浅井 新九郎、参る!!
さあ、物語は確実に前に進んでいます。
過去を振り返るな!感じろ!
弘治元年 大みそか
濃密で有意義な1年だった、にぎわいのうちに年が変わる。
「祐ねぇちゃん。今年は、本当にいろいろとあったね。何か凄く内容の濃かった1年だったよ。出会えてよかっ……ぅっ」
宿直の次郎にしみじみと語る、俺であった……。
弘治2年(1556年)
正月
新春の爽やかな朝が訪れた。
「う~ん」
スッキリ、さっぱりした極上の目覚めだ。なんだか身体まで軽く感じる。
新年を祝い皆でお雑煮を食べよう。
江南の初春は、穏やかにはじまった。
平井様のご家族と、「沙沙貴神社」に初詣のお参りに行った。
神気に包まれた厳かな境内の参道を縁と歩いて行く。
立派なお社だ。風情がある。(正月気分MAXだ。)
「今年は、いい年でありますように」お参りした。
本殿に案内され(流石は重臣、平井家だ)
玉串を奉納し、縁と一緒に、ご祈祷をしてもらった。
俺は、数えの12歳になった。
すでに親元を離れ屋敷を獲ているし、家臣もいる。元服にはまだ早いが、もう子供ではいられない。
大人としての自覚を持つ、その決意として。
名前を『浅井 新九郞』と名乗ることにした。
それに伴い屋敷では、ささやかながらお祝いをした。
家臣一同に祝福されて、少しばかり照れくさかったが、気持ちも新たにして頑張ろう。
「私は浅井のために、がんばるぞ~」
爺や、直経が、感激のあまり泣いている、俺は直虎と視線を交わし苦笑した。
他のみんなも、微笑んでいる。
さあ、これから、この屋敷の主として頑張っていこう。
そんな新しい一歩を踏み出したさなか。
松が明ける頃に、『それは小谷の向こう側、からやって来た。』
友松から来客が告げられた。
「若の門出のお祝いに、『昌安見久尼 』様がお見えになられました。」
「え?『昌安見久尼 』?誰それ?」
「新九朗様の姉君であらせられます」
「姉君?」
傍で話を聞いた、遠藤直経の顔がこわばった。
(珍しい、直経が動揺している?)
お姉ちゃんがやって来た。
阿久姫の登場である。
俺が、母以外で初めて会う、肉親である。
(そういや、俺、初めて兄弟とかと会うんだな、地味にスゴイ。)
阿久お姉ちゃんは嵐のようにやって来て、俺と対面し、風のごとく去って行った。
(せわしない人だ!)
~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~
4月、
「長良川の戦いにて斎藤義龍軍が斎藤道三軍に勝利」
「斎藤道三戦死」
というニュースが飛び込んできた。
「美濃の蝮」のあっけない最後に、噂を聞いた人々は、「下克上」のすさまじさと「無情」を感じていた。
「美濃の情勢が激変する」
すかさず直経に美濃の現状を探るように指示した。
俺も知らなかったが、斉藤義龍の奥さんは近江の局(亮政の娘にして久政の養女)である、
俺の叔母さんにして義理の姉である。
義龍は義理の兄に当たる訳だ。竜興が義理の従弟となるのだからびっくりした。
いくさ下手の親父としては、北近江を狙うかもしれない、危ない蝮が死んで一安心といった所か?
今のところ浅井家の周りに積極的な敵は存在しないわけだ。(ほんとうか?)
遠藤とか磯野とか、うちの血の気の多い連中(武将)にはつまらん展開だろう。
まあ平和なのは良いことだ。
あとがき
沙沙貴神社は、佐々木氏(六角家)の氏神です。
やしゃ君は、気付かずに縁たちと気楽にお参りしていました。
(まあ、周りの者がそれを見れば、完全に六角家に帰属したと見えるでしょうね。)
阿久姫が何をしたかは、また別のお話で……。




