雨森弥左衛門秋貞という男
雨森弥左衛門秋貞という男
皆さんご存じだろうか?
そう、爺である。
情報管理のお話し
雨森弥左衛門
「何故、彼が傅役に選ばれたのか?」
みんな、とんと見当がつかんかった。
久政は、何故彼を長男『猿夜叉丸』の所に遣わしたのか?
(それは彼が……、久政の犬であったからだ。)
実はこの弥左衛門、人柄はすこぶる良いのだがかなり気が弱く、争いごとが大の苦手で、武士にはまったくといっていいほど向いていなかったのだった。
雨森一族は、伊香郡の国人領主の親類。
まあ、イイ所の子ではあったが、所詮は三男。いずれ当主になる兄に扱き使われる定めだった。
しかし、……そんな事は誰も知らない。
~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~
「秋貞が『お松』という、それは気立ての良いおなごをこの『智善院』の境内で偶然見初めたことから始まるのじゃが……」。
一部始終を知っている住職は云う。
「まあ、つまり端折ってい云えば、この『お松』偶然にも久政が目をかけていた、おなごだったという事じゃ」
「へ~そうなんですか?」
「良くある話であるが、秋貞には笑えない話じゃった。」
「確かにねぇ(笑)」
「浅井家の久政公に『つまらん借り』を作ってしましい、犬になりはてたのじゃ」
「まあなんと言うことでしょう~、あまり傅役に向いていないのでは?」
「江北の国人連中は、皆が六角に迷惑を被っとるから、『大の六角嫌い』じゃ、そんなヤツを観音寺城に送り込むなどありえんかった」
「そうですわね(……)」
「そこで白羽の矢が立ったのが、秋貞じゃ。
ひとつ、ヘタレで、争いごとが嫌い。
ふたつ、久政の言うことをきく。
みっつ、名前が『雨森』で、重臣と勘違いされる。
とまあ、3拍子そろった処に、ちょうど奥方が妊娠!これが決定打じゃな」
「なるほど、ご住職のおかげでおもしろい話が聞けましたわ、さすが物知りでいらっしゃる」
「ふをっふぉ」
長閑な、寺の片隅での何気ない雑談話、見慣れた光景だ。
こうして、六角の忍者『お園は』
猿夜叉丸(後の新九郎)の身辺調査の一環として、傅役弥左衛門の貴重な情報を手に入れたのであった。
天文14年のことである。
流石は六角が誇る、甲賀は望月の手練れ、仕事が早かった。
たぶん、近所のお話し好きのおばちゃん達の中にも、六角の忍者が紛れていることでしょう?
~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~
ヘタレの秋貞が、猿夜叉丸に依頼されたとはいえ、極秘に事を運べる訳も無く……、
速攻で、次兄である清次に不審な行動を見咎められ事が発覚してしまい、すぐさま当主の弥兵衛に報告された。
「あ奴(弥左衛門)に任せていたのでは、とても心配だ」
最終的には、雨森一族が皆でフォローする事と相成った。
そのおかげで椎茸栽培を初め、なかなか上手くいっている。
そうして、秋貞は、兄弟に支えられ、猿夜叉丸の願いに応えた。
調子扱いて『順調です』とか報告していたが、本当はこんなもんである。
そしてある日、弥左衛門は、大好きなお酒の開発を命ぜられた。
『秋貞』はるんるん気分で調子に乗って、仲良しの阿閉某に話してしまった。
こんなおもしろそうな話はないとばかりに、あっという間に国人領主ネットワーク『酒宴の会』が皆に回状を廻した。
『浅井の若君の面白そうなお酒造り』は、こうして知らぬ間に立ち上げられていた。
試行錯誤と言う名の、『宴会』を繰り返し、見事高品質な『清酒』が出来上がるのは、もう少しだけ未来の話である。
情報ダダ漏れである。
秋貞という男、少々抜けてはいるが、抜け目が無い。
秋貞という男、少々抜けてはいるが、抜け目が無い。
まあ早い話が、独りでするのは無理でしたということ。
チートは所詮、ズルでしかありません。
弥左衛門のズル(チート)い、お話し。
しかし情報がダダ漏れですね(w)
「やざえも~ん」
「どうした、やしゃくん」
……頼めばそれで叶う?そんな甘い事は無いですよ。




