表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/111

戦いの裏側で

浅井長政となった主人公


戦いの裏話

 観音寺での会見の後、六角方の捕虜は賢政と承禎の話合いの取り決めに従い速やかに江南へと返された。

彼らは捕虜とは言え、適切な治療を受け、半ば賓客として佐和山城にて丁寧にもてなされた。

もちろん、一色(斎藤)家の『不破の関侵攻』という事態は、彼らには伏せられていた。


 赤尾清綱 ・阿閉貞征それに文官の者が、捕虜の手当を差配していた。


 とくに、国人・地侍クラスは、お茶会に、新作の歌舞伎の披露、夜は酒宴と簡易露天風呂、至れり尽くせりであった。

もちろん武器の所持の身は認められなかったが。

本当に、捕虜なのかという、持てなしである。

重傷者には惜しげもなく、薬が使われた。

軽傷の者も、適切な処置で回復は早かった。

足軽の者ですら、キチンとした食事が出され、満足に過ごした。

彼らは、10日ほどの滞在で、すっかりとくつろいでしまった。


「お~、浅井の者は、なかなかイイ奴らだな~」

「んだぁ~こげなうまい飯を食わせてもらえるなら、帰らんでもええ」

「かかあは、どうする?」

「そうじゃった~」


 露骨な人気取りだが、背に腹は代えられない!

義賢様が相手なら頭を下げられるのに、四郎だからついムキになった。

いくら、「殺すな!」と命令したところで、戦場で守られるはずがない。

一色軍はともかく、六角軍に多くの死傷者を出したのは不覚だ!!


「どうだった?」

とって返して、佐和山での俺のひと言は、例の件の確認だった。


「例の件は、何とかうまく処理いたしました」


疲労の色が色濃くでていることからも、大変だった事を思わせる。

「そうかスマン」


「いえ」


 愛知川以北を占拠した。

捕虜を数多く取り込んで、どさくさに紛れて死体を処理してしまったから、表向きの死者は百名たらずだが。

本当は、もう少し多い。

まあ向こうも気付いているかもしれんが、「ほとんどが怪我人で済んだ」ということにしないと後々面倒だ。

義治の壊走で、いずこかへ逃げてしまったことにしてお茶をにごそう。


「まったく頭が痛い!」


 義治が無様な姿を見せるから、余計に混乱が起きて予想外の被害が出たんだからな。

半分以上はヤツのせいだ。



 論功行賞では、報奨金のお金、名物を部下達に贈った。

特に功績のあるものには、知行として100貫加増した。

明智光秀もその一人だ。


 『本領安堵』以外の接収した土地については、土地を浅井が管理し、国人領主、武将の子弟を旗本として取り立てていく方針だ。

土地の加増がないことに一部不満の声があったが、何とか宥める。

見せしめに小身の領主数名を土地を褒美として加増し『最前線』に飛ばしてやった。

無様に負けたら本領は没収だ。


 最前線の領地の防衛や農民の慰撫と収税の手間を考えれば、そう簡単には手がだせんだろう。

先祖伝来(親からついだ)だから、問題がないのだ、新規の土地(個人で経営、求人、銀行取引、顧客管理、確定申告、その他、すべて初めからやる)なら尻込みして、人(浅井)に任せていだろう?

代わりに、金(ボーナス又は昇給)をやる。他の形(商売)で利益を供与してやる。 

金や利益はやるが、土地と大元の利権は渡さない、それが戦国大名化への布石だ。

まあ大抵の奴は、この大勝利で俺に心酔しているので、当面は問題ないだろう。




 それにしても、明智を浅井家に引き込めたのは僥倖だ。

姉の婚儀のために、越前に行った際に俺は、光秀に目をつけた。

奴は、朝倉家では燻っていたからな。


 『美濃攻めの指揮を任せる』事を餌にした。

なにせ奴は、義龍には深い恨みがあるし、美濃の地理にも明るい。

やはり、一旦断られてもお願いし続けるのが大事だな。

それにしても、『美濃に明智の旗』というフレーズでここまで言うことをきくとは……。


 当初、すげなく断られた時からは、とても考えられん素直さだ。

よほど苦労したのか、それとも俺の地位や官位が光秀の予想をはるかに高くなったからか?


 何しろ、六角軍とガチに当たる可能性がある以上、部隊長を温存するにも限界だったからな。

二正面作戦なんて、ホント無理な話だ。

今回は、六角の戦意が低かったのと、不破の関の隘路という地形に助けられた。


 今後、竹中半兵衛、明智光秀を使って美濃に調略をかけてゆく方針だ。

なるべく、六角家を刺激したくないが、速やかに地盤を固めないとな。



 将軍.足利義輝公は、自身が走衆に任じた俺にたいして好感を持ってくれたようだ。

今後の展開上、とても有り難い。

六角に敵対したものの、いくさの後は大人しく傘下に戻っているのが功を奏したか。


 まあ何より、二万の敵を相手に怯むことなく

義を通し、味方を救い、敵を翻弄してのけた。

返す刀で、隙を狙う一色(斉藤)軍を押し返したのだ。


「まさに武士の誉れである」と絶賛していただいたのも当然か。




『これから、浅井はさらに大きくなる』


浅井長政となった俺は、そう決意を新たにした。



いやあ、誰も光秀についてご指摘がありませんでした。


一応、説明を入れました。


今後の為とは言え、ずいぶん黒い長政です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ