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長政はつらいよっ!弱小浅井はハードすぎ!!  作者: 山田ひさまさ
~ 朝倉氏、義秋公を奉じ上洛す ~
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浅井の反撃 ! ~ 辛口でいきましょう ~


長島の攻防の最終話をお送りいたします。

それぞれの大名が、皆それぞれの思惑で動いております。

先の読み合い、つぶし合い。

安全策を採るのか? それとも勝負をかけるのか?




長政の命を受けた複数の部隊が準備を整え、すでに行動を開始している。



愛州宗通、渡辺右京ら武芸に精通した者が、選りすぐりの精鋭を率いてすでに長島へと出立している。


遠藤直経、海北綱親、安養寺氏種、樋口直房、平井定武、高野瀬秀隆 ら近江衆が進軍を開始した。

堂々たる隊列が、関ヶ原から養老・海津へ抜け南下してゆく。


伊勢の水軍衆も準備は整っていた。


竹中重元が、息子の重矩を伴い喜々として活動していた。



~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~



― 忍びのお仕事 ―


長政の命を受け密かに長島に潜伏していた伊賀者が、松平に与している雑兵に噂を流している。


 曰く、

”浅井が一向宗と手を結んだ。”

”三河が、一向宗に襲われる。”

”いずれ、浅井の大軍が攻めてくる。”

”わしら、皆殺しにされる。”

”松平の殿様は、雑兵に隠している。”

”俺たちは、しょせん捨て駒だ。”


雑兵の間に動揺が走る。不安が、よけいな妄想を生みだし、噂は人目をはばかりながら広まった。


負けはじめた軍勢の雑兵は弱い、特に自分勝手な奴は”こらえ性”がないのである。

略奪を餌に加わった兵など、自分のいのちが一番可愛いに決まっている。

お目当ての金品の略奪に成功した兵が、いつまでものこのこ居るはずもなかった。

夜陰に紛れて、雑兵の逃亡が目立ちはじめた。




― 松平 ―



 松平側も手をこまねいてはいない、素行の怪しい奴を見つけ出し見せしめに厳罰を加えた。

恐怖を持って統制しているのが、状況であった。



 そんな、情けない状況下ではあるが、元康は楽観していた。

忍びの噂が広まっているということで、

『浅井としては、決戦を避けたがっている』と読んだ。


その証拠に、浅井側からの攻撃は、散発的である。


「何とかこのまま和平交渉に持ち込めそうだ」

そう元康は考えていた。



しかし、元康は勘違いしているのである。


浅井長政という男は、やられたらやり返す男であるということを……

この時の元康はまだ知らなかった。



~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~



恐るべき事実がある。

近江の動員力は、優に3万を超えるのである。

野良田表の戦いの折、六角側が2万5千、浅井が1万1千動員している。

磯野員昌が率いていった2千など、序の口である。



粛々と、近江衆1万が北伊勢に迫ってきているのであった。



~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~



― 市江島東部、織田の陣屋 ―



信長はさすがに、浅井長政という男のことを知っていた。


そして、信長はおそろしく慎重であった。

いざという時のために、すでに幾つかの保険もしかけておいている。



侵攻当初、長政自身に動きがあれば即座に対応するつもりであった。

つまりは、松平の切り捨てである。



『尾張統一のため、今川方の服部氏を攻めていた所、松平家が今川方の増援にやって来てあろう事か長島に陣地を築いた。』 という事にするつもりであった。


多少苦しい言い訳であるが、開戦当初であれば何とか言い訳がつく。

三河勢が優勢であれば市江島の攻略が終わるまで、同盟を続けても良いとも思っていた。


いずれにせよ、願証寺に干渉されたくなかった。そして、出来れば願証寺の島が欲しかった。



信長の理想としては、市江島を奪い取った後、疲弊した松平を叩き浅井に恩を売る事である。

伊勢湾での交易を考えれば、浅井との対立は悪手である。

しばらくは、友好を保った方が都合が良い。


逆に、そこで元康を葬れば、礼として長島の島の幾つかと、さらには三河が手に入る。

まさに、一石三鳥であった。


そして事態は、信長の思い描くように動いていた。

すでに、南部の鮒浦砦が陥落し、残る市江島の一之江城も風前の灯火ともしびであった。



そして、その日。

服部氏の砦が落ちた……。

服部友貞が腹を切り、服部党は解体し信長の傘下に入ることとなった。


近江衆1万が軍を発した翌日のことである。



「やはり手土産が必要か……」

手に入れたばかりの一之江城にて、信長が呟いた。




~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~



8月18日


近江衆1万が、木曽三川の西岸に布陣した。


桑名城、中江城、 屋長島城、大鳥居城、香取砦に浅井の旗がはためいた。



 この日すでに、大島攻略の最終戦が始まっていた。

しかし、島を守る三河兵は精強ですでに死兵と化していた。


これには、さすがに攻めあぐねるしかなかった。

輪中というものは、水と石垣・土塁に守られ”ほとんど城みたいなもの”である。

それほど攻めにくいものなのである。



 松平元康は、交渉を有利に進めるべく大島に軍船を出した。

これは、浅井の大島攻略の船を扼し島の陥落を防ぐためであり、味方の兵を収容するつもりはなかった。


元康がここまで強気に出られるのも、信長が市江島を落としたからこそである。

三河と尾張の兵を合わせれば、まだ互角に戦える戦力があるのだ。

それを示せば、相手は乗って来るであろう。


「いま、大島が落ちるのは不味い」


早く和平を結びたいと、気がいてきていた。

さすがに追加で1万の兵が投入されると、元康でさえ気が気では無くなってくる。


「早急に信長殿と連絡を……」


元康の気持ちを察したように、織田家の軍船の集団が近づいてきた。


「やはり信長殿も、気が急いているのであろう……」



呑気にそう思っているヒマはなかった。


”パーン、パパーン”


その銃声が戦闘開始の合図であった。

織田信長は、服部党の残党を先頭に押し立て、松平勢が占拠する加持戸島を攻めてきたのであった。


「なんたること!」

あまりのことに、元康ですら呆然と立ち尽くしてしまう。


「殿、如何なされます」

酒井忠次が、まず声をかけ。


「どうか、ご下知を」

松平康忠が、決断を促した。



「織田の犬を独り残らず討ち果たせ、三河の意地を見せてやるのだ」

裏切られた怒りは、あまりにも大きかった。


「「「「おお~っ」」」」


酒井忠次、松平康忠、大久保忠世、大久保忠佐、平岩親吉、服部正成

逆境に強い三河の諸将が、元康の下知に力強く応えた。



三河の諸将は、よく戦った。

薄汚い織田の裏切りに耐え、よく奮戦したといえる。


しかし、いかに三河兵が気勢をあげようと、臨時雇いの兵はしょせん、”雑兵”でしかなかった。

思わぬ織田の裏切りに、武器を捨て逃げだす始末だ。


もはや、陣形も戦術も何もあったものではなかった。

ただただ無秩序な争いが、加持戸島にて繰り広げられていた。



散々に打ち負かされた三河兵、雑兵はすでに逃げ去ってしまっていた。

大久保忠世、平岩親吉、服部正成が、元康を船に乗せ逃がすのが精一杯であった。


松平元康は、ほうほうのていで島を脱出し岡崎へと逃げだした。




~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~



翌8月19日


愛州宗通率いる切り込み隊が大島より帰還した。

渡辺右京、神後宗治、荒木元清、城戸弥左衛門、伊東景久、疋田景兼、覚禅房胤栄

そうそうたる手練れが凱旋する。


《捕虜の中に、本多忠勝、榊原康政ほか、大久保忠勝、杉浦勝吉がいたようだ。》


切り込み隊の任務は、有望な若者(捕虜)の確保であった。


鉄砲で無為に殺してしまわぬよう、ある程度弱らせてから切り込んだのであった。

もちろんそれが出来る状況の時だけだと厳命されてはいるが、……


『無益な殺生をなるべくしない』 という方針には変わりがなかった。




― 京.長政 ―



『無益な殺生をなるべくしない』 という方針は、偽善というよりは実用の側面を重視して考えている。


太閤秀吉のひそみにならおうという訳である。

まあ、努力目標ではあるのだけれどね。


早馬からの報告を受け、一応の結末を知ったのであった。


「みな、ご苦労だったようだな」

皆がそれぞれに 、しっかりと役割を果たしてくれたようである。


とはいえ、今後どうするのかは、”浅井家当主”である俺の采配にかかっている。




書状によると、長島の件の報告の使者を京へ寄越すそうだ。

担当は、『丹羽長秀』らしい。



あの後、信長はすかさず軍を返し”三河に向かった”と報告を受けている。


実に、忙しい(せわしない)男である。



さてと、こちらも頑張りましょうかね。


京での朝倉景鏡の醜態の話もすこしばかり飽きてきたが、その件も含め小谷に書状をしたためよう。






長政が直接絡まない戦でしたが、ずいぶん長引きました。


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