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おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第3章

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80 行き先決まっちゃった!? それぞれの村!






「影巫女が蘇るって……そうか! 巫女さまのお祭りとかないのかな?」

 ぼそっとこぼした僕の疑問に、父さんがぴくりと眉を動かした。


「各地で聞いたことあるぞ」

「え?」


 父、守杜(マモリ)は木漏れ日のような視線をこちらに向けてくる。

 森を渡って記録を残すエルフの旅人――その記憶の引き出しが、静かに開いた。


「お前には鬼門になりそうな村だ……鮎喰栄(あくいさかえ)村の影巫女祭だろうな」

「すごい名前の村だね……鬼門って?」


 ごくりと喉が鳴る。父さんは淡々と続けた。


「俺がいた頃は、にぎやかな祭りだった。影巫女の名のもとに、水の恵みを祝って、夜通し踊りが続いてな。

 それはもう……無料で鮎の塩焼きがふるまわれる……いい祭りだった」


 最後の「鮎の塩焼き」のところだけ、妙に目が輝いている。


「……父さん、そこだけテンション高くない?」

「酒も(さかな)も、うまかったんだぞ。本当に」


 苦笑したけど、胸の奥がざわざわした。影巫女。カゲミ。水龍さまが言っていた“蘇り”。


 ――そして、鬼門。

 父さんの言葉の端に、ひっそりとした影が落ちていた。


「……その祭り、今年もやってるのかな」

「さあな。ただ――気をつけろ瀬音。祭りというのは、人が集まるぶん、何かが“目覚める”こともある」


 風がひとすじ、僕の頬をかすめていった。胸の奥で、小さな影がうずく。

 影巫女祭。そこには、カゲミの“秘密”が眠っている気がした。



「そうだ、私もその祭りに行って歌ったことがあるよ。道案内してあげる」

 ミラさんがそう言ってくれて、道案内が決まった。


 

「そうだわ!水喜川(みずきがわ)村ってとこの水巫女のお祭りもあるわよ。久しぶりに行ってみたいわ~!」


 母、詠水エイミが嬉しそうに声を上げる。

 へええ、“川の水が喜ぶ村”か……名前だけで、水面がきらっと笑うみたいだ。ちょっと行ってみたくなる。


 父さんは苦笑しながらもやさしげに、「そうだな、行ってみるか」と頷く。

 ……うん、知ってた。母さんが楽しそうなら、父さんは基本“即肯定”だ。


「タクちゃ……んじゃなかったオトちゃん!……汐くんは、あなたを大切にしすぎだから、注意してね。ウフッ」


 ……ど、どういう意味?

 母さん、たまに肝心なところで笑って誤魔化すんだよな。


 “汐真(シオマ)兄さんが僕を大切にしすぎる”? まあ、なんとなくわかるような……?

 確かに兄さんは過保護だった。帰り道で僕の分まで荷物を持とうとするし、知らない道を歩くときは必ず前を歩いてくれるし……いや、それはちょっと嬉しいけど。


「うん、わかった」

 返事をしたら、母さんはぱっと花みたいに笑って手を叩いた。その音だけで、周りの空気が一段明るくなる。


 ――水喜川村の水巫女祭か。


「母さんは水喜川村の水巫女だったの?」

 ふと思いついて聞いてみると、母さんは胸を張って、

「えっへん!そうよ~! 懐かしい場所を見てくるね!オトちゃんしか、カゲミちゃんは見つけてあげられないわ!

 ワンットウッ! アタッック~よ!」


 ……で、でたー。母さん得意な掛け声。でも母さんらしい。妙にテンションが高いのも、懐かしい土地に帰れるからなんだろう。

 母さんみたいな水巫女かぁ……どんな人たちが、どんな風に”水”と向き合ってるんだろう。


 胸の奥に、小さな波がひとつ立った。わくわくと、不安が半分ずつ混ざったみたいな感覚。

 何も起きなければいいけど……僕たちはともかく、母さん達がなにかを起こす予感しかしない。




「仲間に助力は惜しまない!行くぞ!」

「おーー!!」


 ツバネがニッと笑って宣言すると、タリクが「任せとけ!」と胸をドンと叩き、セリアンは静かに竪琴をつま弾きながら微笑み、リウラは手をぐっと握って頷き、ゲルは「よき旅路……」と低くつぶやき、スイタンは緊張した面持ちで、ホンホンは「れっつらホンホン!」と跳ね回った。


「みんな!本当にありがとう!頼もしいよ!」


 胸が熱くなっていると、不意にルミアと目が合った。


「俺はこの村に店を開くから残るね。瀬音くん……だっけ。 繊細な記録は綻びがあったり消えやすい。丁寧に刻むといいよ」

「……!? ハッ!ノートリアとしての未熟さ、忘れないようにします。お店、楽しみにしてます。ルミア」


「お前も、カゲミちゃんも食べられないようにな。元・青鮎なんだろ?」

 軽口を叩きながら、ルミアはひらひらと手を振り、村の奥へ戻っていった。


 ……食べられないよね、僕。さすがに。

 いや、でも“鮎喰”って名前だし……村の名物とか……え、僕……?


 胸の奥で、さざ波だった不安が――少しだけ大きく揺れた。



 ――こうして僕たちは、鮎喰栄村へ向かうことになった。











 ここまで読んでくださって、ほんとうにありがとうございます。

 ふふっ、オトちゃんは食べられちゃいそうな村に行くことになったけど……


「ワンットウッ! アタッック~よ!! あなたの幸せを全力で応援してるの!」

 だいじょうぶ、母さんはいつでも応援してるわ!

 カゲミちゃんと会えるのを楽しみにしてる!


 オトちゃんの旅に、たくさんの水音と笑顔が訪れますように。


 ――母、詠水エイミ







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