08
「かなたちゃんさあー、女の子だったんだねえー。わたし男の子かと思ってたあー」
朝のホームルームでの先生の宣告にしたがって、その日の放課後、私は転校生のかなたに学校を案内していた。
「かなたちゃんさあー、前の学校で部活なにやってたのおー?細身なのになんかすごい筋肉質だよねえー。そおゆうの、女の子としてちょっとどおなのかなあー」
さっき私だけ呼び出されて、自分には悪霊がとり憑いている、ってかなたに説明された。最初は正直全然信じられなかったけど、でも、『あいつ』にはもう説明してある、『あいつ』は信じてくれた、って言われて、なんか負けたくないとか思って、とりあえず私も信じることにした。
そう考えるといろいろと納得出来ることもあるし。昨日喫茶店でかなたが化け物みたいになっちゃったこととか、時々かなたが自分のことを男みたいに扱ってることとかもそう。
「かなたちゃんさあー、どこのシャンプー使ってるのー?髪ごわごわだしー、なんか動物園みたいな匂いするよおー?」
かなたのもう一人の人格、荊って名前だと聞かされた、になってるときは外見を変えることが出来るらしい。その荊になってるときの男っぽい外見のかなたに私は恋しちゃったんだろう、って言われた。荊は人間の女の子に興味なんてない、とも。
そんなこと言われて、折角忘れかけてたのに昨日フラれたことを思い出して、私は少し悲しくなった。
「かなたちゃんさあー、ミオちゃんと知り合いなのおー?なんかすごい馴れ馴れしいよねえ?そうゆうのあんまり良くないとおもうなあー」
「ああ、すまない。あたしは少し一般常識に疎くてね。普通のクラスメイトの距離感というものがわからないんだ」
自分は遅刻ばれてなかったはずのオンちゃんは、何故か立候補して自分もかなたの世話係をかってでた。そのくせ今は機嫌悪そうに頬を膨らませてかなたに絡んでる。転校生にまで自分の天然キャラアピールに余念がないとは、さすがオンちゃん。
「でも、あたしたちが知り合いと言うのは事実だよ。実はあたし、昨日彼女に告白したんだ」
「えっ…」
私とオンちゃんがユニゾンで驚く。いや、かなたが私にって、それ逆じゃなくって…?
「というか、転校してきたのもそれが理由かもしれないな。澪湖がいる学校を調べて、追いかけて来てしまったよ。ふふ、昨日フラれているというのに、少ししつこいかな」
「かなたさん!?はは、な、なーに言って…」
「ふ、ふ、ふ、不潔っ!お、女の子どおしなんて!ダメなんだけど!そ、そんなの普通じゃないんだけどっ!」
何でもないことのように笑うかなた。当然かなたの冗談だと思ったから、私は愛想笑いしといたけど、オンちゃんは何故か顔真っ赤にしてマジギレしてた。相変わらず意味不明だぜ。
「えっ?ああ、そうか、そうだったな…」
誰かに声をかけられたみたいに、ぼそぼそと独り言を言うかなた。
「すまない間違えた。あたしが告白したのはもう一人の人格、よお子さんの方だったよ」
…なにそれ。