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長政はつらいよっ!弱小浅井はハードすぎ!!  作者: 山田ひさまさ
 ~ 『 涙まじりの雌伏編 』 ~
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『新九郎の元服』

何とか、家臣の暴発を押さえた新九郎!


ついに、新九郎君が元服いたします。

 もう、親父も家臣も江北の舵取りとしては、アテには出来ない。


 とりあえず感情で戦をするようでは、この先勝てないことぐらいは判っている。

まるで、「風」で政局が変わる、何処かの国の国政選挙みたいだ。

これからは、緻密な分析と統率力が求められるだろう。

しっかりと軍事方面にも心を配ろう。


家臣達にも言っておかないとな。

「今は雌伏の時だ」

「江北の平和に寄与するのだ」

「浅井は私欲の戦いはしない(今は)」

「浅井は江北の為に立つ、皆は浅井の旗の元に力を尽くせ」


 とてもあざといが、俺の旗印を 『天下太平』 『慈』 としよう。

戦に出られず落ち込みがちな、家臣達を宥めつつもしっかりと釘を刺しておこうか。

特に足軽達に関しては、味方につけてこちらに引き込んでおかんとな。

 

 本当の意味での集団戦を教え込むようにしておかないとな。

直属の親衛隊を募集しておこう。

まずは黒鍬部隊に参加させて、集団行動と命令の絶対遵守を身体にたたき込んでやる。

「海兵隊式」がいいか? 『アイスマン』に頼もう。


 今後の事を考え、俺は事の顛末と自身の思いを平井定武殿に書状にしたため送った。

「私といたしましては六角家に臣従いたす用意はございます。

現在の京極家は、正当性を欠く高延庶子を傀儡として擁しております。

有名無実となり果てた京極家の被官の立場から、既にお世話になっている六角殿の旗下へ正式に所属を移すという形で従属したいと思います。

浅井の跡取りとしましては是非、烏帽子親を六角家当主にしていただきたく思います。

 縁殿を娶り息子となる私としては、お世話になった平井殿との親子の杯を喜んで交わしたいと願っております。

ただ現状では、お恥ずかしい限りですが、家中の者に不満がありすぎて苦慮しております。

このまま何もしないでは、万が一にも縁殿の身の危険すら出てくるかもしれません。

家臣を宥める為にも、そちら様の幾ばくかのご高配を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

必要であれば、私めが年頭の挨拶もふくめ観音寺城へ伺候します。」


 まあ、親父よりもつきあいは長いしこれで何とかなるだろう。

たぶん史実とはずいぶん違うんじゃ無いかと思うが、そこはまあ気にせずにオレ流で行こう。


「平井いかがした?」

「は、実は猿夜叉丸からお願いの書状が届きまして。」

「ふむ、浅井の面目というかことか?よくぞ家中を抑えたものだ。」

「すでに出陣が決まりかけていたらしいですぞ」

「要求の内容は?」

「烏帽子親を殿にお願いしたいとのことです。」

「それくらいは構わんが……。」

「さすれば、京極氏ではなく六角家を近江一国の守護と見なして従うそうです。」

「なるほどの、確かに形の上では京極めが近江半国を持っている事になってたな。

六角を半国守護ではなく『近江の守護』と認めるということか、面白い、たしかに悪くない。

義輝様を無事京に据えたし、新しい帝となった。

猿夜叉丸も少しはものを見る目があるという事だな。飼い慣らした甲斐があるというものだ。」



永禄2年(1559年)になる

新春

 俺の門出だ。松が明けるのを待って華やかな装いの従者を引き連れ、観音寺城へ向かう。

家臣達の見おくる顔が不満そうだ。

「おいおい、子供じゃあるまいしそう不足そうな顔をするなよ」

にこやかに笑って城を出る、供回を従え一路南へ颯爽と馬を進める。

 今回は、城下の寺に宿を借りているのでそこに入った。

観音寺城の本丸御殿へ伺候し、六角義賢様に新年のご挨拶を言上する。


吉日、

 六角義賢様を烏帽子親に元服をした。

格式に則った、厳かな儀式だった。

諱をいただき『浅井賢政』となった。

(が~ん、やはりか?いやそう聞いていたけれど。俺、長政でなかった。オリ主?どうしよう?)

若干焦りながらも、六角家の大広間にて盛大にお披露目をおこなう。


翌吉日、

 平井曲輪に伺う。

六角家重臣平井定武様にご挨拶、親子の杯を交わした。(婿養子か?)

そのまま、儀式は続き、平井様ご息女縁殿と祝言を挙げ晴れて夫婦となった。

 縁もしばらく見ないうちに、とても綺麗になっていた。

しっかりとちぎりを結んだ。彼女で3人目だし慣れたと云おうか、やることはしっかりやり終えました。


都合5日間の日程をつつがなく終えた。


 六角義賢様、平井様そして、国人の皆様にご家来衆からもお祝いを頂き儲けました。

元服直後ですが、家臣というか、どちらかというと宿老の跡取り扱いです。

 まあ、浅井家の取り込み・家臣化を、内外に知らしめるべく見せものにするのが六角家のねらいだからな。

領主の烏帽子親と重臣の義父、嫁のコンボで固められたからには、重臣扱いが妥当だ。

(そらそうだよな、ほとんど婿入りをするくらいに俺が譲歩したんだからそれくらいは当然だろう。)


 平井様が義賢様に提案して観音寺城の防衛には寄与しないが、そこそこ便利の良い所に夜叉丸という曲輪をもらったしな。

館も格式にのっとっているし、立派なもんだ。小谷の家臣が五月蠅くなったら縁はここに住まわせるようにしよう。

人質にもなるし、平井殿は安心するだろうし一石二鳥だ。

 六角家にして見れば、浅井を完全に取り込めたと思うだろうし良いじゃないか。

まあ、もらえるならもらってやるさ。タダだし。


 ちょうど今の時期は将軍足利義輝公が、ど田舎の朽木から京に帰っているし、朝廷も代替わりをしているから。

世の流れ的には六角に乗るのが正解だと思う。

 というか、一応つなぎを取っておかないと、浅井は六角と一色(斉藤)に挟まれてしまう可能性もある。

京極の暗躍も怖い。名家というものはG並にしぶといし、権力者の傍にいると何かとタチが悪い。

どんなに無力でも幕府が認めれば、北近江の半国守護なのだ、そこが厄介だ。

だからこそ、六角に乗り、近江の守護と全面的に認めることで、京極の主張を潰すのだ。

六角と京極では京極の方が新参者、六角が江北一帯を京極ではなく『浅井に統治させている』体裁をとる。

六角家に借りがある義輝公も、これなら無碍にできまい?京極はただの蠅である。


 祝言の宴会の席で浅井家次期当主?として、いろいろな方とつてが出来たのが嬉しい。

来客には、俺の新作の清酒「さざ波」と「湖水」をたんまり飲ませてやったからな、良い宣伝になっただろう。

板張りの部屋に江州畳を持ち込んで敷き詰めてやったしな。

尻が冷たくないから、宴会が盛り上がってみんな欲しがってたぞ。

 利権関係をどさくさ紛れに『ご祝儀』として、浅井が確保する事に成功した。

何せ、この時代は金が絡むとややこしいのだ、金も使うし気も遣う。

会場は海北友松の金屏風絵を飾り立てたし。俺の焼いた茶碗で皆に茶を点てた。

茶もそうだが酒も醒ヶ井や髙月の名水で仕込んでいるからな。上手いのは保証してやろう。

 今まで疎遠だった方からもアプローチがあったのでよほど旨かったのだろう。

これで俺は『浅井賢政』となったわけだ、『長政』でないと判って落ち着かん。

平井ゆかりちゃんも、浅井縁になったわけだ。

長く一緒に過ごしていたから、違和感なく落ち着くのが良い。


 そう言えば義賢様の息子の義治も俺と同い年なのだが、先に元服したくせにまだ結婚の話を聞かないな。

どっかの大名家との婚姻話が進んでいるのかな?

これまで、三好とか将軍家や細川が絡んでゴタゴタしていたし難航しているのやもしれん。

 あいつもなにげに縁に気があったみたいだし、危なかったぜ。縁が純潔を守っていて良かった。


 ホント、うちもなんであのタイミングで戦争しようとするかね、六角家はしたたかでもお坊ちゃま気質。

以外と甘ちゃん大名なんだから、『優秀な寄生先』として大切にしようよ。

いい機会に恵まれて助かった。

 まあ、江北の家臣達にとっては気に入らんことばかりかもしれないが、観音寺城の宴も俺にして見れば新開発の製品を売り込むチャンスと割り切れるし。

ややこしい商人達との利害調整も六角家のご威光で難なくクリアだ。

15年がかりで、内部に浸透し、念入りに調略をおこなっているみたいなものだからな。

 俺って草(忍者)みたいだな。


俺の感覚では、『武』(いくさ馬鹿)の尾張者、『知』(おりこうさん)の近江者と云うイメージなのに、なかなか家臣団を内政に組み込めないではまいか。解せぬ。

爺達にはかなり負担をかけて済まないと思っている。


 六角が浅井を討たずに配下に取り込んだという事は、浅井は六角の庇護を受けると云うことだ。

そこを拡大解釈して、六角の力を後ろ盾において反対勢力を排除しておこう。

 浅井が京極派に対して、なにをしようが問題ないと言っているようなもんだからな。

浅井が六角家を近江守護と認めたなら、遠慮は無用!京極なんてポイだ。

 京極とか土岐とか過去の名家って言うはゴキブリみたいにしぶといからな、上坂氏とかちょくちょく五月蠅い、京極残党勢力を完全に排除しておこう。浅見氏にももう少し圧力をかけておこうかな?

そんな事を考えながら館へと戻る。



『浅井長政』では、ありませんでした。

お市が、家来に聞いても、判らなかったはずです。

『浅井賢政』です。家来は合っていました、正解です。


もちろん史実です。

長政の「長」は、三好長慶か、織田信長のどちらの「長」なんでしょうかね?


『アイスマン』は、やしゃ君時代からの剣の先生です。

普段は温厚で優しい師匠です。

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