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長政はつらいよっ!弱小浅井はハードすぎ!!  作者: 山田ひさまさ
 ~ 『 涙まじりの雌伏編 』 ~
29/111

次郎の想いは?

次郎が、国元へ手紙を送りました。


『 ― 父上様へ ―


拝啓

 晩秋の候、いかがお過ごしでしょうか。


 早いもので、あれから1年が経ちました。

直親殿のことにつきましては『もう過去の事』と笑えるようになった、今日この頃です。

私の心構えが未熟で、例の出来事について動揺してしまった事も『今は良い想い出』となりました。

敬愛できる主君にお会いできるきっかけと、アイなりました。


 剣の腕を見込まれ、指南役として『かの君』にお仕え出きる事となったのは、偶然とは言え、えにしが有ったからだと思います。

剣の指南は、私の性格もあり、少しばかり厳しい物となりました。

ですが、私の鍛錬にがむしゃらに食らいついてくる向上心があって、とても好感が持てました。

弱い自分を受け入れ、強くなろうと藻掻き苦しんで……、

さらに、自分を高めようとしている我が君。

その心意気に惹かれたといえましょう。

必ずや良い領主になるだろうと思います。いえ、私がそういたします。


 若の傅役、雨森弥左衛門秋貞殿の格別なお計らいで、『若君』に正式にお仕えできることになった時には

うれしさのあまり、頬をつねったほどです。


 さらなる鍛錬を課し、組み手の方もご指導いたしました。

将来は、お家を背負うお方ですから、忍びからの不意の仕掛けにも遅れを取らないよう。

徹底的にご指導いたしました。

実践的な指導のおかげか、若君の想いが勝ったのか、この頃では私の方が組み敷かれるまでの御成長遊ばれました。末恐ろしい逸材です。

「民を思い、国を愛する』優しいご主人様にお仕えできる事を、改めてここに御報告いたします。


井伊の谷もこれから寒くなる頃合いですが、どうかお風邪など召されませんように。


それでは、またお便りいたします。

ご健勝で。


 ― 次郎法師より ―                                              かしこ  』




 井伊家の当主、井伊直盛の処に手紙が届いた。


出奔した跡取りからの手紙であった。


微妙に判りにくい文面だが、主を得て元気にやっているらしい。

「は~、致し方があるまいて」

女連れで帰ってきた直親に、直盛とて思うところがない訳ではない。


「元気でやっているんであれば、それで良かろう。

せめて次郎法師の(祐子が産んだ子)に井伊家を継がせたかったが……。

まあこうとなっては、本当に致し方があるまいて。親としてせめて幸せを願ってやろう」


傍で手紙をのぞき込んでくる妻に手紙を渡しながら、溜息をついた。


一方、直盛の妻(椿の方)は、次郎の報告を読み解いて、微笑んだ。



「あの子も幸せを掴んだようですね……」



~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~


《椿の方による、行間解説付き》



『 ― 父上様へ (自分勝手なお父様へ) ―


拝啓(やっほ~)

 晩秋の候、いかがお過ごしでしょうか。(一応ご挨拶いたします。私も大人ですから。)


 早いもので、あれから1年が経ちました。

(羽を伸ばして清々しています。)


直親殿のことにつきましては『もう過去の事』と笑えるようになった今日この頃です。

(あんな薄情なヤツなど知りません!綺麗さっぱりと忘れました)


私の心構えが未熟で、例の出来事について動揺してしまった事も『今は良い想い出』となりました。

(娘を男扱いする家から逃げ出して正解でした。)


敬愛できる主君にお会いできるきっかけと、アイなりました。

(敬愛できるやしゃ君に出会えたし、愛が成就いたしました。)


 剣の腕を見込まれ、指南役として『かの君』(見つけた獲物)にお仕え出きる事となったのは、偶然とは言え、縁が有ったからだと思います。

(恋愛はご縁ですね~。ショタですがなにか?)


剣の指南は、私の性格もあり、少しばかり厳しい物となりました。

(井伊家式恋愛法でアメとムチです)


ですが、私の鍛錬にがむしゃらに食らいついてくる向上心があって、とても好感が持てました。

(ふふふ、効いてる効いてる。うふふ)


弱い自分を受け入れ、強くなろうと藻掻き苦しんで……、

(思惑通り、ニヤッ)


さらに、自分を高めようとしている我が君。

(私のやしゃ君、本当に逸材でした。)


その心意気に惹かれたといえましょう。

(私の方が好きになりました。惚れてまうわ~)


必ずや良い領主になるだろうと思います。いえ、私がそういたします。

(よき領主に仕立て上げて、玉の輿です。お母様から聞いた逆源氏計画です。)


 若の傅役、雨森弥左衛門秋貞殿の格別なお計らいで、『若君』に正式にお仕えできることになった時には、うれしさのあまり、頬をつねったほどです。

(傅役とはいえ、男なんてチョロいものです。でも、うれし~夢じゃない。)


 さらなる鍛錬を課し、組み手の方もご指導いたしました。

(既成事実作りのための下準備も行います。ショタと、直に絡むのは、もうたまりません)


将来は、お家を背負うお方ですから、忍び(くのいち)の不意の仕掛けにも遅れを取らないよう。徹底的にご指導いたしました。

(おんなの事を教えてあげましょう。プライベートレッスンです。)


実践的な指導のおかげか、若君の想いが勝ったのか、この頃では私の方が組み敷かれるまでの御成長遊ばれました。末恐ろしい逸材です。

(勢いあまって最後の一線まで越えてしまいました。てへ、ペロ。)


「民を思い、国を愛する』優しいご主人様にお仕えできる事を、改めてここに御報告いたします。

(優良物件と『ゴールイン』いたします。私、幸せになりますね、お母様!)


井伊の谷もこれから寒くなる頃合いですが、どうかお風邪など召されませんように。

(井伊谷も良いですが、せめてお母様だけでも来て下さいね。お待ちイタしております。

あ、このイタしては、別に若君とイタしてじゃなくって、さらに籠絡とかではないですよ~、

お母様は深読みしすぎです。)


それでは、またお便りいたします。

(ばいび~)

ご健勝で。

(こちらはお肌ツヤツヤですよ~)


 ― 次郎法師より ―                               

(祐子より、幸せの御報告でした。)


 かしこ 

(じゃあね~お母さん、また報告するわ~)    』


 

 実直な直盛は行間を読まないが…、椿の方は、行間を深読みしすぎる人だった。


椿の方は、腐女子の素質がありそうですね。

でもこのぐらいに行間を読めれば、六法全書でも楽しく読めそうです。


 あくまで椿の方の解釈です。

直虎には、ここまでの「黒い想い」はありません。

弟として、弟子として、主君として、まるで我が子の如く愛を捧げます。


直虎のおかげで、新九郎は『井伊直政』のように立派に成長いたします。

いや~、甘ったれた「やしゃ君」を鍛えられるのは、やはりこの人しかいませんね。



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