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【さがしもの4】新町 桜

「私が探してるのはあ、そんなものじゃないんだよ」

「だって、これを返して欲しかったんじゃないの? だから毎晩私のところに来てたんでしょ?」

「違う」

「じゃ、何なのよ」

「それはね」

 

 顔を上げたあざみの顔は、子供のようにあどけない笑顔で歯を見せて笑い続けている。反対に髪の毛ほ徐々に逆立ち始めた。

 

 桜の元に風が届き始めた。その風に顔を歪め、反らす。


「何これ」

 

 富多子の方に目をやると、興味深そうに大きく目を見開き桜をじっと凝視していた。

 

 寒気。

 

 風が強くなり、髪は後ろに流された。鼻につく臭いも強烈なものになる。


「なにこの臭い」

 

 桜は手で鼻と口を覆い、反らした目をあざみに戻したとき、持っていた赤い小物入れを落とした。

 

 2、3歩後ろに下がり、動けなくなる。

 

 目の前にいるのは、いる? いない。いや違う。

 地面には真っ赤な血みどろが広がっている。その中にぶつ切りになった胴体や腕や脚や髪の毛、細かい肉が沈んでいた。

 

 髪の毛がかかってよく見えないが、頭部もある。

 

 すべて、腐っている。


 虫が動き回り、小さい水しぶきを上げていた。


 臭いはそこから来ている。

 

 甘い死臭は鼻腔に届くと懐かしい気持ちにさせる。


「桜ちゃん」

 

 後ろから呼ばれて振り返ると、そこにはあざみが不思議そうにしながら立っていた。


「うそ。だって今ここに」

 

 もう一度振り返り、ぶつ切りになった死体のあった場所を見たが、そこには何もない。


「だって今ここに」


「どうしたの? まるで何か変なモノでも見たって感じ。何かあった? あったなら、相談にもるよ。助けてあげる。ふふふ。その前に返して」

 

 手を差し出されて桜は戸惑ったが、出された手のひらの中に小物入れを雑に乗せた。一分でも早くこの場を去りたかった。


「やっと戻って来たあ。ずーっと探してたんだこれ」

 

 あざみは小物入れの中からはみ出ている金色に輝くネックレスを取りだして、一通り確認すると、にこりと笑う。


「きれい」

 

 自分の首にネックレスをつけ、リボンの形のヘッドを手でなぞる。

 

 残された小物入れは、もう用が済んだとばかりに勢いよく線路に投げ捨てた。

 

 投げ捨てられた小物入れを目で追い、線路に視線をやる。



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