01
「そういや、マヤちん。あの話聞いた?すごいよねぇー!ヤバいよねぇー!」
「えっ…と、何?あの話って、何の話?」
「二組の本前川さんっているじゃん?いるじゃん?いるじゃん?」
「あー…っと。うん、知ってる、かも。あの、見た目すごいかわいい子だよね?」
「そうそうそうそう!その本前川音遠ちゃん!男子の人気超高いあの子!この前なんか超イケメンの中学生の人にも告られたんだって!ムカツクー、ってそうじゃなくって……あの子の噂!すっごい噂聞いちゃったんだよー!」
「ミウちゃん、私思うんだけどさあ……本人のいないところであんまりそういう……」
「ななななぁーんと!……あの子、レズっ子なんだって……」
「……え?……まじ?」
「まじ」
「……だ……だから?だから、あんなにモテるのに、誰とも付き合ってないってこと?」
「つかね、もう付き合ってる子がいるみたい。いちゃらぶしちゃってるみたい」
「…まじ?だ、誰と?」
「まじ。……相手は同じ二組の、…………ナナちゃん」
「ま、まじー!?」
「まじだよおー!すっごいよねぇー!ヤッバいよねぇー!」
「う、うわー…あの二人ってそうなんだあ…なんか、すごい絵になるけど……えー……そうなんだあ……」
「美男美女、っじゃなくって美女美女!全然タイプ違うけど、どっちも超モテてるもんねー!うぷぷ、男子ども揃って失恋だよ!かわいそうー!………って。マヤちんどうした?引いてる?こういう話、気持ち悪くなっちゃう?」
「……いや、そんなことない。……てか、別にいんじゃない、かな…」
「ん?」
「そういうのって、本人の問題だし……、本人たちが好き同士なら、別に私たちがどうこう言う話じゃないし」
「えっ!?マヤちんレズっ子肯定派!?もしかしてレズっ子?ミウのこと、そういう対象として意識しちゃったりしてるの!?」
「ち、違うよ!私別にそういうのじゃなくって…」
「もー!わあーってる、わあーってる。てかね、実はミウたちもおんなじ意見なんよー。六年の女子何人かに話したんだけどさ、みんな応援するよーって言ってたもん。だってなんかいいじゃんね、こういうの!真実の愛って感じ!障害があるほど燃えるって感じ!」
「ミウちゃん……漫画の読みすぎ」
……………
「マヤぽん!マヤぽん!マヤぽん!」
「な、何?……てか、私その呼び方止めてって言った…」
「怒んないでよおー!すっごい話聞いちゃったんだからー!あの話!例のあの二人の、あの話聞いたー!?」
「……あの話……って、だから、何の話?」
「音遠ちゃんとナナちゃんの話だよー!あの熱々カップルの新情報だよー!」
「…ミウちゃんしょっちゅうその話するけどさー…私別に……」
「……あの二人、……とうとうヤったらしいよ……」
「ヤった?ヤった、って何を?………あ、3DS?もう発売されたんだっけ?」
「ちっがーうよおー!ヤったって言ったらアレしかないじゃーん!もおう!純情ぶっちゃってえー!…アーレ!二人専用プレイの、もっとエロい遊びだよおー!」
「……まじ?」
「まじ」
「う、うわー……まじかー……だ、だってまだうちら小六じゃん……」
「よねー!?ヤッバいよねー!すっごいよねー!?現代の若者の性の乱れナゲカワシイよねー!」
「ま、まあ……本人同士がいいなら……いい、のか…?」
「いいーんだよー!愛があればー!もうね、その話を聞いた日を『真実の愛が生まれた日』として、ミウたちみんなで記念日にしようって話したんだー。一年たったらパーティーもするよー!その時はマヤぽんも来るでしょー?」
「い、いや……あんまそういうの、おおっぴらにしない方がいいんじゃないの…?」
「い、い、ん、だ、よー!めでたいことはみんなでお祝いしなきゃー!」
……………
「あ、マヤマヤー!聞いてよー!ひっどいのー!ヤッバいのー!」
「……何の話?」
「音遠ちゃんがー!音遠ちゃんがー!超かわいそうなんだよー!」
「だから、何の話?」
「なあーんとなあーんと!……音遠ちゃんと……ナナちゃん……別れちゃったんだってー……」
「……まじ?」
「まーじまじまじだよー!ナナちゃんが卒業式のときに音遠ちゃんのこと、ふっちゃったんだってー!」
「しっ!…ミウ、声でかいって」
「……しかもナナちゃんさー……音遠ちゃんには内緒で……実は一組のユージ君と付き合ってたんだってー……」
「は?……だってそいつ……男じゃん」
「ねーひどくなーい!?音遠ちゃん超かわいそうじゃんねー!」
「何それ……ひっどい裏切り……それ私、許せない、かも…」
「ねー!?だからさー、今度春休み中にみんな集めて、音遠ちゃん励ましパーティーを開きたいと思いますっ!」
「……いいわ。……それ、私も出る、かも」
「…え?ま、まじ!?え、え!?マヤマヤいつもこういうの来ないのに!?すごいじゃん!何!?何の風の吹き回しー!?流石、レズっ子肯定派のマヤマヤ!」
「ば、バカっ!だから声でかいって!」
……………
「………あ、マヤちゃん……」
「ど、どした?今日のミウ、なんか…」
「何かさー、はは……もう笑うしかないって言うか……」
「…何があった?言ってみ」
「あーとさー…音遠ちゃんなんだけどさー……この前、パーティーしたじゃん……?」
「またあの子の話か……、何かあったん?」
「……何かさー、あの子あのとき言ってたよねー……はは……『ナナちゃんのことまだ好き』、『わたしはもう一生立ち直れないかも』って……言ってたよねー?」
「ああそうだよね。もう、魂の脱け殻みたいな、精も根も尽きた感じになってた。見てるこっちがキツいくらいだったし」
「そう言ってたのにさー……えー……?何でだよー……えー?」
「…何?…詳しく話して」
「……何かさー、…あの子と同じ中学に行った子から聞いたんだけどさー…。音遠ちゃんさー……もう新しい恋人出来たみたいよー?……はは」
「あ……?ナナのこと、吹っ切れたってこと……?」
「あー、いや……正確にはまだ付き合ってはいないみたいなんだけどさー……音遠ちゃんの方がもうゾッコンみたいな感じらしくってさー…その新しい子にー。中学に入ってすぐにその子に出会ってー、あ、もちろん女の子なんだけど…えーと、名前なんつったかな?『ミオチャン』?何か…もうすっごいその子にベタベタしてて、『大好き!』とか言っちゃったりして……あはは。ま、まあよかったのかなー……音遠ちゃんが元気になってさー……」
「何それ………ふっざけんなよ……」
「ま、マヤちゃん?」
「はあー!?何あいつ!女なら誰でもいいってこと!?この前の落ち込んでたの全部嘘だったってこと!?私らバカにされたの!?」
「ちょ、ちょっとマヤちゃん…」
「ああー、すっげームカツク。意味わかんねー。音遠超ビッチじゃん!まじクソ女だわー!つうか、だとしたらレズとかも嘘じゃね!?あいつ絶対男ともヤってるよ!うっわ最悪!まじ最悪!」
「ま、マヤちゃん、一旦落ち着いて。ね?」
「その同中の友達にさー、あいつのこと相手にすんなって言っときなよ。あ、あと、私の前であいつの話二度としないでもらえる?まじすっげー胸くそ悪いから」
「わ、わかったー……」




