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おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第2章

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75 大逆転しちゃった!?流域の歌!






「う……またスタートに戻ったのか……」

 膝をつきながら、僕――沢海(タクミ)はため息をつく。ここは忘れもしない“借用記録地帯”だ。 どんよりとした空気が漂い、黒い影たちがざわざわと寄ってくる。体が重い。前へ進もうとするほど、心が沈んでいく。


 ――そんなとき。


 セリアンの竪琴が、やさしく鳴りはじめた。

 透明な音が盤の上を渡っていき、僕の胸の奥に響いた。


「叶えたい夢を忘れるなよ、タクミ!」

 ハッとした。そうだ。僕は――カゲミに会わなくちゃいけないんだ!


「よーし……今度こそ、流されても取り返す!」

 熱い思いを込めて、手のひらをぎゅっと握りしめる。


 セリアンの音色が届いた村のマスが光を帯び、癒しの風が吹き抜けた。

 沈んでいた大地に花が咲き、影が霧のように消えていく。


「……吟遊詩人、強っ!」

 思わず笑いがこぼれる。


 すごろくの上では、仲間たちもそれぞれのマスで動いている。


 リウラは山間の村、“養生チル”で割れた水盤を修復していた。

「もう一度、流れをつなげますわ」

 澄んだ指先が光り、水面に模様が浮かぶ。すごろくを通して、リウラはますます水の精霊らしくなっていった。少ししおらしく感じるのは……カゲミがいないせいかもしれない。


 一方そのころ――


 ゲルは水晶の洞窟で黙々と作業していた。

「緻密作業は、呼吸するようなものです」

 淡い光が彼の手元で結晶し、クリスタルの薔薇が咲く。それを港町“潮風チル”に持っていった瞬間、大評判になった。


 ホンホンは、立ち止まるマスに草を生やしながらピョンピョン跳ねている。

「ホンホ〜ン!緑があると映えるホン!」

「ねえホンホン。すごろくを森にする気か!?」



 ルミア――いや、雫さんはラグ・ノートリアの村で新しい挑戦を始めていた。

「こっちの世界でもやってけそうだな」

 懐かしい笑顔でそう言いながら、なんと駄菓子屋を開いていた。きなこ棒とカルメ焼きが人気らしい。

「子どもたちに“味の記録”を残したいんだ」――雫さんらしい言葉だ。


 盤のあちこちで、誰かの行動が次のマスへと流れを作っていく。もう、これはただの遊びじゃない。


 すごろくは、みんなで作る“生きる世界”になっていた。



 ――そして、何度目かの僕のターン。スタートからの再出発だ!


 手のひらに汗がにじむ。もう何度も回してきたはずなのに、胸の鼓動はいつもと変わらない。

 ルーレットを思いっきり回す!風切り音みたいな勢いで、色とりどりの目がぐるぐる回転する。


 カチ、カチ、カチ……ピタッ。


 ――9!


「おっ、けっこう進める!」

 けれど止まったマスを見て、僕は思わず息をのんだ。そこは――みんなのスタート地点だった。


 風が吹き抜け、足元の草がざわめく。そのとき、一本だけ長く伸びた草がピョコン!と跳ねた。ホンホンがずいぶん前に生やした草だと思われる。


「……え?」

 近づいてみると、草むらの奥に、ふにゃっとした寝起きの禁書が――。


「ス、スイタン!?こんなところで寝てたのか!」

「……んみゅ?あれ、タクミ?」

 僕は慌ててスイタンを抱き起こす。


 その瞬間、空気が震えた。ピピピピ――!

 耳をつんざくような警告音が鳴り響く。


『7回スキップ分のルーレット権利をさしあげます』


「な、なんだそれ!? ボーナス? 罠?」

 困惑する僕の腕を、スイタンがきゅっと握る。目が真剣だった。


「タクミ、私をしっかり握って離さないで!」

 風が渦を巻く。スイタンが光に透けて、川の流れみたいに揺らめいた。


「行くよ――“流域の歌”!」


 水音が、盤上を駆け抜けた。

 透明な波紋がひとつ、ふたつ――そして無数に広がっていく。数字のマス目たちが、まるで呼応するように淡く光を放ち始めた。


「うわっ、な、なんだこれ!? 速っ――!」

 足元がふわりと浮き、僕とスイタンの身体が光の流れに包まれる。風よりも速く、音よりも鋭く。盤の上を、爆速で駆け抜けていく感覚!


「タクミ、手ぇ離すなよ!」

「離すわけないって!」

 叫ぶ声も、風に飲まれて遠ざかる。


 目の前に見えるのは、ただまっすぐに伸びる光の道――ゴールの輝き。


 ――そして。

 ぱあんっ! 光の破裂音とともに、僕たちはゴールの中心に飛び込んだ。


 まるで水面を突き抜けた瞬間みたいに、空気がひんやりと変わる。

「や、やった……ゴール!? 本当に!?」

「ふふっ、これが“流域の歌”の力だよ」

 スイタンがいたずらっぽく笑う。表紙には水の粒がきらめいていた。


 結果――僕とスイタンは、大逆転ゴールを決めた。

 その瞬間、盤上に描かれた水の紋様がキュリシア全土へと流れ出し、“流域の歌”は風に乗って、街から街へ、湖から空へ――世界中に広まっていった。


 誰もが知らないはずの旋律を、今は誰もが口ずさむ。


 まるで、それがもともとこの世界の祈りだったみたいに。











 柄にもなく……寝起きからの展開は、ほんとに楽しかった!

 盤の上を速足スキップで爆速かけぬけると、風が紙をくすぐって、体がふわっと浮くみたいに気持ちいいんだ。


 しかも、タクミのあの驚いた顔!あはは!

 一緒にゴールまで駆け抜けられたから、今はもう胸がいっぱい。


 世界中に“流域の歌”が広まったのも、うれしいよ。

 私は、歌ってはいけない歌集――スイタンだから。






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