学校を創ろう
急激な領地の拡大には、対策が必要です。
これまでも、学校となる施設は作ってあった。
しかしそれは、江北の国人衆の子弟を取り込むためのものであった。
浅井家の教育の二本の柱
ひとつは、 『家臣の教育』
もう一つは、『領民の教育』 なのである。
家臣の教育についてだが、これは今まで、各家庭任せの所が多かったが、そこをあらためた。
小姓に取り立て教育するのもひとつの手ではあるが、小谷城下に”文”と”武”二つの道場を開設しそこで学ばせた。
ひとつは、『武術道場』にて、”剣術、馬術、組み打ち、槍術etc”を仕込んだ。
愛州宗通.通称:元香斎や渡辺右京らが師範役を務めた。
最近は、神後宗治、荒木元清、城戸弥左衛門、田付景澄らも招聘した。
もう一つは、『手習い・修身道場』にて、”読み、書き、算盤、道徳(思想教育)”を教え込んだのだ。
こちらは、石田正継、小堀正次、河田長親(岩男)らが頑張ってくれた。
統一した思考法を身につけて、互いの連携を緊密に図るということで、一定の成果を得られた。
今回浅井家は、近江・美濃・伊賀・北伊勢を支配下に置くことに成功した。
それに応じて、人材の育成についても大きく改革をせねばならない。
教育改革が必要だ。
できれば歴史上活躍した有名な武将・商人達を早期に登用したいものだ。
そう考え、忍びに所在を調べさせてある。
しかし、問題が無いわけでも無い。
確かにひき抜くことも大事ではあるが、ヘタを打つと”えこひいき”している風にしか見られない恐れがある。
それならば、先ずは学校で学ばせ、『成績優秀者』として取り上げた方が、いくぶん軋轢が少ないであろう。
『上級学校』は、国人衆から人質を取るためのうまいいい訳でもある。
浅井家にどっぷりと浸かってもらえるならば、面倒な人質管理は不要だからな。
領内各地から、浅井家家臣を目指す子供達を集めて先進的な教育を施そう。
上級学校(7歳から12歳)にて基本を学ばせ、適性を見極めるのだ。
元服後、野戦学校(兵・武官)、師範学校(教育・文官)、士官学校(将官)にそれぞれ進ませればよい。
(今は、軍組織の改編を進めている最中だ、まずはひな形を作っているところである。)
もしかすると、史実の武将よりも優秀な奴がいるかも知れないな。
一般の寺子屋教育に関しても、人員を精査し教員免許を発行する。
すでに師範役についているものは、研修のみで免許を出すが、今後は師範学校を出ないと与えないようにしていく。
まあ、思想教育は大切である。
『浅井家の一員』として働いて貰うように頑張って貰おう。
「せっかくだから、女子校も創ってしまおう!」
気を良くした俺は、さらに風呂敷を広げるのであった……。
戦火を避けて避難する有名な人物とかも保護の名のもと招聘して、教師陣の人材の充実を図った。
雲谷等顔 狩野松栄 長谷川等伯 後藤光乗
今井宗薫 里村紹巴 観世元忠
小西如清 吉田宗桂(了以父)茶屋清延 安井(道頓)市右衛門
中井正吉
曲直瀬正盛・片山宗仙らは、小谷に『啓迪院』と称する医学校を創建した
なぜか、医学校のみならず、職人学校・芸術学校まで出来てしまっていた。
かくして、小谷は『一大教育地域』となっていったのである。
~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~
”から~ん、から~ん、から~ん ”
用務員のおじさんが、鐘を鳴らしながら廊下を歩いて行く。
さあ今日から、僕の新たな学校生活が始まる。 楽しみなんだけれど、緊張しちゃうな~。
― 佐吉少年 ―
僕の名前は、佐吉(7)です。 本日、小谷の”上級学校”に入学しました。
すでに、お兄ちゃんがここに入学しているので心強いです。
今日は、初日と言うことで ”入寮説明”があるそうです。
遠くから来る子は、もうすでに入寮しているみたいですよ、大変だね。
兄から聞いた話によると……。
虎御前山の西麓に建てられた 『晴明館』が、僕達の寮になるみたいです。
町から見あげる校舎の建物は、凄く立派です。
『黒壁造り』と、いうそうです。
その名に恥じない、真っ黒で力強く、重厚な建前です。
櫓門とか、小谷のお城に負けない造りです。 格好いい!
登校と云うより登城でした。お城の雰囲気に身が引き締まる気がしました。
上級学校は、”初等組”、”中堅組”、”年長組”に分かれていて、2年ごとに組が持ち上がるそうです。
でも、成績優秀な者は、1年で上の組にいけるそうです。
おにぃ…、こほん、兄から聞きました。
~ 回想 ~
「そうだよ佐吉、でも文武両方を修めないとダメなんだ、お前は文に流されそうだからしっかり鍛えるんだぞ」
「わかってますよ~兄上ぇ~子供扱いしないで」
「だって、子供じゃん。おねしょとか……」 兄.正澄(11)は、僕の過去の失敗をからかった。
「兄上ぇえ~」 ……イヤなこと想いだしたよ。 夜中怖くて厠に行けなかったらどうしよう。
― 回想終了 ―
長浜の町を一望に眺められる所に、上級学校の学舎と寮があります。
「うわ~っ、きれいだなぁ」
校舎から、長浜の町。そして、西の浜と琵琶湖が見えます。
なんでも、”自分が護るべき町をしっかりと脳裏に焼き付けなさい”という長政さまの有り難い配慮だそうです。
(本当は、長政さまの御殿が建つ予定だったとか。)
わが浅井家のご領主さまは、立派なお方です。
”ガラッ”
あっ、先生が来ました、僕たちは椅子に座ります。
うわっ、大きい!! 若くてかっこいいけど、何だか凄く強そうな先生です。
『やあ、諸君!私が諸君達のご主人、浅井長政である』
「「「「え~っ」」」」 「「「ぷぷっ、」」」
僕たち皆は、一斉にコケました。
(何だか判らないけど、そうせずにはいられませんでした。)
上級生の人達は、笑っています。この事を知ってましたね?!
『こほん。まあ君たちは、少しばかり私のお遊びに付き合ってもらおうかと私が選抜した。本当の入校は三日後だ』
「……」
『おや~反応が鈍いなあ』
なるほど、どおりでなんだか兄上や父上の様子が変だったんだな。
それに、よく見ると先輩とみられる大きい子もいるみたいだし……しかし、殿…?
「よ~し、それでは先生を紹介するぞ」
「小堀正次だ、よろしく」
……以下同様……
増田長盛
田中吉政
河田長親
板倉勝重
― 自己紹介 ―
『よ~し、名前を呼ぶぞ! 名前を呼ばれたら、みんな元気に返事をしなさい。そして自己紹介をするんだ』
「「「自己紹介?」」」
『あ~判らんなら、とりあえず返事だけでいい!』
「「「は~い」」」
― 年長組 ―
『それじゃ、先ずは年長組の紹介だ、まず…可児吉長!』
「美濃の可児才蔵だ、みんな纏めて面倒見てやる! 俺が”武の一番”だ!」
『次ぎ、猪飼秀貞』
「猪飼秀貞だ、水練と操船は俺に任せろ! 言うこと聞かないと沈めるからな!!」
『山岡景宗!』
「山岡景宗や、ええ子にしてたら怒らんさかいに、世話焼かすなや」
『脇坂安治』
「じじ・・甚内なんだなぁ…小谷のこ・こ・米は、うまいんだな」
『最後は、若いが藤堂高虎』
「藤堂高虎です。気軽に与吉兄さんと読んでください。頑張れば私みたいに飛び級できますよ。
ちなみに”文の一番”です! まあ大したことでは御座いません。ふふっ」
なにあれ! ちょっとムカつくなあ。”文”ならば負けないぞ~
《佐吉が何やら熱くなっている間に、自己紹介が進んでおります。》
毛屋武久 桂
片桐且元 抜作
蒲生氏郷 鶴千代
遠山友政 金三
安田国継 世明
角倉了以
堀秀村 衛門
市橋長勝
蒲生重郷 鴨千代
有吉立行 猿岩
米田是政 珈琲
本因坊算砂 寂光
大谷吉継 紀之介
井上時利
大島光成 盛三
木全忠征
伊勢貞為 航
片桐貞隆 駒千代
青地元珍
古田重勝 改
加藤重次
伊勢貞興 空
『ようし、次ぎ石田佐吉っ!』
「……」
『………ピキッ…』
「……」
佐吉は、考え事に熱中するあまり、名前を呼ばれたことに気付いていない。
”ばびゅん”
”すっこーん”
見事に、佐吉の額に白墨が命中した!
「痛てて」
『よし佐吉、お前居残りな!』
「へ?」
しまった…考え事をしていてやらかした…どうしよう。
「ごごご…ご愁傷様なんだな~」
脇坂のどもり声が、静まる教室に響いたのだった…(うざっ)…。
曲直瀬正盛を連れてきてしまった……元就死亡?
(まっいいか、死ぬ間際まで子作りしていた元気ジジイだし……。)




