~意外?ある意味お約束な真実~
物語が、斜め上へと展開します。
予定通りです。
先々月のケンカ騒動のあと、
平井様との交渉の末、俺は観音寺城下に屋敷を構えることとなった。
別に、平井様を避ける訳ではないのだが、
観音寺城本丸そばの平井曲輪では、爺達と、おちおち重要な話すらできない。
実際、忍びの者がうようよしているのだ。
襲われる心配はないのだが、プライバシーはほぼゼロと言っても過言ではない。
まあ俺が、子供だから諜報の任務に就いている訳ではなく、護衛とかそこらだろうが、他人に聞かれて困る話ができないのだ。
だから、何としても城下に移りたかった。
俺が城下に遷ると聞いて、縁が泣きそうだったが、「毎日遊びにおいでよ」と
言ったとたん上機嫌になってくれた。ふう。
いろいろと引っ越しの準備があるため、引っ越しにはひと月ほど時間が掛かった。
まあ、忙しいのは家人達で、俺は次郎や弥太朗と稽古三昧だった。
おかげで少しぐらいは腕が上がったかな?
引っ越し当日、次郎が見送ってくれた。彼もまた旅に出るのだ。
別れはつらいが、出会いがあるからこそ別れがあるのだ。
良き出会いに感謝をしよう。
うしろ髪をひかれながらも笑顔で別れた。
~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~
― 城下のお屋敷 ―
子供当主(俺)のお屋敷にしては、まずまずの立派な建前だ。
門構えも重厚で、塀もしっかりとしている。
庭もきれいに調えられており、おまけに茶室まであった。
誰の持ち物だったのだろうか?
新たな拠点となる、俺の城。思わず顔がにやけてしまう。
もうすぐ、新しい仲間が来てくれる手筈だ。
やっとここまで来たよ、嬉しい!こんなに嬉しいことがあって良い物なのか?
待ち遠しいな。
まだ俺の家人しかおらず、少しモノ寂しい。
あくる朝……。
”ちゅんちゅんちゅん”
ベタなすずめのさえずりを聞きながら、微睡みから抜け出した。
目覚めると、そこは……。
「知らない天井だ」
新しく拝領した、城下の屋敷は広くて開放感がある。
やはり自分の家が一番だ、マイホームパパの気持ちがわかる。
(現実逃避中……)
……、ナニこれ?
目が覚めると、抱き枕にされていた。
「ん?」
だれ?何でこうなった?
「おはよう」
「おはようっていうか誰?」
「私は、わたし」
聞き覚えのある声になった。まさか…。
髪を下ろしているので、気付かなかったが……。
おいおい、『次郎』か?この。
おとこ?おんな?どっちだよ?
この時代は衆道が当たり前にあるので、女っぽい男は意外と需要があるらしく、普通にいるのだ。
しかも、ホモ、ロリ、ショタ何でもござれな、平成の御代真っ青なカオスなのである。
危険だ。男はイヤだ。頼む!
「一応、おんな『祐子』よ、わたしが付いていてあ・げ・る」
そう宣言する、『次郎』あらため『祐子』
セ~フ
おんなの人でした~。
ふう、焦った。男色だけは勘弁つかあさい。
「裸か、おんなの格好の時は、『祐子お姉ちゃん』と呼びなさい」と宣言された。
ずいぶん奔放な人だ。
(ていうか、はだかって何だよ、期待しちゃうぞ。)
「次郎、あのさ、やっ…」
「祐子お姉ちゃんよ!」
ふうっ。
「祐子お姉ちゃん。気持ちは嬉しいんだけれど、旅の途中でしょ?先日、わざわざお見送りしてくれたよね?」
(おいおい、俺に抱きついてきたよ~。)
「いいの、どうせ京の都見物でもするぐらいしか考えてなかったし、現在出奔中よ!」
「余計にタチが悪いよ、旅行じゃ無いの?」
コクコクと、かわゆく肯く次郎あらため祐子お姉ちゃん。
「そう、旅行でも家出でもなくて出奔よ。私にも武士としての誇りがあるわ~、跡取りはともかくとして、あんな薄情な奴の側室なんてイヤだもん。」
「へ~凄い本当に|当主候補(跡取り)だったの?」
「女だてらにと思ってる?」
「うん」
「正直でよろしい。
わたし、お父様に男として育てられたのよね~。」
「だからあんなに強かったんだね、僕ももう少し修行しないとダメだね。」
「男の子だもんね~」
「まあ、人質だしあんまり無茶もできなかったんだよ。」
「いいわ、私が鍛えてあげる。というか、爺やさんに護衛と指導を頼まれたんだ。」
「ホント、ありがとう。」
そう言うわけで、祐子お姉ちゃんが、家臣として屋敷に滞在することとなった。
しかし、なぜ祐子お姉ちゃんが一緒に寝ていたんだ。はてな?
祐子お姉ちゃん曰く、護衛『次郎』(♂)として雇われた。(平井家、爺公認)だそうだ。
おいおい性別くらい確認しろ。
あの、俺もう10歳なんだけれど、と苦情を言うと……、
判ってる判ってる、祐子お姉ちゃんに任せなさい。
……お任せしました。
ふふふ、まさかの展開でした。
え、だいたい予想が付いた?
まあ前々回の後書きで、猿夜叉丸が一皮むけると言いましたもんね。
ふふふ。