表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/142

98 葛藤しちゃった!影狩り一族の一閃!





 

「記録にない……こんな“根源”みたいな闇、見たことがない」

 タリクが記録板を強く握りしめた。蒼い光の中、その手だけが震えている。


「根源? そうか!こいつはおそらく――魔物が生まれた最初の闇だ!」


 ミラが妙に詳しい口ぶりで言うものだから、セリアンが眉をひそめる。

 (師匠……闇の研究してたの?いや、なんかすごく詳しい……!)


 そのとき――。


 ぬるり、と黒い水が床の“影溜まり”から起き上がった。人でも獣でもない。輪郭は曖昧で、ただ“闇が意思を持って立っている”ような存在。


「原始の魔物は、黒き古の淀み……か。ふーん、そういうことか」

「師匠!思わせぶりなこと言わないで。“そういうこと”ってどういうことですか!」


 セリアンが慌てる横で、カゲミが息を呑んだ。

「……ちょ、ちょっと待てよ……なんでオレ、こいつの気配……知ってる……?」


 原始の淀みがゆっくり形を整えていく。中心にぽつりと、二つの穴のような淡い光。


 それは――“目”だった。そして、声とも音ともつかない震えが胸の奥に響く。


 ――――魔ニ、カエレ。


 空気が震え、胸の奥に直接響く。


「……しゃ、喋った……?」

 カルマが震える声でつぶやく。原始の魔物の影が、こちらを見据え――ゆっくり、カゲミへ伸びる。


「やめろー!」

 僕は反射的にカゲミをかばって前へ飛び出した。原始の魔物の影が、僕に襲いかかってきた。


 ――――水ノ、ノートリア。


「……僕のことを、知っている……?」


「みんな!離れるんや!」

 タリクが叫んだが、もう遅い。


 黒い影の触手が床から怪しく伸び、僕たち一人ひとりの影を探るように“触れて”くる。

 原始の魔物が、ざわりと揺れた。まるで何かを――“思い出した”かのように。


 ――――ツカマエタ! カゲ……ミ……。カルマ……!


 カゲミとカルマの影が震え、波打つ。

「なんで……オレの名……っ?」

「いやだ……っ! 怖いよ……!」


 タリクが記録板の古語をめくり、蒼白な顔でつぶやく。

「……まさか……闇を持つ者は、古の淀みに“繋がれる”のか……!」


「繋がれたら僕どうなっちゃうの!?」

 カルマの叫びに、ミラが静かに答えた。


「繋がってしまえば――原始に囚われるのさ。消えるか、戻れなくなるか……どちらにせよ、見過ごせないね」


 影の底から、また声が響く。


 ――――繋ガレ。水ノ子ト、影ノ子ヨ……。


 僕たちの足元の影が、じわじわと引きずられるように揺れ始めた。


「カゲミ……行こう。僕たちは、“影の起源”を越えなきゃいけないんだ」


 カゲミは震える手をぎゅっと握り返す。


「……ああ。俺の影がなんだろうが――オレは……セオトの相棒だ!」


 その宣言に呼応するように、古の淀みが動いた。闇が波打ち、神殿の奥全体を呑み込むように広がる――。


 原始の魔物との戦いが、始まった。


 空気が地鳴りのように震え、闇が濃度を増していく。黒い波が足元からじわじわと這い上がり、ひと息でも気を抜けば飲み込まれそうだった。


「拙は影狩り一族の末裔。全てを狩ることはできる!……だが淀みと繋がってしまった影も断つかもしれない。すまない……」

 ツバネは、手を出すのをためらう自分に苦しむような顔をしていた。


「ツバネ、落ちついて。僕がまず動くね。“リヴァー・プリスティン”!」

 僕に呼応した水紋のペンダントが、清流の記録を呼び起こす。澄んだ水音が一瞬だけ闇を押し返し、淡い光が床を走った。


 闇がざわり、と反応する。


「……効いてる。ミラさん、続けて!」

「もちろんだよ。じゃあ――そろそろ“本気の研究者”として働こうか」


 ミラは片目を細めて、闇に指先を向ける。涼やかな笑み……けれど、その奥にあるのは深い洞察。


「原始の魔物さん。あなた、構造が単純すぎるんだよね。“闇の根源”を名乗るわりにさ」

 ミラの体表に淡い霧が回り、影を吸い上げるような風が起きた。


「“ディスパージョン・シャドウ”!」

 渦を巻く風が闇の外殻を引き裂き、原始の魔物がどろりと崩れかける。その刹那――。


「アア……ァァ……カゲ……ミ……カルマ……」


 闇の中心の“目”がふたつ、ぎょろりと揺れた。呼ばれる名前に、二人がびくっと震える。


「――来るよッ!」

 僕が叫ぶよりも早く、影が急激に伸び、カゲミとカルマの影へ食らいつこうとした。


「やめろッ!!」

 ツバネの一閃が飛ぶ。白光をまとう刃は影を裂き、闇の腕が悲鳴のような震動を起こして霧散した。

「そう簡単に仲間を渡すものか……!影狩り一族を、なめるなよ!」

 ツバネは歯を食いしばりながら、二人の前に立ちはだかる。


「ツバネさん……」

「ツバネ……ありがと……!」

 カゲミとカルマが小さくつぶやくが、ツバネは振り返らない。


「礼はあとだ!いまは――生き残れ!」

 その声に、ふたりの影がふるふる震えながらも、わずかに光を帯びた。


 しかし原始の魔物は、構造を崩しながらも再び立ち上がる。黒い煙のようなものが床を覆い、周囲の影を次々と喰らっていく。


「あいつ、学習してる……!」

 僕が息を呑むと、ミラが小さくうなずいた。


「だろうね。根源の闇は――“喰いながら増える”。そして“名前を持つ影”に強く惹かれる」


「名前……?」 カルマが胸を押さえ、肩を震わせる。

「オレたちの名前……奪われるってことか?」 カゲミは唇を噛んだ。


「奪われるだけじゃないよ」

 ミラが闇を見据え、静かに言う。

「――同化される。“起源へ還れ”ってね」


 そ、そんなの許すもんか! 僕の気配を察知した闇がぐらり、こちらに傾いた。


「来るぞ……!」


 原始の魔物が、こちらへ“世界の始まり”のような声を響かせた。


 ――――オマエタチ、戻レ。


 ――――闇ノ、ウミ……へ……。


 戦いの第二波が、押し寄せてきた。











「……なぁセリアン。今回、ワイらの出番、あったか?」

 タリクが天井を見上げながら、半分あきれた声を漏らす。


「……ゼロですね。完全にゼロです」

 セリアンは冷静に言うが、眉のあたりがちょっとだけピクピクしている。


「ほら見ろ!ツバネはシュパッ!としちゃうし、原始の魔物はド派手やし、セオトは水バッシャーン!やろ……ワイたち、背景じゃね?」

「背景のほうが存在感ありますよ。私たち、今回は“ページの余白”レベルです」


「おいおい、余白って……ワイは、まだやれるぞ!?腕も足もついてる!!」

「腕と足があるだけで戦闘に参加できるなら、苦労しませんよタリク」


「ぐっ……!」

 タリクは言い返せず、口をぱくぱくさせる。


「でもまぁ……次こそは、私たちにも役目がありますよ……たぶん」

「“たぶん”かよ!?確定じゃないんか!?」


「作者さんの気まぐれなので」

「うおおおおーーーー!!ワイらにも見せ場をーーー!!!」


 タリクの叫びが、あとがきのページの端まで響いちゃった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ