『浅井は、みんなの為に』
平井ゆかりちゃんを娶って、連れ帰った時のお話し。
小谷城に新婦の縁を連れて帰り、浅井家としての祝言を執り行った。
『若様の元服と祝言、二重に目出度い』
という触れ込みで『小谷城下』で祝言のお祝いのお祭りを盛大におこなった。
浅井の諸将や領民を驚かすよう、密かに仕込んでおいたのだ。
人心掌握は大切だと思う。(従業員の福利厚生で経費が落ちないかな?)
爺や石田を通して宿老と大谷市場、伊部・丁野、柏原・鳥居本の商人と石寺の商人に前もって声を掛けておいた。
酒、餅、酒肴を大量に取りそろえ、「来る者、皆」に大盤振る舞いした。
城には招かれない武士、兵士、足軽、町人、職人、近隣の農民、女、子供、にも分け隔て無く皆にふるまう。
黒鍬衆に仮設の建物や天幕を用意させ、火をガンガンと焚き、暖をとり、温かい鍋をふるまう。
大きな鍋には鴨と野菜を使った、暖かいうどん汁が”ぐつぐつ”と良い感じに煮えていることだろう?
おかげで、小谷城下は、人、人、人。どこもかしこも、黒山の人だかりだ。
小谷城下全体が、異様に盛り上がっている。
領民が敬愛する浅井の若君様の、元服とご成婚。めでたいに決まっている!!
酒飲みには、どぶろく、白酒、秘蔵の澄み酒も樽でふるまうという、大サービスだ。
つまみには、おでん、味噌田楽に、煮付け、漬け物、何でもござれだ。
下戸には、温かいお茶に甘酒だ。
紅白の大福餅とおかき……。
みんなの胃袋をギュギュッと鷲づかみにした。
浅井家にいい事があれば、自分たちにもキチンとおこぼれが貰える事を擦り込んでやるぜ。
唄や、お囃子、太鼓に鼓、剣舞に相撲。
子供には、独楽に羽根付き、祝いの言葉を書いた凧を配布した。
子供達が早速、凧を揚げる。
一緒に家臣の子供が、特製の大凧をあげる。
大凧には、 『 浅井は江北の為に 』 と紋をあしらいながら、大書してある。
「ははは、アドバルーンだ」
普通の凧には、「浅井家万歳」 「若様万歳」 「若さま!おめでとう」 と大書してある。
それを見て皆が唱和する。
つられて子供達も、こぞってまねをする……。
「「「「「 浅井家万歳!若様万歳!!若さまおめでとう!!」」」」」
「「「 『浅井は江北の為に~』 」」」
(計画どおり ニヤリ)
城下の賑わいを聞きながら、小谷城の鐘の丸、大広間にて祝言を執り行った。
不満をためていた宿老や武将も、麓から聞こえてくる領民の笑い声を耳にしてにこやかに笑ってくれた。
雨森、海北、赤尾、磯野、遠藤にはいろいろお祝いの品をもらった。
後は宴会である。
ガンガン酒をふるまう様に伝えてある、出し惜しみは一切ナシだ。
他の武将からも「さすがは若さまである」と、口々に褒められ忠誠を誓ってくれた。
チョロすぎますよ皆さん!!でかした我が家臣GJだ。大急ぎで作らせた甲斐がある
単純な上に純朴過ぎて、かの人たらしの藤吉郎秀吉に良いようにされそうで恐いです。
江北の人はいい人たち過ぎです。
その日は、夜まで楽しく宴が続いた。
さてようやく元服と祝言が終わったと思ったら、俺の館に遠藤直経が訪れて来て城に呼び出された。
おいおい、初夜はとっくに済ませたが、祝言の翌日の朝駆けはマナー違反でござるよ。
何事かと思ったら、「父上がお呼び」とのこと。(をいをい父上よ空気ヨメ。)
そのまま、鐘の丸へ。
(いざ江北か?なんだ一体!)
小谷城の大広間に入ると家臣一同がすでに揃っていた。なにこれ。
新年初めての評定なのか?と緊張して中に入ると、にこやかに微笑んだ父上がやって来て上座を奨めた。
訝しみながらも、元服を済ませたし、オレは次期当主だし、結婚したし「お披露目か?」と思っていると。
そのまま、父上は俺の隣りに腰を下ろし「家督を譲る」と宣言した。
「へっ」
「「「「若、浅井家の当主就任誠におめでとうございます!!!!!!我ら一同、若に付いていきます。」」」」
家臣一同満場一致で了承された。
ついでに忠誠を誓う誓詞の束を差し出された。
まあ~、なんて事でしょう~!皆が父上に若に家督を譲ってくれるかな?と無理矢理迫ったらしいです。
そして、親父もいいとも~!!らしい。Orz。
さすが国人領主だ、ノリで主君を決めやがった。
(懐いてくれる事は)嬉しいが、(簡単に罷免されそうで)嬉しくない。
これだから、『金ヶ崎』が、起こりえるのだ、おそろしい。
所詮は、『風』(ノリ)なのだ。
まだまだ、浅井は戦国大名化していない事の表れなのだ。
主君の権力がまだまだ弱く、基盤が脆弱である事の表れだ。
喜んでなんかいられんわい!
そんな訳で、いきなり俺が浅井家当主となりました。
人質→元服→祝言→当主
あまりの早い展開に、「公表は春まで待つように皆に申し渡しました」それが精一杯でした。
慌ててお公家さん達に元服のご挨拶の書状と付け届けを送った。
3ヶ月の猶予期間で何とか世代交代の支度をします。
だいたい「根回しをキチンとしろよ」と言いたい。
俺は顎で、遠藤、磯野、海北、赤尾、雨森、阿閉の浅井の宿老を扱き使い家督相続の準備をします。
「「「「ははっ」」」」皆さんやる気だけは十分です。
折を見て、平井パパにも連絡、義賢様に報告しました。
「俺、浅井家当主に成っちゃった、朝廷工作よろ。」
「幕府で勘弁してちょんまげ」とお返事頂きました。
「幸い今は義輝公が京都にいるタイミングだし、三好とも一段落じゃね?」という事で、上洛します。
三好や斉藤改め一色とかのついでに官位をもらう作戦です。
名付けて『そうだ、京都へ職と官位をもらいにい行こう!!』作戦です。
別名「職を求めて、ハローわ~くわく大作戦。」
ふむ、ニートが箱根で勝てそうな作戦名だ。
まずは、領国内での浅井家の地盤をしっかり固めます。
国人領主の盟主から戦国大名への移行を粛々とおこないます。
内政を成功させた暁には、数年以内に軍制改革にも着手すると武闘派の宿老、将兵の皆に発破をかけています。
スローガンは「江北の繁栄」「強い浅井の復活」です。
いまの浅井は弱い、だから強くする。
外征はともかく控え、訓練は内容を吟味して厳しく実践的におこなうと宣言した。
「浅井は私欲の戦いはしない。」
「浅井は江北の為に立つ、皆は浅井の旗の元に力を尽くせ」
あざといやり口だが、予てから用意しておいた、俺の旗印 『天下太平』 『慈』 を皆に披露した。
これも、海北友松の力作だ。
浅井家が軍を掌握するのだ。
『浅井は江北の為に』 『江北は浅井のために』
浅井家領民宥和政策、『江北は浅井家のモノ』と続きます。




