表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
長政はつらいよっ!弱小浅井はハードすぎ!!  作者: 山田ひさまさ
 ~ 『 涙まじりの雌伏編 』 ~
24/111

「浅井新九郎は、小谷でいろいろ考えた。」

江北篇、スタートです。

今回は少し堅めのお話し。


お付き合い下さい。


 小谷に帰還するやいなや、俺は解き放たれたかのように精力的に活動した。


 まずは、小谷城の大広間で浅井家家臣団と対面だ。

観音寺城も大概だったが、この小谷城も急峻な山城だ。

お屋敷を出て険しい山道を登る。

番所を抜け御馬屋敷、桜馬場を抜け、鐘丸の大広間前にたどり着く。


 道中。

「ふう、『いざ鎌倉』ならぬ『いざ江北!』の時には、小谷城に登城する習わしとはいえ、面倒なことだ」

直経に愚痴をこぼすが。


「若、登城してこその儀式ですぞ。ご辛抱あれ」と、あっさりと言い負かされた。


「確かに、儀式の中心だもんな」気を取り直し山道を登った。


 木々が途切れると、遙かに琵琶湖が見渡せる。

小谷城下の街も手に取るようだ。さずがは要地小谷だ。

街の賑わいは、観音寺城下にはおよばないものの、惣構えだ。

防衛力ではこちらの方が遙かに高い。


 織田の軍勢数万を、平然と見下ろしていた訳が判るというものだ。

確かにこの城ならば、そうそう負けることは、無いと思う。

最長8ヶ月籠もれば、雪が降ってくれ攻撃側の軍は行動不能だ。

ここに城を築いた、祖父、亮政公の戦略的・地勢的な着眼点は秀逸だ


「若、そろそろお召し替え下さい」

景色を眺め感心していると、友松に呼ばれた。


そろそろ広間に顔を出すために着替えねばならない。


「判った、行こう」


直経と友松に導かれ、支度部屋へと急いだ。


 大広間には、浅井に与する国人衆、譜代衆、親族・一門衆が、俺を待って勢揃いしていた。

 皆が俺の無事の帰還、そして初顔合わせを喜んでくれた。

(俺は、この者たちを導いていかなくてはならないのだ。)

判断を誤る事は許されない、決して『無意味な死を彼らに押しつけてはならない』と改めて決意した。

 


 堅苦しい儀式の後は、無礼講な宴会騒ぎが続いて大変賑やかだった。

この雰囲気が江北だと、しみじみ懐かしく感じられた。


 その後、10日ぐらいは、いろいろと挨拶回りに忙殺された。

父上よりいただいた屋敷にも押しかけてきて、いろいろ皆のふるさとの話を聞かせてくれた。

みな、『寄り合い』という会合が大好きなのだ。

流石に疲れた。


 半月ほどで、親族・家臣団の顔と名前を覚えるのは、なかなかできない。

役職名や続柄、婚姻関係を覚えるのが、あまりにもややこしすぎて骨だ。

向こうは俺と数人だが、こちらは百人以上覚える必要がある。

切実にゲームみたいな『情報ウインドウ』がほしい。

奥さんが複数いるのは、正直勘弁して欲しい。


ややこしすぎるわっ。


「はあ、ようやく一段落か?」祐子の入れてくれたお茶を飲んで一息ついた


 俺が以前から進めていた試験的な実験も、多少は成果が期待出来るようだ。

飢饉対策とか備蓄関係については、『赤尾・雨森のじいさまたち』が、地道にコツコツと出来る範囲で順次おこなってくれているらしい。



~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~


― 弱小 ―


 俺が考えるに、浅井家はまだ戦国大名になっていない。

六角家に従属しているという事もあるが……、

江北での浅井家の立場は、あくまでも国人領主連合の盟主でしかない。

つまり京極家の被官の時代とほとんど立場が変わらない。国人領主から脱却出来ていないのだ。


 ましてや国人勢力としても、さほど飛び抜けているわけでもなく、多少『浅井の名前』が通っているにすぎない。

唯一、『天下の堅城小谷城』が、浅井家の盟主としての地位と存続を保証している。


 今はまだ、国人衆の利権調整の代表格でしか無い。国人衆はそれぞれの思惑があり、二股膏薬だ。

 『烏合の衆』とは、よくいったもので、勝っている時は良いが、負ければすぐに離散し粘りがない。

浅井が弱いと云うよりも、個々の纏まりが弱く、大きい勢力相手だと勝つまで粘り切れずに負けてしまうのだ。

どんな戦いでも被害を受けずに一方的に勝つことは、あり得ない。そんなのは、まれであるし参考にならない。

 しかも、相手の方は、近江の守護を勤める名門の六角勢。そして、越前の名家、朝倉家である。

いずれも半端なく勢力がでかいのだ、動員力2万強は伊達ではない、勝機を得るまで粘れねば絶対に勝てない。


と言うか、それでも相手が攻撃を諦めて帰ってくれるのが「戦略の大前提」だ。



 江北の浅井の立ち位置など、邪魔になるか成らんのかの違いでしかない。

浅井領は、通り道。浅井家は路傍の石ころにすぎない。心せねば。

たとえ浅井と京極とが激闘していても、必要ならば、ごり押しで蹴散らしながら中山道を通る奴らである。

まともに相手をしようというのが無理なのだ。


ホント、頭が痛いよ。


ようやく、自由という翼を手に入れた、新九郎。

いろんな想いが()ぎります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ