表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
長政はつらいよっ!弱小浅井はハードすぎ!!  作者: 山田ひさまさ
 ~ 『 涙まじりの雌伏編 』 ~
50/111

『雌伏編』最終話.  『桶狭間』 そのあとで……

ヨシモト生存!

この影響は、大きいです。

衝撃のラストは、賢政も、祐の方も、お腹をさすって笑います(嘘?)。



『今川義元公が生きながらえたらしい。』


その報告を、俺は信じられなかった。

(まさか……)


「おそらく、誤報であろうが、確認をしてほしい」


 そう、指示を出すのが精一杯だった……。

誤報もしくは、虚報であってほしかった。


 しかし、私の願いも虚しく『今川義元公』の生存が確認された。

今川側としても、『大殿の健在』のアピールに必死らしく、生存確認は容易だった。

織田家も、今川の大軍を撃退できただけで、とりあえずは満足といったところらしい。



まさか、既に歴史が変わっているなんて……。


俺は一体どうすればよいのだ?

何が正解だ?

何が正しい?


俺は、既にこの世界の人間と同じ土俵に立っていることに、気付きたくなかった。





「殿の具合は、どうだ?」

心配げな直経が、俺の様子を侍女に問う声がする。


「あれから数日、お食事をしていただくのがやっとであります」


「まさか、殿が寝込まれるなんて、何が有ったのだ?」


「おそらくは、例の合戦の事で、お気をお遣い過ぎになられたのかと?」


「確かに、医者の報告はそうかも知れぬが、解せぬ」

(あの殿に限って、他国の戦ごときでお体を病むほでのことはあるまいに……。)


「今は養生していただくのが肝要かと」


「そうじゃな、出直すといたそう」

直経は、すごすごと引き返してゆく。



「すまない…」

直経の気配を感じながらも、今は、会いたくは無かった。


 俺にとって、やり直しの利かない現実世界で、戦というものは恐怖だ。

ゲームのように、セーブできればどれだけ気が楽なことか。

だいたい、遊びではないのだ、本気の殺し合いだそんなの納得できない。


 みんなの笑顔が見たいのだ、殺し合いをしたいわけではない。

人殺しなど、真っ平ごめんだ。

誰も死なせたくはない。


今、家臣に会えば、そいつの『死に顔』が思い浮かんでしまう……。


まして、股肱の臣の『遠藤直経』である。


 『彼は、長政に色々尽くし、そして、死んでいった』 


 主君の為に数々の忠言をおこない、献策した。

直経の意見が取り入れられれば、あのようなことはなかったかもしれない。

それでも、不平を言わず黙って最後まで従ったのだ。

最後のいくさでは、涙を呑んで戦友の首を獲り、敵兵に紛れながらも、あと一歩が及ばなかった……。


 なんと悲壮なまでの、献身と覚悟であろうか。


 自分が生き延びるつもりはさらさら無く、主君を生かすことだけに執念を燃やし、散っていった。


「さぞや、無念であったろう……。」

それを想うと、何を自分は浮かれていたのかと、腹が立ってくる。

 

 もちろん、江北を良くしよう、みんなを守ろうと、真剣にがんばっては来たつもりだ。

しかし、どここらか上から目線、他人事で会ったと思う。

自分が恥ずかしくて、消え入りたい想いだ。

 

「殿、あまり思い詰めてはお体にさわります」


「くっ……」

やさしく声を掛けてくれる、お雪の死に顔まで見えそうだ。

(長政の母は、信長に指を一本ずつ斬られ苦しみながら死んだらしい……。)


「お雪、すまん」


「おかしな殿です。何をあやまっておいでですか?」


「……いろいろだ」


「もうあなた様は2児の父親になるのですよ、そんな事ではいけません」


「恨んでおるのか?」


「なにをです」


「…先に、縁と祐子がややを授かったこと…かな?」


「次は、私の番ではありませぬの」


「……そうだな……」

俺は、お雪の優しさに溺れた……



……と言っておこう。



 いつまでもクヨクヨしていては生き延びられん!

俺は、誰の死に顔も見たくは無いのだ。

自分自身で考え抜き、生き延びねばならない。

がんばるぞ。


 先ずは情報収集だ。

そして、今後の展開を読まないと行けない。


「誰ぞ、遠藤じゃ直経を呼べ!!」 


「「「「「ははっ、直ちにお呼びいたします!!」」」」」



 『桶狭間の激戦』 の詳細な情報が入ったのは、戦いから数日後のことだ。


 どこもかしこも、桶狭間の話で盛り上がっています。

中でも、喧しいのが、

 天候さえも味方につけた、『信長の決死の突撃』

なにせ、今川の大軍に怯まずに全軍突入を敢行したのだ、並の統率力ではない。

尾張から、あの今川を退けたのだ。

もはや、彼を『うつけ』と呼ぶものはいない


 そして、『井伊の退き口』だ。

直親に随伴した家臣のほぼすべてが討ち死にすると云う、恐るべき撤退戦だ。

深傷の義元公を叱咤激励し、自身の家臣団、全滅覚悟の強硬突破で見事、主君の生還を果たした。

 全身血まみれの赤ずくめで、かの岡部を始め、朝比奈や松平も呆然と彼を迎えたという。

『今川の赤鬼、井伊直親』の誕生である。

破れはしたものの、不屈の闘志を見せ、今川の崩壊を阻止した。

こちらも、その壮絶さに、皆が賞賛している。

 『隻腕の義元』は、家中の動揺を抑えきった。 



やれやれ、本当に歴史が変わったんだな!


 今川のまさかの敗戦に直盛殿が、多少は気落ちしているかと思ったが、「武家の常であります」と冷静だった。

旧主とは言え巨大な今川家にしてみれば、井伊谷衆など外様扱いだし、案外その場にいなければ冷静になるものか。『義元』も健在だしな。

 まあ本来なら、彼も討ち死にしていることだし、歴史が変わってしまった事を重く感じた。

直盛はすでに、浅井家の配下となってもらっている、俺のように取り乱すような酷い動揺がなくて良かった。

 あの後一応、直親殿の無事を確認出来たのも大きいのかな。

井伊家の代替わり早々で、お目見えをかねて本陣近くの配置だったらしい。

 戦功の大きさは凄いものだが、直盛が育て上げた家臣はその多くが散ってしまった。


 ほどなくして、井伊家家臣団壊滅を詫びる「詫び状」が、前当主直盛の元に届いた。

この報告は、さすがの直盛も堪えた様子だったが、流石は戦国の武将だ毅然としていた。


 まさかあの、直親殿がここまで活躍するとは……。

早めに、祐子の事を謝っておいて正解だった。

(ヘタしたら、単身小谷を落としそうな御仁だ、絶対に敵にしないでおこう。)


 祐子に、「逃した魚(直親)は、でかかったな?」

と冗談交じりに問いかけたが。


「これでようやく、直親殿も一人前です」

と、少し膨らんだお腹を愛おしそうにさすりながら返してきた。


「おいおい、アレが、井伊家の基準かよ!はははっ……」「うふふっ」



 『桶狭間の激戦』の盛り上がりは凄い。


浅井でも、この波に便乗して3000人規模の実戦を想定した合同訓練を行った。

2000対1000、の変則演習を取り入れた。

 3隊に分け、それぞれ1000名の部隊が劣勢側を1回、優勢側を2回繰り返させる。

まあ戦闘指揮は、遠藤直経や磯野員昌、海北綱親他の家臣がいてくれる。


 これからは、軍政や練兵にも力を注ぐ必要がある。

先は読めないのだ、打つ手を出し惜しみする余裕は無い。



『いざ小谷!!』


 俺は、江北の家臣全員を集めた評定を連日続けた。

みんなで、歴史を切り開くのだ。


『浅井は江北(みんな)の為に』


江北(みんな)は浅井のために』




― 新しい歴史が、これから始まる。 ―



『 長政?はつらいよっ!弱小浅井はハードすぎ!!』


『涙ながらの雌伏編』    ここに完結いたします。



 ご愛読、ありがとうございました。

一気に書き上げた、勢いだけの作品ですが、楽しんでいただけたのならば幸いです。


 コメディ成分多めのシリアス系転生ものです。

お好きなところを、もう一度読み返していただけたら、私としては望外の幸せです。

 

ご感想をお寄せいただいた皆様にも、改めてお礼申し上げます。

ありがとうございました。

 

                                 ひさまさ より      

 




このまま、引き続き


こぼれ話を、お届けして参ります。

続編『長政?はつらいよっ!! 静かなる逆襲!!』も投稿中です。

引き続きご愛読いただきますよう、お願い申し上げます。



『大一、大万、大吉、みんなで頑張ろう!』



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ