用賀君……じゃない」
「どういうことよ」
「用賀が一番最初ってこと。だって私寂しかったんだもん。一緒にいたかったの。それにそうなることを用賀も望んでた」
言い終わると同時にあざみは線路の上に移動していた。
指を下に指し示す。
「ここで用賀君が死んだ。私と同じように横になって顔から轢ひかれた用賀君、用賀、用賀、ようが……ひかひかひかれ」
ぞくりと恐怖が走る。
「ここここ……ここここ」
少し先の方にあざみが移動していて、同じように指を指す。
「ここでタイラちゃんが死んだ。体はぶっつり半分に切れた」
桜の足はまた前方へと動き出した。
「あんた……ちょっと。足が、足が足が……動くな!」
「ここでここにここに……」
腰を落とし、愛おしそうに眺め、優しく愛すように線路を撫でた。
_何度も。
___何度も。
_______何度も。
「ここで_______私が死んだの。オボエテル?」
桜の方を向いたあざみの目は、真っ黒い穴があいていた。
「ここにするといい。ここで最期にするべき。ほら、私と同じところで」
「何言ってんの。やたわやだやだ。絶対死なない! 私は絶対に、死なない!」
「みいーんなここにいるよお」
「やめて。絶対に私はそうはならない。ならないならないならない!」
「ほら、用賀君もタイラちゃんもみいーんなここにいる。見えるでしょう?」
あざみが指さした方に顔を向けると、そこには息を飲む光景が広がっていた。




