~遠藤直経という男、小谷にて~ ティーブレイク02
直経ファンの皆様、お待たせしました。
~遠藤直経という男、小谷にて~
お送りいたします。短いですが、午後のひとときにどうぞ。
先年、めでたくも 『浅井 新九郎』になられた、『若君様』
いつも颯爽としていらして、思慮深いすばらしいお方だ。
さりげなく、私たち皆を導いて下さる。
元あるじの久政様に「遠藤~、観音寺城へ行ってくれ」と、下心丸出しの猫なで声で言われた時には、
思わず、その首をへし折ろうかと思ったものだ。
思いとどまって良かった、六角など「皆」斬り殺してしまいたいが、さすがに若君に止められている。
『若君のお役に立ちたい』、大それた願望だとは思っている。
私には、剣と戦しかないのだから・・・・・・。
まるで役に立たない小姓どもを叩き伏せ、近習を這いつくばらせる。
「これは訓練である。」
「「「「ありがとうございました」」」」
若の薫陶のおかげか、皆やる気だけはあるようだ、感心感心!!
楽しい雲雀山の館の生活ではあるが、気に入らないこともある。
それは、「お~い、直…」「ははっ」「…虎、チョットイイかな?」
ちっ、またあの野郎か?若君は、何故あいつをあんなにも重用なさるのだろう?
(私がいるではござらぬか……。)
殺伐としたまま、私は他の奴ら(弟子ども)とともに、小谷城下は派須賀谷に赴き疲れを癒やした。
「いやはや、温泉は良いな~。」
「ほっこり温まりますねぇ~隊長。」
「うむ、流石は若君が見つけて下さっただけのことはある、弘法大師様もかくやであろう。」
「「「「ですね~」」」」
若君は、気前よく我らに温泉を与えて下さった。
「ふうっ~生き返る」
「さっぱりしましたね」
「いや、良い湯でした、疲れが吹き飛びます。」
風呂上がり招かれた部屋には、豪勢な料理と酒が用意されていた。
私はほとばしる「感動」を抑えられなかった。
いま私たちはのうのうとしていているのに、若君が気をつかって……私は未熟者だった…。
この気遣いが、大切なのだ。
さっそく我らは、囲炉裏に招かれた。
穏やかに微笑まれる、若君に誘われ、夕食を御相伴にあずかった。
にこにこと食事される若と、給仕のお雪、そして、若君のご愛妾『祐の方さま』だ。
いつ見てもおきれいな方である、若にまことふさわしい。
囲炉裏で作られる食事は、とてもおいしかった。楽しい酒宴が続いた。
しかし、なぜだかモヤモヤが収まらない。
何故なのだろう?
すると、
「直経ちょっと来い」
私は「若」に伴なわれ入浴することとなった。
若自慢の内湯らしい。
「誰か女性が、入っているかもしれない」
(えっ、なんですと~?)
指を差された先の脱衣籠には、女物の……。
(こっ、これは…襦袢…)
「つまらんことで心を乱すな」
(え?)
「直経、ムキになるな、ここは混浴(敵地)だ」
(どういうこと、ですか?)
「俺がここにいるのは、覗きの為だ」
(嘘ですよね?)
「男なら堪えろ」
(若、直経はシュチュエ~ションだけで暴発しそうです!)
くううっ、「新九郎様」は、普段は声に出して本心を吐露する事もお出来にならないのだ……。
何と過酷な、殿様生活。それに引き替え、私のなんと未熟なことよ。
穴があったら入りたい(てへ)。
ぜひ全力で、御護り(同行)せねば。
(私は心の中で、ひっそりと『我が主君』にさらなる忠誠を誓った。)
内湯には……湯煙が漂い私の視界を遮る、…おおっあれは、祐の……。
…はっ! 気付けば、温泉宿の一室で眠っていた。
「一体、何があったのだろう?」
~後日~
「ぐぬぬぬ、あの井伊直虎のヤツめ~。」
しょせん余所者のくせに、「新九郎様の護衛」と称し、いつもいつもベッタリ。
「うらやましいわっ。」
浅井新九郎の忠臣、遠藤直経。
彼の出番は、すぐそこ(前話)だ、活躍してくれ!もう少しの辛抱だ。
遠藤直経は、過激な炎の特攻隊長です。
ですが、『純情な、おとこ』でもあります。
やしゃ君が、「観音寺城に来ては行けない男」と、評しただけのことはあります。
『くのいち』には敵いません。
ですが……、
一番傍にいて欲しい、頼れるアニキです。
話の都合上、なぜか直経は気付きません、出来る男のハズなのですが……。




