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【2-3】富多子

「もう、やめて下さい。私別に何もしていないと思います。だから、学校の友達にもそういったことを言うのは……」

「友達なんていたっけ?」

 

 くすくすと肩を揺らして笑う。


「お願いしますタイラさん」

 

 頭を下げた。


「私忙しいから、はい、用立てできたならさっさと出して」

 

 タバコを足許に投げ捨て、ヒールでタバコを擦り潰した。

 タバコの中身の茶色い葉っぱが灰色の地面にぶしゅりと撫でつけられる。

 

 綺麗な白い手をぬっと富多子の方へ伸ばし、手のひらを富多子に見せて2、3度上下に揺らし、催促した。


「お金は……ないです」

 

 消え入りそうな声で訴える。


「じゃ、なんのために呼んだのよ。あんたがここへ呼び出したんでしょうが! 話があるからってわざわざ私を呼んだのはあんたよ! ふざけた真似してるとあんたもあの女と同じに……」

 

 罵声を浴びせながら富多子の持っている鞄に手を伸ばした。



「お久しぶり」

 


 富多子のカバンに伸ばされたはずの手を握ったのは、あざみだ。

 宮前タイラに負けないくらい綺麗な顔で微笑んだ。

 目の前にいるあざみを見て、宮前タイラは手を振りほどき、飛び退いた。

 振りほどいた手は、自分の真っ白く綺麗なワンピースで何度も何度も拭きまくる。


「やだ、ちょっとなにそれ。なんか変なものにでも触られた感じ。あからさまに手を拭くなんて、失礼だよ。タイラちゃん」

 

 くすくすと笑うあざみに、タイラの顔がひきつった。


「久しぶりなんだから少し話をしようよ」

 

 あざみは自分が座っているベンチの横をとんとんと叩いた。

 

 飛び退いたタイラの横には富多子がいるが、富多子は下を向いたまま目を合わせようとしないし、何も言わない。

 

 タイラは自分の体が動かなくなっていくのを感じた。しかし、足だけは彼女の気持ちとはうらはらにあざみの元へと近づいて行こうと、勝手に動く。

 

 富多子に助けて貰おうと振り返るが、富多子はやはり下を向いたまま動く気配は無い。

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