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【さがしもの1】新町 桜

 赤い水で髪を洗う。

 シャワーから流れる水は赤黒い塊の混じった水だ。どろりとした黒い塊が肩や腕や胸元ではねる。

 

 手に落ちた赤黒い塊を潰して、顔を覆うように塗り、オレンジ色の脂で全身をべっとりくまなく覆う。べたべたの脂まみれになった体は、獣の臭いがするが嫌じゃない。


 これで何日目だろうか。

 

 桜は毎晩のように同じ夢を見て、同じところで目を覚ます。


「まじ、ほんとに勘弁してよ」

 

 汗でぐっしょりと濡れている首元に気持ち悪く髪の毛が絡み、手で拭うように後ろにひとつにまとめる。

 

 激しく跳ね回る心臓を抑え、枕元に用意してある水を飲み、エアコンを入れて無音の室内に機械音を響かせた。

 

 ほんの数秒で涼しい風が桜の体を駆け抜け、汗をかいた体が冷たくなる。

 

 そのまま横になってみたが、もう、寝られるような気持ちではなかった。

 

 時計を見ると、4時08分。いつもこの時間。

 

 目を閉じてエアコンの風を感じ、時間が過ぎ去るのを待つしかない。それ以外に方法はないから。

 

 コトリと音を立てて何かが倒れた音がして飛び起きた。音の主を目で捜し、びくりと跳ねた心臓を抑えた。

 

 恐る恐るベッドから出てテレビを横に少しずらすと、赤いハート形の小物入れが一つ、蓋が半分開いた状態で見つかった。


「これってあのときのやつだよね」

 

 中身を見たとたん、昔のことがスライドショーのように頭に流れてきた。

 

 体から力が脱力した。


「これだ。これのことだったんだ。これのせいでもあるんだ」

 

 蓋をしっかり閉じて両手でぎゅっと潰すが、びくともしない。


「そんなに返してほしけりゃ返しに行ってやるわよ」

 

 腹立たしさと気持ち悪さが体中を覆う。

 

 音を立ててテーブルの上にその小物入れを叩きつけて睨みつけた。

 

「こんなもの……無くなってしまえばいいんだ」

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