第1話 ~プロローグ~
私はこう思うのです。
人との出会いであったり、巡り会わせというものは、生まれる前から決まっているのではないかと、そんな風に考えてしまうときがあります。こんな書き方をすると、如何にも宗教的な思いや考えのように聞こえますが、今まで生きてきてそう思えて仕方がないときがいくつかありました。
私が、この世に生を受けて、今この世に生きています。私が生まれてきたこと自体、そしてこの世に生きていること自体が不思議に感じるときもあります。私が生まれるためにはその父と母が必要で、その父と母が生まれるためには、また父と母が必要となります。従って、私が生まれてくるためには、この繰り返しを人類誕生の時からなされていたことになります。また、私の父と母が同じ時代に生きて出会わなければ、私という個人-今は個体という言い方をしましょう-が出現しなかったわけです。何という確立で私という個体は出現してきたのでしょう。その確立を計算しようとする人がいるならば、気の遠くなるような作業と時間が必要になるでしょう。おそらくそのようなことをしようとする人もいないでしょうし、現実不可能なことは容易に想像がつきます。当たり前に生活をしていますが、人と出会うということは、こう考えると奇跡でしかないように思えるのです。