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おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第3章

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90 使命見つけちゃった!?僕の加護をもつカルマ!?






 僕の手をぎゅっと握るカルマは、小さく息をのんだ。


「ここって……水龍さまの中なの?」

 声は震えていたけれど、逃げ出す気配はどこにもない。むしろ、何かを確かめようとするように、僕の袖を少しだけ強くつまんだ。


 澄んだ流れの中、水龍さまがゆったりと身を向けた。その巨大な影が動くだけで、水の空気が震える。


「よく入ってこれたな……」


 水龍さまの声は深い水底のように低く、それでいて不思議なほど澄んでいた。カルマはびくっと肩を揺らしたが、手だけは離さなかった。


 水龍さまの長い瞳が細められる。深く、底知れぬ湖面のような光が揺れていた。


「――セオトの加護を受けた、魔物の子か」

「えっ!魔物だったの!?」


 その言葉を聞いた瞬間、カルマの心臓が跳ねた。ぎゅっと握る手のひらから、その震えが痛いほど伝わってくる。

 カルマは小さく口を開けたまま固まり、ぎこちなく息を吸った。


「ぼ、僕……魔物、黙っててごめんなさい。消されちゃうと思ったのに……生きてる……」

 かすれた声は、水に沈む泡みたいに弱く散った。逃げたい――そんな揺らぎが全身からこぼれていた。


 水龍さまは威厳をまといながらも、どこか柔らかい響きで告げる。

「恐れずともよい。お前が来られたのは偶然ではない。“加護を持つ者”だけが、我の内側へ入る道を見つける」


 その言葉に、カルマの喉がごくりと鳴る。

 まだ不安の影を残しているけれど――同時に、何かを悟りはじめてもいた。

「ぼ、僕……生きてていい……の……?」

 その問いは震えていた。けれど、前へ進むための、初めての一歩の音でもあった。


 僕は思わず、カルマの手を握り返す。

「カルマ、大丈夫。水龍さまは――君を否定してないよ」


 カルマはゆっくり、僕のほうを見上げる。そして小さく深呼吸をして、ぽつりと言った。


「……うん。僕、怖かったけど……でも、ちゃんと生きたい」


 水龍さまがゆるりと喉を鳴らすように応えた。

「よい心だ。お前には使命がある。……まもなく、わかるだろう」


 その響きは、胸の奥の暗闇に光を落とすようだった。カルマの胸の中で、何かが熱く、静かに灯りはじめる。


 水面に反射する光が揺れ、まるで彼の背を押すように広がった。

 そして――水龍さまの瞳に導かれるように、カルマはゆっくり前へ進む。


「よい。感じるままに動け。すべては、ここから始まる」


 何かが呼んでいる――まだ形は見えないけれど、確かに自分に向けられた何か。カルマは深く息を吸い込み、力強く頷いた。

 未知の使命――けれど、今は恐れよりも、胸の奥のわくわくが勝っていた。




 その時だった。

 水龍さまの内側を満たす光の粒がふわりと集まり、カルマの目の前で揺れる。

 光はやがて――小さな影の存在が姿を現した。


「……き、君はだれ?僕、カルマ……だよ」

 カルマの声は少し震えた。影はちらりと目を光らせ、にじりと近づく。


 影はちらりと赤い目を光らせ、そっと近づいてくる。怒っているわけでも、脅すつもりでもない。

 ただ――風に迷った子どものように、寂しそうに揺れていた。


(この子……友達になりたいんだ……)


 カルマの胸に、ぽっと温かいものが灯る。

 加護を持つ彼だからこそ気づける波長だった。


 カルマはそっと手を伸ばす。

「大丈夫だよ。怖くない。オレと……友達になろう?」


 影は一瞬ためらったが、ふわりとカルマの手のひらに触れた。

 途端に影の輪郭が光を帯び、黒い羽がひらりと開く。


 ――ハグロトンボだった。


 水龍さまは静かに見守り、微かに微笑む。

「お前には種族を超えて“結ぶ”力があるようだ。それは――守り、導く使命へと繋がるだろう」


 カルマは胸に手を当て、しっかりとうなずいた。使命と友達、その二つが温かく重なり合う。




 ふと気配を感じて振り返ると、カルマがこちらを見ていた。胸の前でそっと羽ばたくハグロトンボを見つめるその目は、もう怯えていなかった。


「カルマ君、もう影を怖がらないね」


 僕がそう声をかけると、カルマはびくっと肩を揺らし――

 すぐに、恥ずかしそうな笑みを浮かべた。頬がほんのり赤い。けれどその笑顔には、確かに「うれしい」が滲んでいた。


「う、うん……。影、怖かったけど……この子、優しかったんだ。気づけて……すごく、うれしい……」


 その声は震えているのに、芯があった。自分の中の恐怖をひとつ乗り越えた、そんな響きだった。


 そのとき――水面の光を反射させながら、カゲミがすっと近づいてくる。

 彼女の黒髪が水の反射で青く照らされ、横顔に淡い光が滲んだ。


「……魔物と友達になれるんだな。カルマ、よろしくな!」


 不器用な言葉なのに、驚くほどやさしい声だった。カゲミ自身も、どこか誇らしげに見える。


 カルマはぱっと顔を上げ、嬉しそうに頷いた。

「うん!ありがとう……!えっと……カゲミ姉ちゃん、その……僕も、よろしく!」


 ハグロトンボがひらりと舞い、三人の間に虹色の波紋を落とす。さっきまであんなに重かった空気が、驚くほど軽く澄んでいく。


 影を怖がっていた子が、影と友達になった。


 その瞬間を祝福するように、水龍さまの内側が静かに輝いた。











 セオト兄ちゃんが、影に怯えて泣いてた魔物の僕を、”カルマという一人の子ども”として見てくれた。

 名前を呼んでくれるたびに、胸がぎゅっと熱くなる。

 セオト兄ちゃんの加護をもつ魔物の僕。


 僕が踏みだす一歩。

 孤独から抜け出したいと願う、ほんの小さな勇気。

 望んでいた温かさが、この世界に本当にあるかどうか確かめたい。


 僕は――生きてていいんだ。



 ――カルマ。






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