10.みんなの音
◆みんなの音◆
遥がベースの調整をしてもらってから、最初の金曜日。
スタジオDには、五人全員が揃った。
各々が自分の楽器の準備をしている。
「おい国東、ベース調整してきたんだろ?」
マイクスタンドの調整が終わった晃が言った。金髪から覗く耳からはいくつもピアスが並んでいる。
「うん。してもらった」
「前回、お前の音、ひどかったもんな」
「そうだよね……」
「まー、調整してもらったんなら、これからだよ」
一通りドラムを鳴らし確認を終えた哲央が遥に笑顔を向けた。
「とにかくやってみる!」
ユキと瞬も準備を終えた。
「じゃあ、やってみようか。哲央、カウント頼む」
ユキが静かに言った。
「おう! まかせとけ」
哲央がスティック同士を打ち合わせる。
カッ! カッ! カッ! カッ!
遥は目を閉じ息を吸い込むとベースを鳴らした。
哲央のドラム、ユキと瞬のギターが合わさると、音が一つの旋律になった。
優しい音楽がスタジオに広がる。
(あ、先週の重なった音と違う! どこかはわからないけど、音が整ってる)
「良い感じ」
瞬の口から言葉が漏れた。
晃がメロディーに乗せ歌う。
(わぁ、これが私たちの音、私たちの音楽なんだ!)
みんながみんなを見渡した。
口元がほころぶ。
スタジオの温度が上がった。
最後まで、遥はがむしゃらに弾いた。
晃は想いを込めて歌った。
最後は、哲央のドラムで曲が終わった。
「おおおっーー!!」
みんなが歓声を上げた。
哲央がスティックを握りしめ叫んだ。
「良い!!」
「俺の歌声やばくね!?」
晃は満足そうにつぶやいた。
「そうだね」
ユキは晃にそう声をかけてから、遥の方を向いた。
「調整したら、音が変わったね」
「はい! なんか違いました」
「みんなの音、良かったよ」
遥は、初めてユキがしっかりと笑うのを見た。
◆最初の曲◆
弾き終わって、さらに胸がドキドキしているのを感じた。
「私たちの最初の曲ですね! すごい!」
「すげーよな!」
思わず遥と晃は手を取り合ってぴょんぴょん跳ねた。
(……私、今、晃くんと跳ねてる)
「まだ始まったばっかりだけどさ、自分たちの曲ってうれしいよな」
哲央はスティックをくるりと回す。
「俺もギターだし曲も少し考えたりするから、わかるよ。ユキくん、凄いと思う」
瞬がユキを見た。
「……俺はただ音を鳴らすのが、好きなだけ。晃の歌の世界、良かったよ」
「だろー!? 俺、曲はつくれないけど、歌詞を書く才能はあると思う」
「うん! あるよ!」
遥は大きく頷いた。
晃は嬉しそうに笑った。
「もう少し、練習して仕上げよう」
ユキが言うと、みんな頷いて再び演奏を始めた。
晃が歌う。
――夢は叶うと信じて
進んでいく俺たちは……
練習が終わり片付けを始めた頃、瞬が言った。
「そういえば、この曲のタイトルって何にする?」
晃が口を開くより早くユキが言った。
「息吹」
みんなの視線がユキに集まった。
「……ぴったり」
遥は心の中で言ったつもりで、言葉にしていた。
「ありがとう」
ユキは静かにお礼を言った。




