表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/144

89 告白しちゃった!?濁流の影巫女!?






「影巫女? オレって巫女になっちゃったの!?」

 叫んだ瞬間、自分の声が水の中に広がり、ゆらりと揺れた。


 水龍さまは、どこか愉快そうに低く喉を鳴らす。

「闇の流れが読めるはずだ。それに――我の中にいることで、水の力も持つ巫女だ」


「オレが……影巫女……?」

 その言葉は重いはずなのに、なぜか胸の奥ですとんと収まった。

 影と水。どちらも、自分の中にあった気がした。


 水龍さまは深い瞳で、まっすぐカゲミを見つめる。

「お前は鮎でも精霊でもない。今まで叶うことがなかった――“人間”に、生まれ変わったのだ」


「……人間、に……?」

 カゲミは目を瞬いた。川の流れの速さでも、囮鮎の痛みでも、闇精霊の孤独でもない。胸のあたりがじんわり温かくなる。そんな感覚が、初めてだった。


「オレ、人間……オレが……」

 言葉にすると、少し恥ずかしくて、少し怖くて――でも、どこか誇らしかった。


 濁流の激しいうねりとは裏腹に、水龍さまの声音は驚くほど穏やかだった。

「さあ、カゲミ。新しいお前を、これから形作るがよい」

 その声は、深い水底からゆっくりと響くように優しくて、カゲミの胸の奥にまで届いた。


 カゲミは小さく息をのむ。

「ありがとう、水龍さま。オレ……素直になる……」

 言ってみれば照れくさいけれど、不思議と口をついた。


 ――自分がなりたかったものに、ようやく手が届いた気がする。


 ふと、濁流の対岸に影が見えた。本来ここにいるはずのない人物――セオトが、静かに立っていた。


 幻だ。水龍さまのお腹の中が見せる思念なのだろう。それでも、久しぶりに見るセオトに、カゲミの胸がじんと熱くなった。


 オレは、大きく息を吸い込む。そして、腹の底から響かせるように叫んだ。

「セオト!俺が日本の川でブルーギルだったのを見つけてくれた……あのとき、嬉しかった!」


 言いたくても言えなかったことが、今はするりと言葉になる。

 たったそれだけで、こんなにも心が軽くなるなんて――知らなかった。


 カゲミはそっと胸に手をあてる。

 ――ドクン、ドクン。

 まるで、新しい心臓が動き出したみたいに、鼓動がまっすぐ響いていた。


「水龍さまに守られて記憶が戻ったんだ。……俺、やっぱりお前のそばに居たい。セオトが好きだ!」


 はっきりと言い切った瞬間、濁流の向こう――対岸に立つ瀬音の顔がみるみる赤く染まっていく。耳まで真っ赤で、固まったように目を見開き、ひくっと肩が震えている。


 カゲミはぱちぱち瞬きをした。

「……あれ? 幻じゃない……?」


 セオトは、ばっちり生身だった。濁流の風をまといながら、勢いよく口をぱくぱくさせて、こちらへ身を乗り出す。


「なっ……な……な……!!?」


 声にならない声が、濁流にかき消されていく。

 顔は一瞬で真っ赤、耳まで染まって、まるで湯気でも立ちそうだ。


 カゲミは思わず目を細めた。

(なんだよ、ゆでダコになっちまってる……)

 胸の奥が、少しくすぐったくなる。どうやら、ぜんぶ――聞かれていたらしい。




 (瀬音、主人公視点)


 ――え、ちょ、まって。

 カゲミに告白された瞬間、胸が跳ねたのと同時に、濁流がザバァッと盛り上がった。足元の岩が震える。ここにいたら、確実に流される。

 (や、やば……水龍さまの腹の中って、こんなに揺れるの!?)


「ブフーーーッ! ふぉふぉふぉ!サイコーだ、カゲミ!」


 水龍さまの大爆笑が響いた瞬間――

 ゴオオオオッ!!

 濁流が一気に暴れ川と化した。波頭が立ち、渦が巻く。


(あああああ!!水龍さま、感情で水量変えるタイプ!?)


 僕は慌てて片足を引いたが、ぐらりと水面が迫る。濁流の叫びみたいな音が耳を打ち、思わず喉から変な声が飛び出しそうになった。


「ちょ、ちょっと待って! 本気で流れるってば!!」


 反射的に、そばにいたカルマくんの手をギュッと握る。

 カルマくんは一瞬だけ目を丸くしたが、すぐに力を込めて握り返してくれた。

(カルマくん、ありがとう……!)


 そのとき、濁流の向こうでカゲミがふわりと笑った。“影巫女”としての気配が、藍色の水面みたいに揺れる。


「――《藍影(ランエイ)鎮流(シズル)》!」


 カゲミの足元から、すっと影がのびた。藍色のきらめきが混じった影が、水の中へ、まるで一本の流れのように潜り込んでいく。


 影が濁流の芯をつかんだ。青い光がドクン、と脈打つと、暴れ狂う水がしゅるしゅると萎むように落ち着いてゆく。


 波が割れ、濁流が嘘みたいに静まり返った。


「す、すごい……!」

 思わず声がこぼれる。


 カゲミは少し照れたようにそっぽを向き、耳まで赤くしながら言った。

「……ま、影巫女になったからな。これくらい朝メシ前だし?」



 静まり返った水面を見つめながら、胸の鼓動がまだ落ち着かない。さっきまで暴れていた濁流が、まるで嘘みたいに澄んだ流れに変わっている。


「……カゲミ、本当にすごいよ」


 僕がそう言うと、カゲミは一瞬だけこちらを見て――すぐに視線をそらした。けれど、耳の端はほんのり赤い。


「べ、別に。お前を助けたとかじゃ……ないし。水龍さまの中にいたら、こういうの、自然にできるようになっただけで……」


 言い訳っぽい声。でも、その影はたしかに僕のほうへ伸びていて、優しく水面を撫でていた。


「それに……」


 カゲミは小さく息を吸い、拳をぎゅっと握りしめた。

「セオトが……怖がってるの、なんか嫌なんだよ。オレ……そういうの、見たくねぇし」

 胸の奥が、じんと熱くなった。


 隣でカルマくんが、ぽそっと僕をつつく。

「セオト兄ちゃん……顔、赤いよ……?」

「えっ!? あ、いや、その……ちがっ……!」


 僕が慌てふためくと、水面の奥から――


「ブハッ!ふぉふぉふぉ!青春とは実に甘い!!」

 水龍さまの笑い声がまた響いた。



「水龍さま黙っててぇ!!」


 僕とカゲミの声が、見事にそろった。










 ふぉふぉふぉ、甘酸っぱいか……。

 ふぉふぉ、これがアオハルとな。


 フッ、シヴァよ。まだ酒が残っておったら、つづきも見せよう。 



 ――ゴキゲンな水龍。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ