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一新と矜持

家具を一新したいと思った。

泰然の猛者の如く横たわるグレーのベッドは、自分はいつまでも捨てられないだろうと慢心しているように見える。

その色はこれを購入した2年前、汚れが目立たないようにと決めた僕の怠惰の象徴である。

僕の怠惰とベッドの慢心が同化して、狭いワンルームの大部分を占領しているのだ。

このベッドを含めてほとんどの家具を大衆家具屋で揃えたが、彼女との邂逅はそこで起こった。

彼女は不屈の目で、無数のサメの縫いぐるみを選別していた。

「目が、違うんです」

サメの目を覗き込みながら、僕に一瞥もくれずに言った。


僕が入店したのは午前11時だった。

家具の無い生活から早く脱却せねばと珍しく早起きをして、まだ温まらない3月を歩き、電車に身体を押し込んだものだ。

家具屋は平日の昼間にも関わらず賑わっていた。

この人たちは何をして食っているのだろうと余計なことを考え、僕はこの先何をして食っていけるだろうと余計じゃないことが頭をよぎる。

入口すぐに僕の腰ほどの高さの大きな鉄かごがあり、中に大量のサメの縫いぐるみが入っていた。

すでに彼女は縫いぐるみを手に取って、順次横に避けてを繰り返していた。

背中しか見えなかったが、なぜか目を引かれるものがあった。

通り過ぎざまに横顔を見れるかと期待したが、彼女はタイミング良くそっぽを向いてしまった。

4フロアが家具屋になっており、1階に戻った頃には2時間が経っていたが、彼女はまだそこにいた。

鉄かごの奥まで手を伸ばし、サメを掘り起こしていた。

鉄かごの反対側に積み上げられたサメ達はなだらかな傾斜を作り、絶妙なバランスを保っていた。

目利きの矜持があるようで、慧眼を光らせながら時折首をかしげる。

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