『手紙』
最近の情報化社会では、手紙という物をあまり書かなくなってしまった。
自筆の文字という物は、その人の想いを伝えるものである。
手紙を手に取り、相手のことを思い浮かべながらこころを読むたいせつさ。
これはそんなお話しである。
(多少読みにくいかも知れませんが、投稿したあとの画面を見て、手直し・編集いたします。)
話は少し遡るが……、ある日、井伊谷に一通の手紙が届けられた。
手紙の宛名は、『井伊直盛殿』
内容は、……「浅井新九郎」とか抜かす馬の骨からの、娘との結婚についての報告だった。
一応、結婚の許しを請う文面ではあるが、内容は一方的な通達だった。
傷物にした詫びと言う名の、事実婚だ。
ワシの可愛い祐子が、どこぞの馬の骨に盗られようとは。
「ぐぬぬ、それもこれも直親が悪いのじゃ!!」
嫁の椿は、「あらあらまあまあ」と、にやけている。
「さてはお主知っておったな?」
「前に、祐子から手紙が来てたじゃないですか?」
「何じゃと?わしゃ知らんぞ!」
「ほら、若君に仕えると」
「何で、仕官の話が、結婚に繋がるんだ!馬鹿も休み休みに申せ」
(何で判らないんですかね?)
「とりあえず、あの子もいい年ですし、納得しているみたいですからイイではありませんか?」
「ぐぬぬ、年増だと足元を見られたか?」
「それを言ってはいけなせんよ、あ・な・た!!」
夫婦のHA・NA・SI・AIにより、結婚を認める旨の返事が返された。僥倖である。
そして……。
先日、祐子から、手紙が届いた。
今度は、行間を読む必要のない物だった。
「妊娠した!」
たったこれだけ!だったのだ。
さすがに、これには夫妻揃ってビックリした!!
「「どこで育て方を間違ったのだろうか?」」
しかし、子供が生まれるのは目出度い。
早く孫の顔が見たいと思うのが、人情である。
直虎が居ない以上、直親を養子に迎え、がんばって働いてきた直盛だが最近虚しくなった。
一月ほど悩み、意を決して家督をゆずることにした。
椿の方など、さっさと『小谷』にいく用意をしている。
長年連れ添った夫婦の考えることなど、同じなのである。
娘と、生まれる孫の顔が見たいのだ、もはや人間としての本能だろう。
このまま引き留めようとすれば、直盛は本能のままにヨシモトにハリ扇チョップをかましかねない。
そんな危険な状況だったのだ。
だいたい『井伊家』と『今川家』は本来、敵対関係なのだ、しかなく従っているのでストレスが多いのだ。
よくよく考えてみれば、『あの直虎』なら、ヨシモトをたたっ斬る可能性が高かった。
(意外なところに落とし穴があったものである。知らぬ間にお家の悲劇を回避していたのだ。)
そうと決まれば話は早い!とばかりに雪解けを待ち、小谷へと旅だった。
そして、現在……須賀谷温泉で呑気に寛いでいる直盛を皆がよく見かけるのだ。
ヨシモトから離れ、悠々自適な直盛であった。
「ふぃ~極楽ごくらく。いのちの洗濯だがや。※」
(※注:直盛は、小谷にくる途中で、名古屋弁に感染した。)
― 今年の春 ―
直盛の来訪を受けて、浅井賢政は、井伊直親に手紙を送った。
心のこもった、よい手紙だった。
その手紙が、井伊谷の『井伊直親』の元に届けられた。
差出人は、あの『直虎』を娶った剛の者、『浅井賢政』からであった。
ぶるぶると震える手で、直親は綺麗にたたまれた手紙を開いて読んだ。
『 拝啓……(そこには、自分を気遣う心のこもった文章が綴られていた。
思わず、涙し小谷まで会いに行きたくなる名文が心を込めて書かれていた。)
…… 浅井賢政 』
直親は、猛烈に感動した。がんばろうと生きる希望を見出したのだ。
そして、ご機嫌な心で、添えられていた『祐子の手紙』を読んだ。
確かに祐子の文字であった……。
『頑固一徹』、『常在戦場』という一言は、確かに『直虎らしい』言葉だが、
「女としていかがなものか?」と、彼女の旦那と同じ感想を抱いた直親であった。
祐子としては……。
『 頑固一徹 (あなたのことなど、もう知りません。気にしてもいません。) 』
『 常在戦場 (大変でしょうが、井伊家のことをよろしく頼みました。) 』
ぐらいのつもりだったのだろう。
直親は……
『 頑固一徹 (こうなった以上、死ぬ気で戦いなさい!) 』
『 常在戦場 (井伊家の為に、死んでも戦いなさい!!) 』
と読み解いた。
……彼女らしい。
何とも清々しい、ウジウジ考える自分が愚かである。
当主として、井伊家を盛り上げよう。命を賭けて戦う決意を新たにしたのだった。
『新生.井伊直親』が、桶狭間で活躍を見せるのは、また別の機会で。
その時、歴史が動いたん?
今日はこの辺で。
(おまけ)
直盛の来訪を受けて、浅井賢政は、(慌てて)井伊直親に手紙を送った。
やべ~よ、よく考えれば、婚約者を寝取ったことになるじゃんか?
今の時代、側室OKの世の中だし、祐子正室、嫁を継室で簡単解決だろ。
第一俺だって、祐子は側室扱いだし……。
井伊の赤鬼が、ごねて来たらどうしょうか?
直盛殿は孫を差し出せばご機嫌みたいだが……死にたくないぞ!
賢政が思い浮かべる、『井伊直親』は直政の父ゆえ、『メカ本田忠勝』バリのトンデモ戦士を思い描いていた。
気合いを入れた詫び状を書き上げた。
まるで、源頼朝にお手紙する、義経のようだ。
心のこもった、よい手紙だった。
(腰越状のようなものではないが、……とにかく誤魔化せ!!迅速なクレーム対応だ!!)
祐子にも、一筆書いて貰おう!そうだそれが良い。
俺が喰われたという事で……。
あのお~、祐子さん・・・・・・、(直虎らしいけど)。
一方
井伊谷の井伊直親の元に手紙が届けられた。
差出人は、あの『直虎』を娶った剛の者、『浅井賢政』からであった。
ぶるぶると震える手で……、
優柔不断な私は世話になったからと、現地妻を伊井の谷に連れて来てしまった。
なんたる迂闊、現地妻は現地にいるから現地妻なのに……。
鬼のような形相で、祐子に見詰められた時には、正直死を覚悟したし、チビってしまった。
幸いにも、泣いて逃げ出してくれた。
……追いかけることすら出来なかった。
男としては最低だが、人間としては(生き延びるために)当然だろう。
風の噂に、主君を得て元気に暮らしていると聞いた。
よかった、心底そうおもった。
(近江なら、主の元を勝手に離れて井伊谷まで討ち入りしてこられないだろう?)
そう思って安心していた。
そして、よき伴侶も見つけたようだ。
凄い御仁もいたものだ。
あの祐子を娶るなんて……。
さらに、妊娠の報告!
他の女を連れ帰ったあの件以来、井伊家はぎすぎすしていた。
一応仕方なく養子に迎えられはしたが、伯父上との仲は壁が出来たようでよくならなかった。
しかし、懐妊というありがたい知らせが効いたのか?伯父上は、私に家督を譲りくださった。
そして、養父母が小谷に旅立った。
ようやく、私にも春が来たのである。
そう思って浮かれていた矢先に手紙が来たのだ。
(そうして、震える手で、)直親は綺麗にたたまれた…手紙を…
あの直虎を娶る豪傑 あの『浅井賢政』
一体何を私に要求してくるのだ……おそろしい。
手紙を開いて読んだ。
心のこもった、よい手紙だった。
『極度の緊張』と、『安心』
ホッと、心に隙が出来た直親だった。
さぞや、直虎の言葉は心に焼き付いたことだろう?
『 死ぬ気で戦いなさい! 』
『 井伊家の為に、死んでも戦いなさい!! 』
井伊の赤鬼(まだ赤くないけど)は、こうしてうまれたん?
『 死ぬ気で戦いなさい! 』
『 井伊家の為に、死んでも戦いなさい!! 』
『 死ぬ気で戦いなさい! 』
『 井伊家の為に、死んでも戦いなさい!! 』
『 死ぬ気で戦いなさい! 』
『 井伊家の為に、死んでも戦いなさい!! 』
こりゃ、直親もつらいよねっ。
井伊直親覚醒の回でした。
何か過去にトラウマがあるのでしょうね?
祐の方はイイ娘です、井伊娘ですよ。




