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長政はつらいよっ!弱小浅井はハードすぎ!!  作者: 山田ひさまさ
 ~ 『 涙まじりの雌伏編 』 ~
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俺をヘコませる驚愕の事実

独白が続きますが、ご容赦下さい。


 俺、猿夜叉丸(後の浅井長政)は、天文14年(1545)年の生まれ。


 父、久政の時代、江南にある六角氏に押されに押され、人質に取られていたのは知っていたが、

まさか観音寺城で生まれたとは知らなかった。

ホント、笑い話だね。

祖父である浅井亮政は、

『京極家の被官から浅井家を一代で戦国大名にまで押し上げた英傑であった』

というのが、定説だが、爺に聞いたところによると。

「実に弱かった」

「近江守護の六角がやたら邪魔してきて、しかも、強すぎだった」

「殿(亮政)は小谷に籠もるばかりで、ほとんど勝てなかった」 


……という事らしい。意外な真実が明らかになった。

でも、その人柄ゆえみんなが付いてきた『劉邦』みたいな人だ。


(もしかして、無理矢理リーダーをやらされていたのでは?)


 俺が生まれる数年前に52歳の若さで没してしまったのが悔やまれる。

 亮政公の死後は、家督争いが起こった。


 父、久政は実の息子なのに、亮政肝いりの養子に負けそうだったらしい。

擦った揉んだの末、久政ちちが継いだが 武将としての器量に乏しく、次第に浅井家の勢力は急速に衰えていった。

数年と持たずに、浅井氏は六角氏に臣従する形となり、かろうじて家を保っていた。


 まあ亮政公も「息子じゃ無理だ」と思ったから養子に期待したのだろう、

ある意味読み通りだったわけだ。


 臣従の際、六角氏は浅井久政の妻、小野殿(井ノ口殿とも呼ばれる。俺の母)を人質に差し出せと無茶なことを要求してきたのだが、それをのんだらしい。

久政~w、大名として、人として弱すぎるぞ。



 「六角に降った久政は腰ぬけだ」、「まさに暗君だよ」、「やっぱダメじゃん!!」と家臣の影ならぬ声に責められた。

(影の声、声ならぬ声では無いんだ。)

つまり、家臣みんな本音ダダ漏れだったのだ。

江北の人は、みな正直者なのです。



 さらに話が続く、人質となった小野殿がすでに懐妊しており、観音寺城のとある屋敷で十月とつきを待たず出産した。

後、ひと月生まれるのが遅ければ、ヘタしたら不義密通を疑われるタイミングだった。

心当たりありありで頭を抱えた父に、うちの家臣たちは、「最後のおつとめ~(笑)」「久政やるうぅ~、しびれるあこがれる~」「やり逃げよくない」とさんざんの言われようだったらしい。


 六角家家臣達には、「人質に出る正室を未練たらしく抱いたあげくに孕ませた、おお馬鹿者よ」と笑いものだ。

「それほどまでに小野殿が恋しいのか?」と

生まれたばかりの俺が人質として観音寺城に留め置かれ、母上はすぐさま小谷城に返されたいうことだ。

(道理で人質であるはずの母がいない訳だ。)


どう見ても善意からでは無く完全な嫌がらせである。

舐められているなあ親父。

まあ穿って見れば、浅井の嫡子を父母から引き離して六角に取り込もうという腹積もりなのだろう。


 浅井との交渉役だった六角家の重臣平井定武様が、「ちょうど同じ頃に子供がうまれる」という事でとりあえず平井家に引き取られた。奥方が良い人で、とても可愛がってくれた。


「交渉を有利にすすめる為にああは言ったが、まさか本当に奥方を差し出すとは……しかも、子作り…ふぅ。」


平井殿は、まさか父が素直に人質を出すとは考えもしなかったらしく、俺にすまんことしたと悔やんでいるらしい。

基本、根が真面目でいい人なのだ。

観音寺城の本丸のすぐ傍に平井曲輪がある事からも判るようにVIPです。

平井家は六角氏の六宿老に数えられる重臣で、たぶん織田家の丹羽長秀ぐらいにあたる大物だと思う。


 俺は六角家の人間なんて、蒲生、三雲ぐらいしか知らん!

当主ですら名前がうろ覚えですぐに出てこなかった。

蒲生以外、やつら上手く生き残れるのかすら知らない。

いや、蒲生氏郷は途中で死んだのか?



 まあ、生まれた時から六角氏の監視下であるのは災難だが、小さいうちは、平井様の娘と一緒に育てられたので、俺は半分ぐらい平井の若君状態だった。


生まれたのが男の子ということで、「傅役が必要である」となり、小谷より爺や夫妻が観音寺城にやって来た。



 それにしても自我が目覚めたのが四歳ぐらいで良かった。

赤ん坊の時から自我が完全に目覚めていたら人質生活のプレッシャーに発狂していたかもしれん。

生まれながらにして人質として暮らす俺、猿夜叉丸の人生はハードモードである。



さらなる驚愕の事実



 話は変わるけれど

 俺の境遇は、家康(狸親父)に似ていると思う。

一代で国を切り取る優秀な祖父、馬鹿な父親(擬態ならスゴイが爺によると天然らしい)が、家を傾ける。

そして、まさかの展開(あり得ない逸話)での人質生活。

 六角氏の観音寺城下での人質生活は、まんま竹千代(家康)状態である。

というか、竹千代ですら乳幼児期は両親が居たはずだ。

 六角氏の手によって育てられるということに一抹の不安があったが、 それでも「命の保証はされる」し、

上手くいけば六角内部に入り込み、切り崩せるチャンスだと前向きに考えていた。


シン君も言っていたではないか……。

「人生は重い荷物を、宅配に任せるのが、吉」

「爪を噛んではいけません」

「もつたいないお化けが怖くて嫌いな私です」


 逆境こそが、人を強くするのだ。

でもなぁ~、久政ちちが生きている+母親が帰された……、という事で、= (スペア)がいる(それも複数!!)らしい。


 さっそく子作り?え、なにやっているのうちの両親!!

え?もしかすると、弟が長政なのかも知れない?

竹千代は、父が死んだから松平(清康系)の唯一の跡取りだったが、俺にはスペア(弟)がいる。


というわけで、一応長男ではあるが竹千代よりハードである。


俺はため息を漏らした。


他の跡取りがいるんじゃ、見捨てられる可能性があると思います。


「猿夜叉丸』は、『浅井長政』ですらないかもしれません。

ベリーハードモードです。



いやあ、長政って苦労してます。

おそらく苛められて相当人格が歪んだような……。

そんな長政見たくないです。

中身が大人なので、何とか良い方へとがんばります。

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