表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの娘は二面性ガール  作者: 紙月三角
02章 かなたの事情
11/152

01

「…もう、起きたの?」

「うん、おはよう。カナちゃん」

 寝癖のひどい髪をかきながら、美河徹弥(みかわ てつや)、あたしの父さんはキッチンに顔を出した。

「今日は昼過ぎからでしょう?まだ寝てたら?」

 目にはクマをつくり、大きなあくびを何度も繰り返す父さんを、あたしは見ているのがつらかった。頬がこけてやつれている顔、ボロボロでくたびれきった全身からは悲壮感すら感じる。だから父さんに言ったそれは、気遣いというよりは、あたしのわがままだ。

 父さんはそれには答えずに、スクランブルエッグを作るあたしを見て落胆の表情を浮かべる。

「ごめん、また約束破っちゃったな。明日からはちゃんと僕が作るから…」

「そんな約束あたしは了解してない。これからも家事は全部あたしがやるから。父さんは気にしなくていいんだよ」

 あたしはキッチンに一面に並んだ美味しそうな料理、あたしが作った二人分の朝ごはんとお弁当、を父さんに見せつける。料理なんて全然できなかったあたしが一から勉強して、何度も失敗して、でも最近やっとまともに出来るようになってきた。料理だけじゃない。家事も、その他の雑用も全部。三つ掛け持ちしているアルバイトで必死に働いて、あたしを養ってくれる父さんを少しでも楽させるために必要なことはなんだってあたしはやっている。それは、あたしの父さんへの意思表示だ。

 父さんは、あたしが守る。


「結局、転校までさせてしまった。僕はカナちゃんには迷惑かけっぱなしだな。やっぱり今からでもカナちゃんはお母さんのところへ…」

「それ以上いったら怒る、っていつも言っている。あたしもう行くから。父さんはバイトの時間まで寝ててよ!」


 父さんが母さんと離婚したのは二年前。原因は、父さんの浮気だった。


 最近、父さんの前で笑顔になっていない。何か話すといつもケンカの一歩手前みたいになってしまうのだ。

「いってきます…」

 振り返ると、閉まっていくドアの隙間から父さんが無言で、あたしに手を振っているのが見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ