さあ、ささやかなチートを始めよう。
今回は真面目です。
少しずつ環境を整えていきます。
俺も転生者だ、『内政の切り札は考えてある』(キリッ)
ハッキリ言うと、人質の俺が出来ることはあまりない。
完全引きこもり状態だからだ。
屋敷には、依然、監視の目がある上に国元と離されているのだ。
しかも、元服をしていないので、何も権限がない。
ははは、少しは環境が良くなったが、全く笑えるぜ。
爺達に指示をおこない、「まるっと丸投げ」するしかない。
情報を伝えるだけなので、楽と言えば楽なのだが。これがくせ者である。
相手が知らないことを、「現物見本」無しに「言葉」だけで説明せねばならない。
弥太朗と話していて、気付いたのだが、横文字以外にも明治期に作られた造語もダメだ。
造語の方は、わりと感覚的にイメージが伝わるので使えそうだが、先が思いやられる。
概念の共有すら不十分なのに、俺が人質になっている関係で、
『長距離伝言ゲーム』みたいなる。
これでは、成果どころか現状の確認すら難しい。
問題はさらにある。それは、「忍者」の存在だ。
チートの内容が、他の大名家にバレ、真似をされれば……、
生産力の関係上かなりヤバイ事になることが考えられる。
情報の秘匿が大切。ここ大事なのである。
爺に確認したところによると、六角家は甲賀・伊賀両方の主君であるという超チートなお家である。
『忍者の本家本元』の、『元締め』のお膝元。なにそれ。
情報戦に関しては、ぶっちゃけ、トンデモ無くハードルが高い。
現に俺は常に誰かに見張られている。
敵意や害意は無さそうなのは、ありがたいのだがな。
浅井家は地理的には比較的、甲賀・伊賀に近いというのに、
「忍者を召し抱えるどころか、依頼すら出来ない」というあり得ない立場である。
無理ゲーなのである。
現状、遠藤君のお家が謀略用に、はぐれ忍者を数名使っているだけらしい。
「う~む」
まだいるだけマシか、大切な情報部員だ大事にしよう。
内政だけでも容易ではない、浅井はホントつらいよ。
何度も言うが、今俺の置かれている状況では打つ手は限られている。
小さな事から、始めるしかない。
とりあえずは『お金』である。
武士が、お金のことを卑しく思うようになったのは、江戸時代からだそうだ。
まあ、くれると言っているのに「いらん」という奴もなかなか魅力的だが。
いくさの支度をするには、米か銭が必要だと思う。
先ず一番簡単で確実だと思う椎茸栽培からはじめようと思って準備に入っている。
(転生者?の、先輩諸氏に最大の感謝をしつつ真似をさせていただこう。ありがとうございます。)
極秘に栽培する必要があるので……。
爺の故郷、伊香郡の雨森の領地の山で、予備実験だけを進めている。
椎茸は近代に栽培法が確立されるまでは、あの「天下の松茸さま」以上の超高級品だったらしい。
しかも、寺社で重用されているのだから、おいしい。
あの、阿漕な糞坊主連中が金に糸目をつけず買うらしい。
信者から巻き上げた浄財だというのに愚かなことだよな。
さらに、お隣の中国からわざわざ「売ってちょんまげ」と依頼があるくらい、人気の品だというのだから(伝聞)。
これを外すわけには行かない。
他家にバレないよう慎重に栽培実験を進めている所だ。
爺に話をした時は半信半疑だった。
「まあ大した手間でもないので、とりあえずやれ」と、投げやりな発破をかけた。
とはいえ、観音寺城の屋敷の小屋で椎の木の原木に穴を空けて、
爺が、仕入れてきた椎茸の種菌を埋め観察をしたのは俺だ。
多少の苦労はあったが、なんとか家庭園芸レベルで済んだ。
その後は爺に任せてある。
本来ならば親父に献策すれば良いのだろうが、親父(久政)ってほとんど会ったことないしあまり信用が出来ない。
儲けたお金を俺に寄越さないで、雄琴で夜ごと豪遊するぐらいなら、まだ可愛い方だと思っている。
俺がせっかく苦労して、栽培法を忍者に隠しても、事の重要性を気づかずホイホイ自慢げに人に教えてしまいそうだ。
親父では、うっかりブツ(干し椎茸)を観音寺や石寺、井ノ口あたりに売りかねない。
六角や斉藤にバレるとヤバイのだ。良いモノがあれば、小谷が狙われる。
たぶんこれが『試金石』となるだろう、これが上手くいかないようならば、内政チートは一時棚上げだ。
しばらくは成果報告を待つこととしょう。
後書き
オリジナルのチートも考えてありますが、まだまだ「やしゃ君」の環境が整いません。
皆様、
気を長くして、お待ち下さい。