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長政はつらいよっ!弱小浅井はハードすぎ!!  作者: 山田ひさまさ
 ~ 『 涙まじりの雌伏編 』 ~
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猿夜叉丸10歳、次郎との出会い、そして……

猿夜叉丸は、次郎と出会います。運命の出会いとなるのでしょうか?

歯車が、また廻ります。

内政チート開始まであと少し。


 どんなに戦乱が続く世の中でも、時のながれだけは変わらない。

春、夏、秋、冬が、きちんと巡ってくるものだ。何か、感心する。


 京極高延は六角との戦に破れ消息不明になった。

主を失い、急速に京極氏が衰退してゆく。

 高延と争っていた京極高吉が義輝側にいるので油断は禁物、なのだが、残った京極家臣が殺すつもりでいた高吉を受け入れるか、と言えば微妙である。

むりだろう?


浅井にとっては、とってもラッキーだ。(裏工作の匂いもするが……。)

高吉が何かする前に取り込んで貰いたい。




川中島の戦いの噂を聞いた。


天文23年(1554年)


春、武田・今川・北条の三国同盟が成立したらしい。



天文24年(1555年)


春、織田信長が清洲を攻略した。「やったね」

秋、毛利軍が厳島にて陶軍に大勝利。「ああ、この時期なんだ?もっと昔かと思った」


 いやあ、俺わくわくしてきたよ。

観音寺城を抜け出して、清洲城へ行きたい。


 でも俺はまだ10歳だし、城と城下以外どこにも出たことがない。忘れちゃいない俺は人質である。

俺が長政じゃなくって、浅井家を出奔するにしても、あと5年は待たないといけない。やはり退屈である。

今は、ひたすら力を蓄える時期なのは判っている。



 南近江の大名、名門六角家ではあるが、けっして一枚岩では無い。

近江国は豊かであるが故に、皆が己の才覚次第でそこそこの領地でもそれなりの力を持つ事が出来る。

早くから開けた土地柄だけに、他の地域よりも小さめの荘園、寺社領、土豪が個々にひしめいている。


 そんな環境の為に、国人領主の力がやたら強い地域でもある。見た目より存外タチが悪いのだ。

近江の国人領主は、相手を立てて折れるところは折れて温厚そうだが、自分の能力に強烈な自信があり、目端が利くので世渡りも上手い。生き抜いてきただけの事はあるのだ。

 でも意外と、いざという時は『ぎっと』(頑固で融通が利かないこと)なのだ

そこを上手く突いて、何とか切り崩しを謀りたいものだ。


 転生した以上、憧れの内政チートをしたいが、人質の身では動きにくい。

俺もいくつかのプランを考えてはあるんだが、使える家臣が爺だけでは正直心許ない。

俺の手下は、弥太郎だけだ。気のイイ奴だがまだまだ子供、将来に期待!それだけだ。

有能な配下が欲しい。



「六角家はそれなりに有力な家柄であるだけに、なにげに家臣団も有能なんだよな~。」

生き馬の目を抜く京に近いということもあるのだろう、守護も、国人領主も無能では生き残れないわけだから。

蒲生とか甲賀忍者とか伊賀者とか勢多の山岡、堅田衆の猪飼とかが、みんな配下だから羨ましい限りだ。


そうだ猿だ、サルがほしい。

彼なら有能だし上手く見つけたい。



~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~



~10歳のとある日~


 浅井家の跡取りを必要以上に苛めるようなバカは居ない、そうおもっていた。

いままでは、精々が俺に聞こえる程度の多少の陰口でとどまっていた。


 ただ、バカがいた。六角の若君、「四郎」は、偶然にも俺と同い年、押しも押されぬバカ君だ。

そんな訳で本来敵対関係(格下のライバル)の跡取りが同い年と言うことは、周囲から必要以上に比べられるわけで……

しょっちゅうお利口さんな俺と比べられることで、四郎が俺に対して腹を立ててしまい、最近険悪な雰囲気なのだ。(ウザイ)

それを敏感に感じとる下っ端が、近頃いろいろと五月蠅くなってきていた。


”はっはっは”、息を切らせながら走る。


「油断してしまった」

 ともかく足軽したっぱぐらいになると、仇敵浅井に対しては敵愾心しか無いらしい。

この間の京極との戦いですら、区別がつかずに「浅井が悪い」と思っているんだろうな。

「ゲス」は上の者の気持ちを敏感に感じるんだろうなぁ、”チクショウ”

悪態をつきながらも、脚を休めずに逃げ回った。



 俺が供を連れず、独りでいつもの通り市場を冷やかしていると、いきなり難癖をつけてきやがった。

迂闊だった。


 仕方が無いので穏便に何とかやり過ごそうとしたが、向こうははなからやる気だ。衆寡敵せず取り囲まれそうになってしまった。

慌てて手に持っていた甘茶を、下っ端そうなヤツの顔にぶっかけ、強引に囲みを突破し必死に逃げた。


「退いた退いた」人混みをかき分け、細い裏道をすり抜けて追っ手を引き離したが、まだ何名かが追いついてくる。

しつこいやつらだ。

 子供の敏捷さで間一髪逃げおおせたと思ったら、待ち伏せしていた奴に捕まりいきなり殴られた。

(ヤバイ、捕まったらボコボコにやられる。)焦りながらも俺は倒れてしまった。


 戦国時代の暴力は、『人を殺すことが基本仕様』だから、相手の手加減なんかまったく期待出来ない。

転んだところに、思いっきり蹴りを入れられる。


「痛い!!」

必死に身体をかばうが、かなりヤバイ。殺される。


 周囲の大人は子供がリンチ状態で嬲られていても、とばっちりを怖れて誰も助けてくれない。

「理不尽だ~!!!」

絶望に身を沈めてしまいそうだ。終わらない無間地獄。



そんな時、ようやく助けが入った。


どうやら雑魚共(四郎の小姓連中)が逃げていったようだ。


遅いぞ~。

心の中で毒づく事なんてしない、まさに地獄で仏である。ありがたい。


小柄ではあるものの、鮮やかな身のこなしの若い侍が、悪ガキ共(腰巾着)を追い払ってくれた。かなりの達人と見える。


「助かりました、ありがとうございます」


「礼は要らない」と立ち去ろうとする侍を引き留めた。

(本当に感謝いっぱいで、とてもお礼無しに済ますなんて出来なかっただよ。)

いかん、思わず心の声が百姓言葉になりそうだ、必死でしがみついた。


ビクッと身を固めるその人は笑顔で怒っていた。にじみ出るオーラが怖い。

「何で私に触れるのかな?斬られたい?」


ごめんなさい。今だに現代人のクセが抜けない俺は肝を冷やした。

刀こわい。思わず土下座しそうになった。


ニタニタと笑いながら、俺を茶店に引きずってく行く、店の娘にたらいと水を所望し、やさしく介抱してくれた。


「助けて頂き、誠にありがとうございました」

俺は体中泥だらけ、青あざだらけであるが、まあ助かったと言うべきであろう。

お礼の言葉を述べて、どうかしばらく宿で逗留して頂くように頼んだ。


「別に宿に逗留するのはいいけど何で?」


「申し訳ございません。お礼をしたいのですが、オレ、いや私は訳あって人質の身でありますので、迂闊に屋敷に招くわけに行きませんので…帰り次第、家の者を折り返し使わします。」


「へ~良いトコのお坊ちゃんなんだ。」


汚れてしまった服を値踏みをするように見られる。うううっ。

「申し遅れました、わ、私、猿夜叉丸と申します。」


「ふ~ん、じゃあ!『やしゃ君』だね。私は次郎だ。じゃあそう言うことで行こうか。」

そのまま俺を立たせて、連れ出そうとする。


「え!」


「心配だから付いていってあげるよ。」


「でも」


「でもじゃ無い。又襲われたらどうするの?」


そう言われお城へと歩いて行った。

トボトボと歩く、まるで俺が悪さをしたみたいだ。周りのものが好奇の目で見てくる。

(居心地悪っ。)


「へぇ~トンデモ無くでかいお城だね、観音寺城?君、お城に住むなんて凄いじゃ無いか」


「いや、人質だから」


「そういやそうか、逃げるの大変そうだ。」


「逃げるわけには行かないから、家臣や領民の安全がかかっているし」


「ふ~ん、まだ小さいのに大変だね」


「いや、生まれた時からだし」


「え~っ」

(イヤ流石にそれは無いんじゃ無い、この子可哀想すぎるわ…放っておけないな~。

自分の身の上が一番不幸だって思って出奔してきてしまったけど、ぜんぜん不幸だなんて思えなくなったわ。)


「ですよね~」



 騒ぎを聞きつけた家の者が駆けつけてくれた。

「若、猿夜叉丸様~ご無事ですか。」


「大事ない、こちらの方に助けて頂いた。」


 とりあえずは無用なトラブルを避ける為、「この方に助けていただいたから」と、一応、爺の許可をとった。

自室に帰るとようやく安堵した。(う~怖かった、死ぬかと思った。)

治療を受け、崩れ落ちるように倒れ伏してしまった。


 次郎の世話を乳母に任せて、今後の方針を考えながら、俺は床についた。

次郎とも少しだけ話をしたが、何か事情があるらしいので、しばらくうちに滞在してもらう。

他国の話を「生」で聞けるのが面白い。



殴られて、いたいよ。




まさかの急展開?

油断は禁物です。

やしゃ君、現実の厳しさを身をもって知りました。

ようやっと、危機感を持ちます。

チートが出るのは、次の次ぐらいかな?

お待ち下さい。

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