『改革のススメ』 内政
内政編
まだ充分に力が無い浅井家。
先ずは基礎からです。
江北の秋は足が速い、もうすぐ冬を迎える。
鮮やかな紅葉の季節がおわり、寒い寒い冬がやってくる、江南とは違い深い雪に閉ざされる。
どんよりと重たそうな雲がかかると、それは雪の合図だ。
俺は小谷城下、すぐ目の前の雲雀山に下屋敷をかまえている。新築だ。
12年に及ぶ人質生活を送ったのだから、そのくらいの我が侭は押し通した。
帰還の話が固まった頃から、けっこう強引に推し進めた。
資材を用意させ、縄張りを見届けてすぐに、普請に入ったから何とか冬までに間に合った。
一応、親父からの褒美として雲雀山館を頂く形だ。
山の麓に外様衆を含めた自分の配下をまとめて住まわせるつもりだ。
まあゆくゆくは、真田丸バリの出城(攻勢防御の拠点)にするつもりである。
師走になると、『ゆきおこし』が鳴り、そろそろ雪が積もるようになる。
「はあ~寒っ、」引き戸を開ける。
昨日から降り始めた様だ、今朝は一面の銀世界だ。
「「凄~い雪だ!!積もってる~」」
江南育ちのお雪と、雪をあまり知らない地方の祐子が、いきなりの積雪に驚いている。
やはり江南と江北は違うな。
新築の屋敷の庭に出て、お雪と祐子と戯れる。
せっかく雪が積もるのだからと、みんなで雪だるまを作った。
ついでとばかりに、かまくらをこしらえた。中でいただく甘酒は格別だ。
(そうだ、氷室を作って夏に氷を楽しもう。)
つかの間の休息を満喫した。
1557年正月
小谷で迎える初めての正月である。めでたい。
とはいえ、戦国の世の中は慌ただしく蠢いている。
俺も歴史の波に呑まれずに足掻いていきたい。
今はまだ元服前だが、浅井家嫡子として伊香郡近郊に所領1万石をもらった。
ふっふっふ、浅井新九郎となった事だし、領主としての活動を本格化させる。
良き人材を選りすぐって集めた。
というわけで、雲雀山館にて新年の評定を行った。
家老(傅役)、雨森弥左衛門秋貞
家臣
遠藤直経:親衛隊隊長、軍事顧問、相談役
井伊直虎(指南役・側室候補?)
海北友松:内政、各部署調整担当
石田正継:内政(農業指導)の補佐
小姓
小堀正次には小姓のまとめ役をしてもらう。
赤尾清冬
雨森弥太郎
磯野勝太郎
お雪:身の回りの世話(愛妾予定?)
先ず俺の為に集まってくれたのはこの10名だ、これからさらに家臣をそろえていきたい。
とりあえず一番効果的な人材を登用したとおもう。
というわけで、今回は内政(生産)だ。
以前から密かに下準備をおこなってきたモノを形にしていこう、その為の打ち合わせだ。
まずは食糧問題について、一昨年から食料の備蓄の為の救荒作物として、ひえ、あわ、そばを栽培させている。それなりに集積出来ているらしい。
植林事業、栗、柿、茶、蜜柑果樹の植林については今、苗木を購入若しくは育てているところだ。
今年から、そろそろ移植出来そうだと聞いている。
伊吹山の薬草の調査、養蚕については専門の知識がないと難しいのでまだ手つかず。
担当する人材の確保が課題ということだ、残念。
山岳部の農地の開墾と炭焼き、木材の伐採、炭(木酢液)の生産については、人を入れても良いいくつかの山を解放して、目下作業中。まあこれも問題無さそうだ。
紙については、わら半紙はすでに友松の指揮で作成課程に入りテスト済み。
和紙は今品質向上を模索中とのことだ。
(確か白土を加えても良かったような覚えがするので、試してもらう。)
わら半紙もそれはそれで需要があると思うので、先行して売り出すよう命じた。
まだ全般に、基礎研究を確認すると言ったところだな。
六角家から距離的に離れられたからか、気が楽だ。
俺もようやく自由に行動が出来るようになったので、今年からは実験農場を視察して間違いが無いか手順等確認していこう。
さらに現場を見て気づいた意見や思いついたプランを、先ずは石田正継に伝える事とした。
まあ、石田が農政担当秘書官か?
農場の責任者は、爺のひとつ上のお兄さん雨森清次である。
雨森一族にはホントお世話になっている。爺のおかげだ。
場所が六角領から離れているので秘密試験にうってつけなのだ。
和紙の方も道具や原料、製法を改良して良質なものを生産出来るようになっら、城下で座を作らせたい。
醸造、酒、味噌に関しては、爺がすでに職人を呼び寄せたようだ、道具も手配済みらしい。すでに生産に入っている。
というか、みなが”呑兵衛”なのか?
”お酒・つまみ”に関してだけ、異様に進捗が早いぞ!!
爺、遠藤に加えて赤尾と磯野、阿閉も噛んでいるようだ、『飲み助パワー』恐るべし。
清酒にする工程の実験と濃縮用蒸留装置の手配だけはこちらで用意しよう。
(まずいな、情報だだ漏れじゃないか?)
そして米の生産。
この時代、『米=国力』、といっても過言では無い。重要案件だ。
正条田植えとか、苗代など、良いと思われることを、検証しながら普及させていく。
それを伝える農業指導員の育成もいるな。
まずは、きちんとした、田植えの管理、暦法の見方(江北の地域基準)、苗代や肥料を生産性の良かった農家の平均値とともに割り出そう。餅は餅屋、米作りは農民に任せるべきだ。
地域の慣習というのもなかなか侮れないからな。
種籾の塩水選別とかは『家伝の極秘』とするとしよう。
とりあえず俺の領地のみで実行だ。
『浅井家で豊作祈願の祈祷する』という名目で集め、選別した種籾とすり替えよう。
それを餅を添えて、『祈祷済みのありがた~い種籾』と言って村に配布すれば良いだろう。
種籾を指導員が庄屋を使い一括して育苗し苗の管理をおこなう。
田植えの方法は、田植え歌やお囃子を流行らせてカモフラージュする。
みんなが並んで拍子を合わせて植えるクセをつけることで正条植えを普及させる。
さすがに俺のうろ覚えの記憶では、小説みたいに3倍5倍の収穫量は見込めないだろうが、……
(いくさ続き・家長の早死になどで、村によっては技術の伝承が上手くいっていなかったりする可能性もある。
それならば反収=1石(基本値150kg)が叶っていないことになる。統計のトリックというヤツだ。
そこは調査して重点指導だ。)
何とか2~3割増しの180~200kgを狙いたいものだ。
合鴨農法も導入予定。丸投げだ。
まあそんな感じの会議を幾たびか開いた。
あとは個別対応だ。
春になるまでに準備を進めよう。
― こんな内容の会話を、小説として文章にするのはつらいので、箇条書きで勘弁して戴こう。
本編の進行にはさほど影響は無さそうだ。 ―
チートと言うよりは、すべき事をするという感じですかね?
転生者なのに、2~3割の増産が『長期目標』なのが泣けます。
お酒だけは、『呑兵衛ぇ』のおかげで。
何故か?さくさく成功する気配が……。




