舞台裏の下準備
「・・・・・・・、おい情報はまだか。」
苛立ったように低く圧力のある声が響く。
「はい!!、実は先ほどからまた情報が撹乱されましてっ!・・・、申し訳ありません!!もう一度洗い流してします!!。」
使えない。
そう言うように眉をひそめ男はため息を吐いた。
桐島 忠臣
職業 刑事
父親はその遥か上の重鎮。母親は由緒正しき家の一人娘。
桐島自身も有名大学をトップで卒業。いわゆるエリート街道を地でゆくサラブレッドである。
そんな男がある捜査を任せられたのが一か月前。
あきらかにおかしすぎるという胡散臭い事件であった。
当初その事件自体に信憑性が持てなかったため、なかなか捜査にまで至らなかったという。
被害者の数は不明。わかっているだけでいえば本当に片手で数えられる程度であったため軽事件として片づけられる程度であった。
・・・・・、が、調べれば調べあげるほど不可解な点が数多く見つかってきた。
まず、第一に被害者はその犯人の顔を覚えてさえいない。
そして、人によっては被害を受けたことも忘れているという。
そう、「忘れる」。いや、そもそも「覚えていない」。「記憶にない」。
被害者に共通していたのは、あくまで表ざたにできないことがあったということだった。
実際に他の捜査をしているときにたまたま芋づる式に欠片程度の情報が出てくる程度。
あまりにいろんな事柄が不自然過ぎた。そんなこんなで、上もこれ以上の混乱を避けたかったのだろう。当初の軽事件は回りまわってエリートの元まで届いてしまったというわけである。
そもそもこの事件は被害届がまず出ていない。が、必ず裏とつながっている。
なのでこの際早く自体そのものを収束させようとしているのであった。
プルルルッ、
ふと携帯が非通知を表示した。
「・・・・・・?もしもし、」
「あんたの捜査に一つヒントをやろう。
化け物を探し出せ。暗闇に潜むメモリー・クラッシャーを。」
ツー、ツー、ツー、・・・・・・・・・・
そこでいきなり切られる電話。
「・・・・・、いたずらか?」
「桐島警部、情報をもう一度まとめてみました。」
横から伸びてきた手に握られる資料を受け取る。
犯人今だ不明。詐欺容疑の疑い。
被害者はその後不可解な言動がみられる場合もあり、心理操作をしている模様。
そして、失踪している場合も多くありなんらかの裏に関するつながりがある可能性が高い。
被害届は提出されていないが、未解決事件の多くの手掛かりになりそうであるため現在捜査中。
「メモリー・クラッシャー。・・・・・・、ね。」
グシャリ。苛立つ気持ちが拳に伝わった。