11.語らい
◆語らい◆
金曜日のスタジオD。
「なぁ、親睦も兼ねてみんなでこの後、飯でもいかない?」
練習が終わり片付けの途中に哲央が言った。
「いいじゃん、いいじゃん! 何気に俺らってスタジオでしか会ったことないし、今まで余計な話ってしてねーよな」
晃はマイクのコードを巻きながら同意した。
「俺も賛成。音楽やるうえでお互いを知るのも大切だよ。なによりユキと音楽の話したい」
瞬は同じギターのユキに熱い眼差しを送った。
「遥はこの後、時間ある?」
「大丈夫です! 私もみんなと話してみたいです!」
遥は大きく頷いた。
「じゃあ、行こうか」
ユキは、みんなに向かって頷いた。
チェーン展開している居酒屋に運よく入れた。
半個室のお座敷はみんなで話すのに良さそうだった。
「隅っこにまとめて楽器、置いておこう」
瞬が手際よく、ユキと遥、自分の分の楽器をまとめてくれた。
「ありがとうございます」
遥がぺこりと頭を下げた。
「5人だから誰か一人、お誕生日席~」
晃は壁に寄りかかれる席に早々に座りながら言った。
遥は辺りを見渡した。
(私が、お誕生日席になった方がいいかな……)
「晃、ボーカルってバンドの顔だから、お誕生日席からみんなを見渡すのがいいと思うよ」
「え! 本当に? ユキが言うならそうなのかな?」
晃はまんざらでもない顔だ。
そこへ哲央が追い打ちをかけた。
「あの席ってなんか特別な感じだし晃に似合うよ!」
「もう、みんながそんなに言うなら、俺がそこに行ってやるぜぇ!」
「晃、カッコいい!」
瞬と遥もよいしょした。
遥はもともと晃が座っていた場所になった。
瞬がみんなに聞いた。
「まずはみんなビールでいい?」
「OK―!」
晃が答える。
(あ、どうしよう……)
悩んでいる間に店員がやってきた。
「とりあえず生5つ」
「かしこまりました」
店員はそそくさと出ていった。
ビールはすぐにお通しと共に運ばれてきた。
「それじゃ、今日もお疲れ様でした。かんぱーい!」
晃が音頭を取り、みんなでジョッキを打ち鳴らす。
遥は一口、ビールを口に含んだ。
「苦い……」
「どうした? ビール苦手だったか?」
隣の席の哲央が聞いた。
「……飲めない……」
「ビール苦手なの?」
瞬が驚く。
「私、十九歳で……」
一瞬、空気が止まった。
「そっか」
哲央がそう言って、遥のジョッキを自分の方へ引き寄せた。
「俺、ビール好きだから二杯目飲んじゃう」
誰も責めなかった。
「俺がとっとと頼んだから、ごめんね。ソフトドリンク何にする?」
「えっと、コーラで」
「料理と一緒に注文するね。他に未成年いる? 」
瞬は、再び店員に注文しながら、みんなに聞いた。
「俺はもうぴちぴちの大人だぜ」
晃はニッと笑ってビールを飲んだ。
「二十一」
ユキが答える。
「ユキくん、落ち着いてるから、俺より年上だと思ってたよ」
瞬は驚いてユキの方を見た。
「みんな誤差の範囲内だよ」
料理が運ばれてきた。
瞬がいそいそとみんなにサラダを取り分ける。
(瞬さん、さっきから凄く気が利くな。……私、全然ダメだ……)
「瞬さん、ありがとうございます。お世話になりっぱなしです」
遥はサラダを受け取りながら言った。
「確かにな。ありがとう瞬!」
哲央も言った。
「お世話ってなんだ、それ!」
瞬は、遥の言い方に笑った。
「瞬って呼び捨てでいいよ」
一瞬、遥は言葉に詰まった。
「俺も呼び捨てな」
哲央も二杯目のビールを飲みながら笑顔で言った。
「はい! 呼び捨てします!」
遥は、心がほくほくしてきた。
さっき一口だけ飲んだビールが効いているのかもしれないと思った。
みんなで色々な話をした。
晃はヴィジュアル系バンドに憧れて、バンドを始めたらしい。
遥も同じなので、話が弾んだ。
ユキは幅広く色々と音楽を聴いていた。
とにかく音にするのが好きらしい。
「音って、言葉と違って、いろんな方向から解釈できるでしょ。だから、好きなんだ」
ユキは静かに言った。
みんなは、深く頷いた。
居酒屋の帰り際、
「なぁ、ユキ」
瞬が、少しだけ声を落とした
「俺も……曲、作ってみてもいい?」
「もちろん」
それだけだった。




