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長政はつらいよっ!弱小浅井はハードすぎ!!  作者: 山田ひさまさ
~ 新たなる秩序をもとめて ~
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厳冬の関ヶ原 『くろかん登場』

くろかんは、頼りになります。



 本格的な雪の季節が到来した。

底冷えする寒さよりも、少しづつ増してゆく積雪が気がかりだ。

峠に降り積もる雪が、それまで賑やかだった中山道の往来を阻んでしまう。

そろそろ人々は家に籠もり、旅人は姿を消してしまう時期である。


雪おこしが鳴り響き、鉛色の雪雲が江北の空を覆った。



竹中重元に美濃の仕置きを任せたものの、俺は とても気がかりだった……。


「最悪の場合 北伊勢の放棄は仕方が無いが、美濃を手放すわけにはいかん!」


「ははっ、それはもう心得ております」


「特に織田家(の信長)には注意せよ、こちらから増援も送れん。 噂を口実に仕掛けてくるやもしれん」


「ははっ。 そちらの方は、すでに対応をいたしておりますゆえご安心を……」


「あとそれと、…重虎は、絶対に無理をさせずに静養させるように」


「ははっ、お気遣いありがとうございます」



老練な重元相手に、細々と指示を出してしまったが、それも仕方があるまい……


「頼んだぞ、今が一番大切な時である!」


 美濃に関しては、色々と気がかりなことが多いのである。

しかし、ここは正念場である。 なんとしてでも、踏ん張らねばならないのだ。




永禄9年(1566年) 正月



― 佐和山城 ―



 年が明けたものの、”将軍義輝公の喪中”ということで、華やかな催しは控えねばならない。

が、家中の動揺を抑え、しっかりと浅井の健在振りをアピールせねばならないのである。


という訳で。


 今年は、元日を小谷で過ごして江北衆より年賀を受けたあとは、佐和山城へと移動した。

 雪の少ない佐和山城にて、江南衆の年賀を受けた。

江南の方が京に近いこともあり、さすがに国人衆の動揺が大きい。

しかし 『黒幕は浅井だ!』という、例の悪い噂に関しては、誰も信じていなかったようで安心した。


美濃・尾張と違い、京・堺筋では『淡海殿』として、文化活動活動しているからな。

畿内で、噂を真に受けるものが居なかったのは幸いだ。


「やはり日頃の行いだな」


「左様でござる」

傍らに控える遠藤直経が、正装に身を包みいささか窮屈そうにしながら答える。


 この佐和山城も、江北への玄関口として整備してある。

冬期の拠点の城として、相応の格式と施設を備えているのだ。



 商人・僧・神主その他の年賀の挨拶も同じく佐和山で受けた。

京が再び戦場となる事態を憂う者達が、俺にこの先の展望を聞こうと大勢詰めかけてきている。

かなり遠くの商人までもが、わざわざ足を運んできている。

皆、死活問題であるから必死である。

平和を望むもの、戦でひと儲けを企むもの、戦火を避けようとするもの、人の欲は様々である。


 この数日間は、まさに目の回る忙しさであった。今年は来客の数が半端なく多いのである。

守護代としての公務と、浅井家当主としての仕事、個人的な案件でいっぱいだったがなんとか捌ききった。



 この後は、強行軍で大津は膳所に赴き、六角承禎様にご挨拶に伺う予定である。

今後の展開の話合いだ。


三好に六角家を取り込まれては、とてもマズイからな。

あと、そろそろ”シャン”としていただいて、蒲生・三雲を牽制していただきたい。

六角家が立てた義輝公を殺したのが三好なのだから、昔みたいに激怒してもらいたいものである。


承禎殿に送り込んだ義妹の報告では、息子の死を乗り越えようと多少しっかりしてきた矢先の出来事だっただけに義輝公の死は残念である。



― 膳所城 ―

 


「長政参りました」


「おおよく来てくれた」


「ご尊顔を拝し奉り、恐悦至極に存じます」


「おお、よくきてくれた」


「将軍家の事件お気を落とさぬように……」


「まあ、残念じゃったのう」


あかん、気の抜けたサイダーみたいに頼りない。

これでは、どうしようもない!


一条院門跡.覚慶様の事を相談しても、のれんに腕押しだ、反応が鈍かった。


「やれやれ」

俺は暗澹たる気持で、佐和山へと戻っていった。




~ ・ ~ ・ ~  ・~ ・ ~ ・ ~



― 雪原にて ―

 


時間は有限である。


俺には、どうしてもやらなければならないことが山積している。

多少無茶だが、この際 強行させてもらう。



俺は、特別部隊を招集した。


美濃への雪中強行軍だ!


新装備を使い、真冬の中山道を進んでゆく。

軍事行動ではないので、人員は精鋭のみに絞りこんだ。あとはサポートに廻ってもらった。


途中の村々には、すでに先触れを出し、付近の 除雪 並びに 暖を取る準備 と 暖かい食事を用意させている。



「さあ、行くぞ!」

鉄粉・おがくず・塩を利用した、”なんちゃってホッカイロ”や”ダウンジャケットもどき”を装備した我が精鋭達。


行方不明にならないよう、装備は赤色である。

行軍の邪魔にならないよう、小振りの旗指物も用意した。

恐ろしく目立つオレンジ色の旗である。


戦国時代には似つかわしくない”カラフルな恰好”で、山道を黙々と登っていった。



― 峠 ―

 


国境を越えると、そこは見渡す限りの、”白銀の世界”であった。



「さあ征くぞ!」


”クロスカントリースキーもどき”と、”えせスノーボード”が、真冬のゲレンデを滑り降りてゆく……。


「ひゃっほ~っ」


「「「ひいぃ~ぃ」」」

 


「ふう~っ、さああと少しだ気合いを入れろ!」

 

 坂道を滑り降りると、後はなだらかな坂である。 スケーティングの要領で軽快に雪道を疾走する。


「殿、この”くろかん”というものは、素晴らしいですね!」

隊員1号が、べた褒めだ。


「そうであろう」


「”すのおぼうど”も、楽に荷物を運べました」

2号も負けじと、ヨイショしてくれた。


「善きかな、善き哉!」


俺も少しは、やきもきした気分が晴れた感じだ。

(皆、気を使わせて済まんかった)




― 垂井 ―



俺は、一目散に菩提山城下の竹中屋敷を目指した。


屋敷は、妙に慌ただしくそわそわしていた。


「来たぞ~」

俺は、大声で到着を告げた。本当にようやく着いたのだ……。


「おお、殿! よくぞ来てくだされた~」

重元は感激しているようだ。


「雪の降る中、まことにありがとうございます」

重元夫人が、丁寧に膝をつき頭を下げながら、労いの声をかけてくれた。



「半兵衛の容態は?」


「間に合って良かったですわ……」


「そうですか……」

俺はホッと息をつき安堵した。


さすがにそのままというわけにも行かないので、とりあえず着替えをさせてもらった。


「殿、どうぞ」


重元夫人がお茶を出してくれた。

近江の煎茶である。


温かいお茶がうまい。


「ふう~」


温かいお茶が、芯まで冷えた身体を中から温めてくれる。


先ほどまでの焦燥感が、うそのように霧散してゆく……、


「はあ~」

ようやく、ひと心地着いた。



「おぎゃ~おぎゃ~」



「おおっ」


「元気な女の子です、母子ともに元気ですよ!」


「やった~」



竹中半兵衛重虎、別名.泰香。 女児を無事出産した!

生まれた子は、『蔵良くらら』と名付けられた。


「でかした半兵衛! いや、泰香 ご苦労さん!!」


「とのぉ~(泣き笑い)」


はあ、なんとか間に合った、少し窶れているものの母子ともに無事で良かった。


現地妻に徹する泰香のことは、俺と竹中家だけの秘密だからな……。

(半兵衛は、只今病気療養中の扱いである。)



~ ・ ~ ・ ~  ・~ ・ ~ ・ ~



 垂井で数日過ごした後、俺は本来の目的地に向かっていった。


美濃守護への挨拶である。

形式的な挨拶を済ませ、一堂に会した美濃の国人達に浅井の覇権を示した。


「皆の者。 本日は、この 『長政のため』 に集まってもらい大儀であった!」


「「「はは~っ」」」


将軍無き今、守護はお飾りにすぎない。

美濃の所領を安堵するのは、『浅井長政』である。


そのことを、あらためて美濃の国人・地侍衆に知らしめたのであった。




雪道に頼れる味方。 最強装備、”くろかん”の登場でしたっ!


 白はんべえ重虎である泰香は、長政の”心の妻 ”に徹する予定でした。

『忍ぶ恋』と いうのもなかなかいいものですが、本作ではちょっと無理そうなので止めました。

でも、さすがにそのまま朽ちてゆくのは可哀想かなあと思いまして、こうなった次第です。



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