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おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第3章

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79 帰ってきちゃった!?僕の生まれたキュリシア!






 僕は、日本で育った青木沢海あおき たくみ

 生まれはキュリシアで、もうひとつの名は碧貴瀬音あおき せおと

 そして――前世は、川を走る小さな命、セセラギ。

 3つの名を背負った、新米の記録師だ。


 その日、ほんの些細な失敗が、僕の世界を変えることになる。


「うわっ、あっ……ちょ、ちょっと待って!おにぎりが……!」


 ぼちゃん。

 僕のお昼は、容赦なく川へ沈んでいった。慌てて追いかけた足が滑り、視界が水の色に反転した。

 ――これがいわゆる「おにポチャ」だ。


 冷たい流れ。沈んでいく光の粒。

 なのに。


「……あれ?息、できる?」


 僕はパニックにならなかった。胸元のペンダントが、ほのかに光っている。喉が苦しくない。水が怖くない。


 そして――胸の奥がすうっと開いていくように、記憶が戻った。


 川底のきらめき。流れに身を任せたあの日々。小さな鱗を揺らしながら、仲間と泳いだ感触。


「……僕は、青鮎だったんだ」


 気づいた瞬間から、世界が川のように音を立ててつながっていく。

 ここから、僕の“3つの名前”の物語が、静かに流れ始めた。




「そっか……。僕って、ずっと流され体質なんだな」

 ふう、と水面に浮かびながら、思わず笑ってしまう。まとわりつく水が、どこか懐かしい匂いを運んでくる。


 闇精霊のカゲミを追ったら、そのまま転スイしてしまった。

 でも――シヴァ・テンスイさまの力で、水龍さまの川へ戻ったらしい。見覚えのある滝つぼが、白い息を吐くように水煙を上げている。


「あら、なつかしいわぁ!この滝!水龍さまお元気かしら?」


 母さんが少女みたいな声で目を輝かせる。

「母さん、水龍さまを知ってるの?」

「ああ。俺もミラもエイミも、水龍さまには世話になってな」

 父さんまで当然のように言う。……僕の家族、経歴どうなってるんだ。

 振り返ると、ミラさんも水の光を手でなぞりながら微笑んでいた。どうやら、父さんたちもここへ来ていたらしい。


「ツバネとタリクたちは!?」

「こっちだ!先にキュリシアへ来たようだな」

 岸辺へ向かうと、見覚えのある仲間たちがそろっていた。


 タリクは大きく手を振り、ツバネは腕を組んでふん、と鼻を鳴らしながらも口元がほころんでいる。リウラは流れを読むように川面を見つめ、ゲルは……うん、いつもの無表情のままだ。



「タリク!セリアン達は!?ホンホンが防水してくれてるといいんだけど……」

 なにせ、水気厳禁な竪琴持ちの吟遊詩人と、禁書ホンホン、そして禁書スイタンである。

 僕の背中に冷や汗が走ったとき――


 向こうの岩場が、キラッと光った。

「完全防水モード、かんぺきだホンホン!」

 ホンホンが透明な膜のような水を弾きながら、ふんぞり返っている。その横でセリアンが竪琴を奏で、即興の明るい旋律を添えてくれた。胸元ではスイタンが丸くなって震えている……けど、生きてる。うん。



 そして――


「瀬音さま、みんな、お帰りなさい。ラグ・ノートリア村は歓迎します」


 タリクの妹、ミレイが静かに頭を下げた。その声が届いた瞬間、水音がふっと静まったように感じた。風がひとすじ、川面を撫でていく。


「ルミアさま。ここはあなたの故郷です。どうぞ、ゆっくりお過ごしください」

 説明など不要と言わんばかりに、ミレイは穏やかな眼差しをルミアへ向ける。


 ……っていうか、いつの間にルミア来たんだろう。ついさっきまで僕の横にいたような、いなかったような……相変わらず不思議な人だ。転スイした日本でお世話になった僕の師匠だ。


「しばらく世話になる。ルミアだ。よろしくな!」


 ルミアは肩まで伸びた髪をかき上げながら、堂々と笑う。

 その瞬間、ホンホンが跳ね、飛び散った水の粒が細い虹を描いた。


「キレイだな……キュリシア」

 思わずつぶやいた言葉が、水の国の空へ溶けていく。


 ――帰ってきたんだ。

 胸の奥がじんわり温かくなった。


「ねえミレイ、水龍さまはどこにいるかわかる!?カゲミが……中にいるはずなんだけど」

 言いながら、自分の声が少し震えているのがわかった。川の底の記憶が疼く。あの小さな影の相棒――あいつは、必ず僕を待ってる。


 ミレイは一度まばたきをして、そっと視線を水の奥へ向けた。


「えっ……水龍さま、ですか?そういえば……”影巫女”が蘇るとか、そんなことを仰っていました……」

「影巫女……?」


 息が止まりそうになった。ミレイは続ける。


「おそらく……カゲミさまのことでしょうか?水龍さま、なにか“準備”をされているようでした。『影が形を取り戻す時、流れもまた巡る』……と」


 川面が、風もないのにさざめいた。胸の奥で、ちいさく跳ねる気配――カゲミの気配だ。

「カゲミ……無事なんだな」

 ひと筋の安堵がこぼれたと同時に、どこか胸騒ぎのようなざわめきが残った。


 影巫女。 蘇る。 そして、水龍さまの“準備”。


 ――これは、ただの再会なんかじゃない。


 僕は水面を見つめながら、小さく息を呑んだ。


「急ごう。カゲミが……呼んでる気がする」











 おにポチャ。第3章、はじまりました!

 この章では、瀬音の物語の終着点が見えてくるはずです。

 毎日更新でお届けしていますので、ストックはありません。

 どうぞ、あたたかく見守ってくださいね。


 ――(万寿)ぷりん。






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