84/111
末法、末世
ああ、また『一向宗』だからと、『正義』という名で虐殺が起きた。
悲しいことである。
門徒のほとんどは、ただ救いを求める衆生である。
彼らが困窮しているのは、元をただせば守護の責任である。
彼らを、守るのが役目のはずなのに……みな殺してしまったか……。
夫を無くした妻、父を亡くした子供、そして老いた年よりがいるであろうに。
それらを無視して、”土地が空いた”と別の人を移住させる。
それが政治というのであれば、政治などしない方が良かろう。
彼らは、物ではない、『人』なのである。
確かに欲はあるだろう?
人間なのだ。
本願寺の坊主にいいように操られているのも、また事実である。
しかし、それだけで皆殺しに値するのか?
結局は、為政者に信用が無かったのである。
相手と対話、相互理解をする努力よりも(謀略を含む)
殺してしまった方が、後腐れ無く楽なのであろう。
『ああ、嫌な世の中だ! ほんとうに地獄だな』
忍びからの報告を受け、長政は溜息をついた。
彼が目指す理想は、遙か遠い先にある。
その道のりの遠さに、思わず溜息を漏らす長政であった……。
彼の心の内を理解できる者など、この『戦国の世』には居ないのかも知れない。




