11 真相1
「あ、そっかあ……」
急に音遠は何かに気付いたかのように立ち上がった。
すっかり帰り支度を済ませて帰ろうとしていたかなたとよお子は、その様子に驚く。
「……え……?」「ど、どうした?」
音遠はそれには答えずに、ずんずんと教室の隅にあるゴミ箱の方へと歩いていく。他の二人も、よくわからないがそれについていく。
音遠は歩きながら、独り言のように話し始めた。
「ずっと不思議だったのお……『ミオちゃんが眠っている間にもらったチョコが、どうして口の中に残ってた』んだろお…って」
かなたとよお子は顔を見合わせる。音遠は続ける。
「だってそんな口に入るくらいの一口サイズのチョコだったらあ、ミオちゃんが食べ残すはずないんだもおん……。ミオちゃんだったらあ、例え眠ってたってそんなの数秒で食べ終えちゃえるはず。だから口の中に残る余裕なんてないはずなんだよお………それ一個くらいならあ」
よお子は気付いて、バッグから先ほどの透明なビニールの袋を取り出す。その袋の大きさは、A4用紙くらいはあった。
「そのサイズの袋ってことはあ、入ってたチョコだって『一個じゃない』……十個とか、二十個くらいは余裕で入ってたはずなんだよお。だから、食べるのに時間がかかったし、一個だけ口の中に残っちゃった……」
かなたも何となく、音遠の言いたいことが分かってきたようだ。だが、納得いかないようにつぶやく。
「でも普通、そんなチョコがいっぱい入った大袋を、一人の人間にあげるか?いくら澪湖が底なしの胃袋だからって、そんなに……あっ」
ゴミ箱に迷わず手を突っ込み、がさがさとあさる音遠。やがて、くしゃくしゃになった小さな紙片を拾い上げた。
「そお。だからきっと、あのチョコはミオちゃん宛でも、よお子ちゃん宛でもなかったんだ。ってゆうか、個人宛じゃなかった。ミオちゃんの机の上に置いたのは、ミオちゃんにあげたんじゃなくって、ミオちゃんから、『みんな』に分配して欲しかったから……。眠ってるミオちゃんが『自動的』にチョコを食べちゃうってことを知らなければ、それって普通のことだよね………。でも実際はあ、食いしん坊のミオちゃんが一人で全部食べちゃったんだけどお」
音遠は楽しそうに笑う。
「それにい、例えミオちゃんが『自動的』に食べなかったとしてもお、起きたときに机の上にチョコが置いてあるだけじゃあ、多分結果は変わらなかったんじゃないかなあ……。だって袋は無地のビニールだしい、それだけじゃあ意味がわからないからあ……。だからきっと、その人は残してると思ったのお。その辺を説明するための『書置き』みたいなものをお…」
くしゃくしゃの紙片を広げる音遠。後ろから、かなたとよお子もその紙を覗き込む。それで三人は、チョコを贈った『犯人』を完全に理解した。




