表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/63

【2-1】富多子

「ほらね。やっぱり来たでしょ。あなたは絶対ここに来ると思った」

「……はい」


 あざみは優しく富多子の手を取り、顔を覗き込んだ。


 富多子はこの前会った時よりも痩せこけ、目は落ちくぼみ、血色は悪く顔は土色とほぼ同じだった。テニス部ということが信じられない程の姿に変わっていた。


 あれからさらにエスカレートしたいじめはとうとう富多子を追い詰めた。


「で、決めたの?」

「はい」

「分かった。それは……誰だったの?」

「宮前タイラさんです」

 

 その名前を聞いてあざみの動きが止まる。


「ふーん。その名前には、聞き覚えがあるわ」

 

 顔を上げた富多子はあざみの顔をじっと見て、次の言葉を待った。

 あざみは首を左右に振り、不気味に瞬きを早めた。


「知ってるんですか?」

「ふふ。たぶん知ってる。その名前は忘れちゃいけない人のはずだから。私にとってもね」

「会ったこと、あるんですか?」

「ええ」


宮前タイラは大学生で、富多子のバイト先の先輩だ。

 

 タイラを迎えにバイト先に来ていた彼氏と富多子が店先で楽しそうに話しているところをたまたま見てしまったタイラがやきもちをやき、嫌がらせをしてきたのがそもそもの始まりだという。

 

 富多子の高校にまで嘘でかためた話を持って来て、いろいろな人を巻き込んでの手の込んだ嫌がらせにほとほと疲れ果てていた。


 みんなが白い目で見てくるし、居場所が失われつつあった。


「でもぜんぜんそんなことないんです。宮前さんの帰りを待っている間に話していただけで、ようは時間つぶしに私と話していたんだと思います。宮前さんの勘違いなんです。何回もそう言ったし、彼氏さんにも話をしてもらったのに、信じてくれないんです」

「そうなんだ」

「彼氏さんはきっと宮前さんがそんなことするなんて思っていないと思うし、考えてもいないと思います。でも」

 

わっと泣き出してその後は話にならなかった。


「すぐに楽にしてあげるから。私に任せておきなさい」

「本当に楽になるんですね? この状況から抜け出せるんですね?」

「本当。私は嘘は言わない」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ